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2025年04月09日
1型糖尿病の人の7割が運転中に低血糖を経験 低血糖アラート機能付きCGMが交通安全に寄与
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低血糖アラートが糖尿病ドライバーの交通安全に寄与

低血糖のアラート機能付き連続血糖測定(CGM)デバイスの利用が、糖尿病患者の血糖管理に役立つだけでなく、安全な自動車運転にも役立つことが新たな研究で明らかになった。
名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の有馬寛氏らの研究の結果であり、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」4月号に掲載された。
著者らは、「アラート機能付きCGMによって運転中の低血糖リスクを抑制できる可能性があり、その結果、患者の自動車運転に対する自信が増加して事故リスク低下も期待できるのではないか」と述べている。
血糖降下薬が処方されている糖尿病患者では、薬の作用が強く現れた時に血糖値が下がり過ぎて、「低血糖」と呼ばれる状態を経験することがある。
低血糖は短時間で進行しやすく、判断力が低下したり、時には手足を動かせなくなったり意識を失ってしまうこともある。そのため、低血糖症状が現れた時にはすぐに血糖値を測定して、低血糖であることが確認されたら直ちにブドウ糖などを摂取するという対処が必要。
このような対処は、自宅内にいる時などは支障なく速やかに行える。ただ、自動車の運転中には即座にこのような対処をできないこともあり、最悪の場合、低血糖によって交通事故を起こしてしまいかねない。
2023年に「Diabetes Care」に発表された米国での研究によると、インスリン療法が欠かせない1型糖尿病患者の約72%が運転中に低血糖発作を経験したことがあり、4.3%は過去2年間に運転中の低血糖による事故を経験しているという。
一方、糖尿病患者の血糖管理サポートツールとして、CGMの利用が広がってきている。CGMは、皮下に留置したセンサーを介して血糖値を連続的に測定でき、血糖値が事前に設定した範囲を超えると音や振動などでアラートを発する機能を持つものもある。
このような機能は、自動車運転中の低血糖予防対策として役立つと考えられる。しかしこれまでのところ、そのような視点での有効性の評価は十分なされていなかった。
今回報告された研究には、インスリン療法を行っていて、週に3回以上車を運転している糖尿病患者30人が参加した。全体をランダムに2群に分け、1群はアラート機能をオンにしたCGMを使用し4週間生活した後、8週間置いて、アラート機能をオフにしたCGMを使用して4週間生活してもらった。他の1群はこれとは逆の順序とした。
解析の結果、運転中の低血糖の発生率は、アラートオン条件では19%、アラートオフ条件では33%であり、前者の方が有意に低かった。また、研究参加者のほぼ3分の2(63%)が、「アラートによって運転の自信が増した」と回答した。
この結果にもとづき著者らは、「アラート機能付きCGMを用いることで、糖尿病患者の自動車運転が、より安全になると期待される」と総括。
ただし、その一方で現行のCGMには、低血糖リスクのある患者の自動車運転に適したものとするため、さらに改善の余地があることも指摘。たとえば今回の研究では、カーナビ画面に血糖値やアラートが表示されるような機能を望む声が少なくなかったという。
著者らは、「将来的には低血糖アラート機能が自動車運転システムに統合され、低血糖のリスクの程度に応じて、ドライバーに対してそれを安全に通知したり、車が制御されたりするようになることが望ましい」と述べている。
[HealthDay News 2025年3月18日]
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