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2025年03月25日
糖尿病になるのは遺伝のせい? それとも生活や環境のせい?【8項目の健康的なライフスタイル】
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- 予防 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病予備群 糖尿病合併症

糖尿病の遺伝要因があり、血糖値が上がりやすい体質の人でも、食事や運動などのライフスタイルを見直すことで、糖尿病リスクを大幅に減らせることが明らかになった。
糖尿病のある人や、糖尿病予備群は、脳の老化も加速しやすいが、健康的なライフスタイルにより脳の老化を防止できることも示された。
専門家は、食事や運動、血糖管理、体重管理など、健康的なライフスタイルを8項目にまとめて提唱している。
糖尿病の遺伝のある人でも生活改善でリスクを減らせる
2型糖尿病や高血圧、脂質異常症などの多くの疾患は、「遺伝要因」と「環境要因」の両方が関与している。
母親と父親から受け継いだ遺伝子の違いによって、病気になりやすい体質になるのが遺伝要因。それに対して、食事や運動、ストレス、タバコなどの汚染物質など、ライフスタイルや環境による影響が環境要因。
病気のなりやすさや老化など、健康に与える影響は、ライフスタイルや生活環境など、さまざまな環境要因の方が遺伝要因よりも強いことが、英オックスフォード大学が約50万人対象に行った調査で明らかになった。
環境要因により死亡リスクの変動の17%を説明できるが、遺伝要因により説明できるのはわずか2%未満であることなどが分かった。
これは、糖尿病などになりやすい遺伝要因のある人でも、生活や環境を見直すことで、病気や死亡のリスクを減らせることを示している。
生活や環境を見直して糖尿病リスクを減らす
研究グループは今回、大規模研究であるUKバイオバンクに参加した49万2,567人を対象に、環境要因(エクスポソーム)について、4万5,441人を対象に遺伝要因(プロテオーム)について、老化や早期死亡のリスクとの関連を調査した。
164の環境要因と22の主要な疾患の遺伝的リスクスコアが、老化や加齢に関連する疾患、早期死亡に及ぼす影響を評価した。
「不健康や食事や運動不足などの個人のライフスタイルや、社会経済的条件、喫煙習慣などは、改善が可能です」と、同大学ポピュレーション医療研究所のコーネリア ヴァン ドゥイン教授は言う。
「母親と父親から受け継いだ遺伝要因は、変えることは難しくとも、ライフスタイルの改善は誰でも取り組むことができます。糖尿病や肥満など、加齢に関連する疾患を予防・改善し、早期死亡を防ぐためにできることはたくさんあります」としている。
食事や運動に取り組んだ人は糖尿病リスクが大幅に減少
食事や運動などのライフスタイルを健康的に変えていくことで、2型糖尿病のリスクが減少し、健康に長生きできる可能性が高まることは、別の大規模な研究で確かめられている。研究は、米国心臓学会(AHA)が発表したもの。
「糖尿病のリスクのある人も、健康的なライフスタイルを実行すれば、元気に長生きできる可能性が高まります」と、マイアミ大学ヘルスシステムの内分泌代謝科専門医であるロナルド ゴールドバーグ氏は言う。
研究グループは、米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)の支援を受けて実施された大規模研究である「糖尿病予防プログラム(DPP)」に参加した成人3,234人を21年間追跡して調査した。参加者の研究開始時の平均年齢は51歳だった。
その結果、食事や運動などのライフスタイルを改善し、体重を7%減少することを目標とした群は、2型糖尿病のリスクが58%減少した。
「食事や運動、体重管理などをきちんと行った人は、行わなかった人に比べて、糖尿病リスクが大幅に減ることが示されました。生活習慣病を予防・改善するために、毎日の生活改善がとても重要です」と、ゴールドバーグ氏は言う。
健康的なライフスタイルにより脳の老化も防止
2型糖尿病のある人や、糖尿病予備群は、脳の老化が加速しやすいが、健康的なライフスタイルにより老化を防止できる可能性があることが、スウェーデンのカロリンスカ研究所による別の研究でも示された。
「糖尿病は認知症の危険因子であることが知られています。とくに実年齢に比べて脳が老けていることは、認知症の早期警告サインである可能性があります」と、同研究所の神経ケア科学・社会学部のアビゲイル ダブ氏は言う。
研究グループは、大規模研究であるUKバイオバンクに参加した40~70歳の成人3万1,229人を対象に、脳のMRI(磁気共鳴画像)検査などを実施、年齢と脳年齢との関連を調べた。
その結果、脳の老化は、2型糖尿病のある人では2.3歳、糖尿病予備群では0.5歳、それぞれ実年齢より進んでいることが示された。
とくに、糖尿病の管理を良好に維持できていない人の脳は、実年齢より4歳以上も老けていた。
一方で、糖尿病があっても、食事や運動、適度な飲酒、禁煙など、ライフスタイルが健康的な人は、脳年齢と実年齢の差は縮まり、脳の老化が進んでいないことが示された。
ライフ エッセンシャル 8

体格指数(BMI)は、簡単に計算でき、広く利用できる利点があるものの、それだけでは十分ではない。内臓脂肪(へその高さで計る腰回りの大きさ)を減らすことも含めて対策する必要がある。
高血圧と診断されるほどでなくとも血圧が高めだと、これまで通りの生活を続けていると高血圧へと移行しやすいので、注意が必要だ。
米国心臓学会(AHA)が公開しているビデオ
Integrating the environmental and genetic architectures of aging and mortality (Nature Medicine 2025年2月19日)
Lifestyle changes, meds effective to prevent or delay Type 2 diabetes; no change in CVD (米国心臓学会 2022年5月23日)
Effects of Long-term Metformin and Lifestyle Interventions on Cardiovascular Events in the Diabetes Prevention Program and Its Outcome Study (Circulation 2022年5月23日)
A healthy lifestyle may counteract diabetes-associated brain ageing (カロリンスカ研究所 2024年11月25日)
Diabetes, Prediabetes, and Brain Aging: The Role of Healthy Lifestyle (Diabetes Care 2024年8月28日)
ライフ エッセンシャル 8 (米国心臓学会)
マイ ライフ チェック (米国心臓学会)
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