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2011年03月31日
合併症を予防しながら糖尿病とともに50年 ベテランの糖尿病患者が示す秘訣
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ジョスリン糖尿病センターでは1970年代から、インスリン療法を50年続けている1型糖尿病患者を対象に、長年の治療を称え表彰する「インスリン50年賞」を実施しメダルを贈呈している。研究者らは、50年賞を受賞したメダリスト351人を対象に、その秘訣をさぐるために「ジョスリン50年メダリスト研究」を実施している。
対象となった患者の多くは深刻な糖尿病合併症を発症していないか進展を阻止できている。その割合は、高度な糖尿病網膜症が43%、糖尿病腎症が87%、神経障害が39%、心疾患が52%だった。
50年賞メダリストで合併症のない患者の割合が驚異的に高いことについて、「何十年というあいだ、高血糖のもたらす毒性と戦い、保護的にはたらく分子・生理学・遺伝子のメカニズムがあることが示されている」と研究の筆頭著者であるJennifer Sun博士は話す。この研究は医学誌「Diabetes Care」2011年4月号に発表された。
これらの患者は血糖コントロールをとても注意深く行っている。しかし良好な血糖コントロールだけでは説明できない部分もある。研究者らは糖尿病の治療について、これまでの研究であまり検討されていなかった因子があるのではないかと考えた。
その手がかりとなるのは、HbA1cや脂質コントロールに加えて、高血糖が続くと増加する「糖化最終産物(AGEs:advanced glycation end products)」と呼ばれる蛋白質の一種だという。AGEは蛋白質と糖が反応して最終的に生成される物質で、体内で生成され長い期間蓄積されると、糖尿病合併症の原因になると考えられている。
AGEは糖尿病の初期から増加するが、合併症を発症しない患者では、それに対する保護的な因子があるのではないかと考えられている。50年メダリスト研究では、600人を超える1型糖尿病患者のデータを集積し、糖尿病合併症を予防するために何が必要かをさぐっている。
研究チームは合併症を発症した患者でAGEが高い割合でみつかり、特異的な2種類のAGEが網膜症の発症予防と関連があることを初めて示した。ジョスリン糖尿病センターのビーサム眼研究所で治療を受けており、糖尿病網膜症が17年ものあいだ安定し悪化していない患者のグループを対象に検査を行った。
「ベテランの糖尿病患者は多くのことを教えてくれている。糖尿病と診断されたばかりの患者や、小児や10代の若い患者にために大きな動機づけとなる。そうした患者たちが深刻な合併症を発症しないで何十年ものあいだすごしていくために、血糖コントロールを含む効果的な糖尿病ケアが必要となる。わたしたちは、それを示すための有力な手がかりを得ている」とSun博士は述べている。
Diabetes veterans may show ways to prevent complications(2011年3月29日)
Protection From Retinopathy and Other Complications in Patients With Type 1 Diabetes of Extreme Duration
The Joslin 50-Year Medalist Study
Diabetes Care, March 29, 2011 vol. 34 no. 4 968-974
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