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2025年04月11日

世界の糖尿病人口は5.9億人に増加 成人の9人に1人が糖尿病 国際糖尿病連合「糖尿病アトラス」

 国際糖尿病連合(IDF)は、4月にタイ・バンコクで開幕した「国際糖尿病会議(IDF 2025)」で、「IDF 糖尿病アトラス」第11版を発表した。

 糖尿病の脅威は全世界で増大しており、世界の糖尿病のある成人の数は、9人に1人に相当する5億8,900万人に増加したことが示された。

 さらに、世界の成人の8人に1人に相当する6億3,500万人が、2型糖尿病を発症するリスクの高い耐糖能異常の状態にあるという。

 「世界で糖尿病とともに生きる数億の人々が、糖尿病を良好に管理することで生活を改善し、糖尿病のリスクがある人々は、適切な検査を受け糖尿病を早期発見できるようにするため、取り組みを強化し行動を促す必要があります」と、研究者は述べている。

世界の9人に1人が糖尿病 8人に1人が糖尿病予備群 日本でも糖尿病は増加

 国際糖尿病連合(IDF)が「糖尿病アトラス」第11版で示した新たな推計によると、糖尿病の脅威は全世界で増大しており、糖尿病とともに生きる成人の数は、9人に1人に相当する5億8,900万人に増加した。

 そのうち約43%に相当する2億5,200万人は、糖尿病の診断を受けておらず、自分が糖尿病であること気づいていない。適切な糖尿病の治療と管理を行わないでいると、糖尿病の合併症や早期死亡のリスクが上昇する。

 「IDF 糖尿病アトラス」第11版の主な内容は次の通り――。

  • 世界の20〜79歳の成人のうち、9人に1人に相当する5億8,900万人が糖尿病有病者。これは米国・カナダ・メキシコ・カリブ諸国の人口を合計した数に相当する。
  • 世界の成人の8人に1人に相当する6億3,500万人が耐糖能異常の状態にあり、さらに11人に1人に相当する4億8,800万人が空腹時の血糖値が高く、それぞれ2型糖尿病を発症するリスクが高い。
  • 糖尿病とともに生きる成人の数は、2050年までに8人に1人に相当する8億5,300万人に増加すると予測される。
  • 糖尿病のある成人の5人に4人(81%)は、低・中所得国に住んでいる。
  • 糖尿病は年間に340万件を超える死亡の原因になっている。6秒に1人が糖尿病が原因で亡くなっている。
  • 世界の1型糖尿病とともに生きる20歳未満の小児や若年者の数は180万人に上る。
  • 世界の新生児の5人に1人は、母親の妊娠中の高血糖の影響を受けている。
  • 世界の糖尿病関連の医療支出は、2021年には9,660億ドル(140兆円)だったが、2024年にはじめて1兆ドル(145兆円)を超えた。糖尿病の医療費は17年間で338%増加した。

 日本の糖尿病有病者の数は、2000年には710万人だったが、2024年には1,080万人に増加したと推計されている。

 日本は、20~79歳の成人の糖尿病有病数が多い国のひとつで、世界の上位10位に入っている。日本が含まれる西太平洋地域は、世界でももっとも糖尿病が増えている地域で、2億1,540万人が糖尿病とされている。

世界の糖尿病有病者数 2024年 5億8,900万人 2050年 8億5,300万人

糖尿病を早期発見し治療をはじめれば糖尿病合併症を予防できる

 糖尿病の合併症は、糖尿病を早期発見し治療を開始することで、発症を予防あるいは遅らせることができると考えられているが、世界の多くの患者は、合併症を1つ以上発症してから糖尿病と診断されており、その機会を逃してしまっている状況にある。

 糖尿病とともに生きる人の数が増加し続けるなか、最新の糖尿病アトラスでは、個人・地域社会・医療制度・経済全体に及ぶ負担を軽減するため、糖尿病の予防、早期発見、早期介入の強化が喫緊の課題であることが強調されている。

 2000年に初版が発行されたIDF糖尿病アトラスは、入手可能な最良のエビデンスにもとづき、糖尿病が各国、地域、世界全体に及ぼす影響についての洞察を提供している。第11版では、医療支出の動向、地域別の有病率、未診断の糖尿病などに焦点をあてた、新たな手法も取り入れているとしている。

糖尿病に対策しないという選択肢はありえない

 糖尿病アトラスの編集委員長の米国のワシントン大学のエドワード ボイコ教授と、オーストラリアのモナシュ大学のディアナ マリアーノ教授は、次のように述べている。

 「糖尿病は、網膜症、腎臓病、神経障害などの慢性合併症や、心血管疾患などの動脈硬化性疾患など、深刻な影響をもたらします。たとえば最新のデータでは、糖尿病の90%以上を占める2型糖尿病のある人は、糖尿病のない人に比べて、心不全を発症するリスクが84%高いことが示されています」。

 「世界で糖尿病とともに生きる数億の人々が、糖尿病を良好に管理することで生活を改善し、糖尿病のリスクがある人々は、適切な検査を受け糖尿病を早期発見し予防できるようにするため、取り組みを強化し行動を促す必要があります」としている。

 世界中で糖尿病の有病率が急速に上昇している現状について、ただちに対策する必要があり、各国の政府は、とくに未診断の糖尿病が多い地域で、糖尿病とその合併症の発症を予防する、あるいは遅らせるために、糖尿病リスクの高い人々に予防医療プログラムを提供する必要がある。

 「糖尿病アトラスで示した新たなデータは、増え続ける糖尿病に対策し、糖尿病に対する意識を高め、治療や管理だけでく予防にも重点をおき、糖尿病の蔓延に対する監視を継続的に行い、その影響を正確に知るために役立ちます」としている。

 「糖尿病という大きな課題に立ち向かうために、医療機関、研究機関、政府、医療業界、教育機関、テクノロジー分野、民間セクターなど、多くの分野や部門を横断する連携も必要です」と、IDFの理事長のドイツのドレスデン大学病院のピーター シュワルツ教授は述べている。

 「糖尿病に対して十分な注意を払わず対策しないことは、将来に深刻な打撃を与えます。この世界的な糖尿病のパンデミックに対して何も行わないという選択肢はありえません」と強調している。

IDF Diabetes Atlas (世界糖尿病連合)

世界糖尿病連合

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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