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2022年11月15日

【世界糖尿病デー】十分な教育を受けていない患者が多い 支援とサポートの充実が必要 国際糖尿病連合

 IDF(国際糖尿病連合)は、11月14日の世界糖尿病デーに、世界の糖尿病のある人の4人に1人(26%)は、糖尿病の診断時に自分の体の状態について、十分な教育と情報を受け取っていないという調査結果を発表した。

 さらに、5人に1人(20%)は、医療提供者から継続的な教育を受けられておらず、3人に1人近く(29%)は、必要な情報を得られていない状態のままだとしている。

 一方で、糖尿病患者の10人に4人(42%)は、1回の糖尿病の診療時間は15分未満と答えており、医師や医療従事者と治療について話し合い、食事療法や運動療法などの重要な話題についてアドバイスの提供を受ける時間が少ないことが示された。

世界糖尿病デー 2022年の世界共通テーマは「明日を守るための教育」

ブルーにライトアップされた横浜マリンタワー

ブルーにライトアップされた東京都庁舎

 11月14日の世界糖尿病デー(WDD)は、糖尿病の脅威が世界的に拡大しているのを受け、世界規模で糖尿病に対する意識を高めようと、国際糖尿病連合(IDF)と世界保健機関(WHO)によって1991年に開始され、2006年には国連の公式の日になった。

 世界糖尿病デーの2021年~2023年の共通テーマは「糖尿病ケアへのアクセス (Access to Diabetes Care)」。キャンペーンの2年目にあたる2022年は、「明日を守るための教育 (Education to protect tomorrow)」がテーマに掲げられている。

 糖尿病とともに生きる人々は、自分の体の状態をよく理解し、健康を維持し、糖尿病合併症を予防するために、食事や運動などの生活スタイルを改善し、医師から処方された薬をきちんと服用するなど、毎日の自己管理が欠かせない。

 より良く糖尿病のマネジメントを続けるために、医師や医療従事者の継続的な支援やサポートが必要となる。

 しかし、IDFの最新の調査によると、世界の糖尿病患者の4人に1人(26%)は、糖尿病の診断時に自分の体の状態について、十分な教育と情報を受け取っていない。

 さらに、5人に1人(20%)は、医療提供者から継続的な教育を受けておらず、3人に1人近く(29%)は、必要な情報を得られていない状態のままだとしている。

糖尿病の治療は1人ではできない 支援とサポートが必要

 糖尿病の治療では、患者自らによる自己管理が大きな比重を占める。調査では、糖尿病患者は平均して、糖尿病の診療を受けるのに年間に約3時間をあてており、それ以外の圧倒的に多くの時間を自己管理に費やしていることが示された。

 糖尿病とともに生きる人々にとって、糖尿病と診断されたときからずっと、糖尿病についての適正な教育と情報にアクセスでき、自己管理をサポートしてもらうことが、自分の体のコンディションを効果的に管理するために重要となる。

 糖尿病をうまく管理できていれば、心臓病・脳卒中・腎臓病・失明・下肢切断といった、健康を脅かす深刻な合併症のリスクを抑えられると考えられている。

 一方で、糖尿病患者の10人に4人(42%)は、1回の糖尿病の診療時間は15分未満と答えており、医師や医療従事者と治療について話し合い、食事療法や運動療法などの重要な話題についてアドバイスの提供を受ける時間が少ないことが示された。

 さらに、3人に1人以上(36%)は、糖尿病の教育者、看護師、栄養士などと直接に対面したり、オンラインで相談し、体の状態を管理するのに役立つ情報を追加して受け取ることができていない。

世界糖尿病デー2022

糖尿病の知識を新しいものにアップデート

世界共通テーマは「明日を守るための教育」

 糖尿病とともに生きる人の数は急速に増加している。IDFの推計によると、2021年の世界の糖尿病人口は5億3,700万人で、成人の10人に1人が糖尿病に罹患している。糖尿病人口は2030年までに、9人に1人にあたる6億4,300万人に増加すると予測している。

 糖尿病人口の急増は、医療資源に負担をかけ、多くの人が医療機関以外の手段を通じてアドバイスを求めることが予想される。IDFの調査によると、現状でも糖尿病とともに生きる人の5人に1人が、糖尿病教育のためにGoogleを利用したり(21%)、ソーシャルメディアを利用している(20%)。

 「私たちの研究では、糖尿病のある人々が治療にあてている時間の99%は、患者さんによる自己管理で占められることが示されました」と、IDF理事長で英マンチェスター大学糖尿病・内分泌内科教授であるアンドリュー ボールトン氏は言う。

 「多くの医療従事者は多忙ですが、限られた時間を最大限に活用し、糖尿病の影響を受けている数百万人もの人々のために、できる限り最善のアドバイスと支援を提供する必要があります」。

 「一方、糖尿病とともに生きる人々は、糖尿病を効果的に管理するために、自分の体の状態を理解し、糖尿病の知識を新しいものにアップデートすることが望まれます。糖尿病とともに生きる人の明日を守るために、糖尿病教育へのアクセスを改善する必要があります」としている。

医療従事者のためにも資金と投資が必要

 研究では、糖尿病教育をより充実したものにするために、医療従事者のためにも資金と投資が必要となるが、現状ではギャップがあることも示された。

 ほとんどの医師や看護師は、糖尿病に関する知識や技術を向上させることで、糖尿病ケアを受ける人々をより良くサポートしたいと考えているが、3人に1人以上(35%)は、糖尿病医療を向上するためのトレーニングの費用は自分で支払っていることが示された。

 さらに、医療従事者の多くは、糖尿病合併症を診断・治療するためのスキルが不足しており、たとえば、糖尿病の人ではうつ病の発症頻度が高いことを認知し対応しているのは半数未満(49%)だった。

 「糖尿病治療に携わる医療従事者や専門職向けにも、糖尿病の治療と管理についてさまざまな側面で最新の情報を共有する必要があります」と、ボールトン氏は述べている。

 IDFは、糖尿病治療に携わるすべての人々の学習機会を促進することにも取り組み、「IDF School of Diabetes」などの無料で利用できるインタラクティブコースを提供している。さらに、糖尿病の管理と治療のさまざまな側面を最新の状態に保つのに役立つプレミアムのオンラインコースも選択できるようにしているという。

One in four don't receive the diabetes education they need at diagnosis (国際糖尿病連合 2022年11月14日)
IDF School of Diabetes (世界糖尿病デー)

世界糖尿病連合 (IDF)
世界糖尿病デー (World Diabetes Day)
IDF糖尿病アトラス (Diabetes Atlas)(世界糖尿病連合)
世界糖尿病デー (世界糖尿病デー実行委員会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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