ニュース

2021年12月09日

世界の糖尿病人口は5.4億人に増加 10人に1人が糖尿病 糖尿病のパンデミックが脅威に

「IDF糖尿病アトラス」第10版
 世界で糖尿病とともに生きる人の数は5億3,700万人に増加したことが、国際糖尿病連合(IDF)が発表した「IDF糖尿病アトラス」第10版で示された。

 2019年の推計から16%(7,400万)増加しており、いまや世界の成人の10人に1人が糖尿病だ。

 世界の糖尿病人口は、有効な対策をしないでいると、2030年までに6億4,300万人、2045年までに7億8,300万人に増加すると予測されている。

糖尿病のパンデミック(世界的拡大)が人類を脅かしている

 国際糖尿病連合(IDF)が発表した新たな推計では、世界中で糖尿病が驚くほど急速に増えている現状が明らかになった。IDFが発表した「IDF糖尿病アトラス」第10版には、世界の各地域と国の糖尿病有病数の推定と将来予測をまとめてある。

 それによると、世界で糖尿病とともに生きる成人(20~79歳)の数は5億3,700万人に増加した。糖尿病の有病率は10.5%に達し、成人の10人に1人が糖尿病に罹患しているという。うちほぼ半数(44.7%)は糖尿病と診断されていない。

 有効な対策をしないでいると、糖尿病人口は2045年までに46%増加し、7億8,300万人に達するだろうと予想している。成人の8人に1人が糖尿病という事態になる。同時期に世界人口は20%増加するとみられており、糖尿病の増加率はその2倍以上に相当する。

糖尿病の世界統計 [2021年]最新データ

  • 世界の糖尿病人口は5億3,700万人。成人の10人に1人(10.5%)が糖尿病に罹患している。
  • 世界の糖尿病人口は、2030年までに6億4,300万人(11.3%)に、2045年までに7億8,300万人(12.2%)に増加すると予測されている。
  • 糖尿病は2021年に670万人の死亡の原因となった。世界で5秒に1人が糖尿病で亡くなっている。
  • 糖尿病は2021年に110兆円(9,660億ドル)の医療費負担の原因となった。糖尿病の医療費負担は、過去15年間で316%増加した。
  • 糖尿病とともに生きる成人の44.7%(2億4,000万人)は、糖尿病と診断されていない。その5人に4人以上(81%)が低中所得国に住んでいる。
  • 世界の5億4,100万人(成人の10.6%)が、耐糖能異常(IGT)のある糖尿病予備群で、将来に2型糖尿病を発症するリスクが高い。
  • 世界で1型糖尿病とともに生きる小児・若年者の数は120万人以上。その半数以上(54%)が15歳未満。

日本は世界9位の糖尿病大国 西太平洋地域は世界最大の糖尿病地帯

 「糖尿病アトラス」では、世界を7地域に区分し統計値を出している。日本が含まれる「西太平洋地域」は、世界でもっとも糖尿病人口の多い地域だ。

 西太平洋地域の成人2億600万人(8人に1人)が糖尿病とともに生きている。全世界の糖尿病人口の38%以上がこの地域に集中している。この地域の糖尿病人口は、2030年までに2億3,800万人、2045年までに27%増えて2億6,000万人に増加すると予想されている。

 世界で糖尿病人口がもっとも多い国の順位は、(1)中国(1億4,090万人)、(2)インド(7,420万人)、(3)パキスタン(3,300万人)、(4)米国(3,220万人)、(5)インドネシア(1,950万人)となり、上位3ヵ国だけで2億4,000万人を超えている。

 日本の成人の糖尿病有病者数は1,100万人と推定されている。日本は2017年の調査では上位10位から外れていたが、2021年の調査では9位になった。

糖尿病に世界的規模で取り組み対策を

 「インスリン発見から100周年を迎えた2021年は記念すべき年です。しかし、糖尿病の拡大を抑える画期的な行動を目撃できたとご報告できれば良かったのですが、実際にはその逆です。糖尿病は前例のない規模で拡大を続けており、もはやパンデミックといえる状態です」と、IDF理事長のアンドルー ボルトン教授は言う。

 2021年のはじめに、世界保健機関(WHO)は"グローバル糖尿病コンパクト"を立ち上げ、糖尿病に取り組むためにグローバルな行動を緊急にまとめることを加盟国に求める決議を採択した。

 「WHOの決議は、重要な節目になりますが、現状は差し迫っています。今すぐ行動に移す必要があります。手遅れにならないうち、すぐに行動しなければなりません」ボルトン教授は強調する。

 世界には、糖尿病を早期発見できず、十分な治療を受けられていない人が多い。糖尿病をもつ人が、効果的な治療をタイムリーに受けられないと、心臓病、脳卒中、腎不全、失明、下肢切断などの深刻で命を脅かす合併症のリスクが高くなる。これらの糖尿病合併症は、生活の質(QOL)の低下と医療費の増加をもたらす。

 「新しいデータは、糖尿病が、患者さんとご家族、国家の健康・福祉に対する、世界的な重要課題となっていることを裏付けています。世界では糖尿病の多くは発見されておらず、隠されたままです」と、IDF糖尿病アトラス委員会のディアナ マリアーノ教授は言う。

糖尿病の悪影響を減らすために多くのことができる

 世界の糖尿病患者の90%以上が2型糖尿病だ。2型糖尿病は、インスリン分泌の低下やインスリン抵抗性になりやすい遺伝的な因子に過食や運動不足などの生活スタイルが加わり発症し、その増加には、社会経済、人口統計、環境、遺伝要因などが複雑にからみあい影響している。

 2型糖尿病の増加に共通する背景として、都市化、高齢化、運動不足と身体活動レベルの低下、過体重や肥満の増加などがある。

 「良い知らせもあります。私たちは、糖尿病の悪い影響を減らすために、多くのことができるということです。糖尿病を早期診断し、1型糖尿病を含むすべてのタイプの糖尿病に対し適切なケアを行うことで、糖尿病とともに生きる人々の合併症を予防、または遅らせることができます」と、IDF糖尿病アトラス委員会のエドワード ボイコ教授は言う。

 「各国の医療政策の立案者には、糖尿病とともに生きる人々と、糖尿病を発症するリスクのある人々のために、生活スタイルを改善するために行動を起こすのを支援することが求められています」としている。

国際糖尿病連合(IDF)
IDF糖尿病アトラス(Diabetes Atlas)(世界糖尿病連合)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲