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2025年03月28日

糖尿病の運動療法にスマートフォンを活用 運動を楽しく続けられ血糖値や血圧も低下

 運動プログラムにスマートフォンやスマートウォッチなどを組み込み、糖尿病のある人の健康管理に役立てようという試みが行われている。

 スマートウォッチなどを活用しながら運動療法を支援するプログラムは、運動への取り組みを促進し、糖尿病の管理を改善するのに役立つことが、新しい研究で明らかになった。

ウェアラブルデバイスを活用し運動を支援

 ウェアラブルデバイスを活用しながら運動療法を支援するプログラムは、運動への取り組みを促進し、糖尿病の管理を改善するのに役立つことが、新しい研究で明らかになった。

 研究は、英国のバーミンガム大学などの4ヵ国の9の医療機関や研究機関が協力して行われたもの。研究成果は、「BMJ Open」に発表された。

 スマートフォンやスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを、健康管理や医療に役立てようという試みは、世界中で行われている。

 「2型糖尿病の治療では、血糖値を管理し合併症を防ぐために、ウォーキングなどの運動や身体活動に取り組むことが勧められています。しかし、医師や看護師などから運動を勧められても、新たに運動をはじめて継続するのは簡単なことではありません」と、同大学スポーツ・運動・リハビリテーション科学部のケイティ ヘスケス氏は言う。

 研究グループは、スマートフォンなどのウェアラブルデバイスを活用し、専用アプリを利用することで、運動療法を改善し、運動の習慣化を含むアクティブなライフスタイルを促進できるかを検証するため、英国とカナダで「MOTIVATE-T2D」研究を実施している。

 「ウェアラブルデバイスやアプリを上手に活用することで、新たに2型糖尿病と診断された人々が、個人に合わせた運動プログラムを自宅で継続できるようになり、健康上のメリットを享受できる可能性が示されました」と、ヘスケス氏は言う。

スマートウォッチを利用して運動に取り組むと血糖や血圧がより低下

 研究グループは今回、英国とカナダで、過去5~24ヵ月以内に2型糖尿病と診断され、生活習慣の改善のみ、あるいはメトホルミンによる薬物療法により糖尿病を管理している40~75歳の患者125人に、3D加速度センサーと光学式心拍数計を組み込んだスマートウォッチを使用してもらうランダム化比較試験を実施した。

 参加者を無作為に、スマートウォッチを使用する群と使用しない群に向け、6ヵ月後と12ヵ月後に、運動の継続や健康状態にどのような変化が起こるかを調べた。

 その結果、スマートウォッチを利用して運動療法に取り組んだ群は、運動を継続できている割合が高く、1~2ヵ月の血糖値の平均をあらわすHbA1cが6ヵ月後に5%より下がり、12ヵ月後には2%より下がっていた。収縮期血圧も6ヵ月後に1mmHgより下がり、12ヵ月後には4mmHgより下がっていた。

 運動プログラムの12ヵ月後の継続率も82%と高かった。プログラムは、運動の強度を少し汗ばんだり息が切れるくらいの中強度から、より激しい高強度に徐々に高めるよう工夫されており、運動量も6ヵ月後までに週150分に増やしていくことが目標に設定された。運動の専門家によるカウンセリング サポートなどもオンラインで提供した。

スポーツジムに行かなくても運動は続けられる

 「ウェアラブルデバイスを組み合わせた運動プログラムは、血糖値や収縮期血圧の改善など、さまざまな臨床的メリットがもたらす可能性が示されました」と、ヘスケス氏は述べている。

 「このプログラムの目標は、2型糖尿病の人に、運動を日常生活の一部として継続的に取り入れてもらい、最終的に心身の健康を改善することです。スポーツジムなどに行かなくてもできる、ウォーキングなどの有酸素運動や筋力トレーニングなど、さまざまなトレーニングを支援するよう設計されています」としている。

 「今後は、ウェアラブルデバイスの活用が、臨床的および費用対効果の点で優れていることを検証するために、本格的なランダム化比較試験を実施し、研究をさらに進めることを計画しています」としている。

mHealth Biometrics for Type 2 Diabetes (MOTIVATE T2D)
Smartwatches may help control diabetes through exercise (バーミンガム大学 2025年3月27日)
Mobile Health Biometrics to Enhance Exercise and Physical Activity Adherence in Type 2 Diabetes (MOTIVATE-T2D): a decentralised feasibility randomised controlled trial delivered across the UK and Canada (BMJ Open 2025年3月26日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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