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2025年03月26日

ゆっくり食べる人は糖尿病や肥満のリスクが低い こうすればゆっくり食べられるようになる

 ゆっくり食べる習慣のある人は、糖尿病リスクが低いことが明らかになっている。食べる速度がゆっくりであるほど、肥満は少ないことも示されている。

 逆に早食いの習慣のある人は、糖尿病リスクが上昇する。時間をかけて食事をすることは、食べすぎを改善するためにも有用だ。

 ゆっくり食べるのを習慣にするためにどうすれば良いかを解明した、新しい研究が発表された。

早食いは糖尿病リスクを高める

 ゆっくり食べる習慣のある人は、2型糖尿病のリスクが低いことが、糖尿病と診断されたばかりの人を対象とした調査で明らかになっている。

 逆に早食いの習慣のある人は、ゆっくり食べる人に比べて、2型糖尿病のリスクが2.5倍高いという。

 研究は、欧州内分泌学会(ESE)が発表したもの。研究グループは、新たに2型糖尿病と診断された成人234人と、糖尿病ではない成人468人を対象に調査した。研究成果は、「Clinical Nutrition」に発表された。

 「ゆっくり食べることで、満腹感を感じやすくなり、食べすぎを減らすことが期待できます。逆に、早く食べると、血糖値の変動が大きくなり、血糖値を下げるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性にもつながる可能性があります」と、リトアニア保健科学大学のリナ ラゼヴィチェネ氏は述べている。

ゆっくり食べる人は肥満が少ない

 九州大学が2型糖尿病の日本人約6万人を対象とした調査でも、食事の速度が肥満や体格指数(BMI)に影響することが示された。ゆっくり食べる人は肥満や内臓脂肪が少ないという。研究成果は、「British Medical Journal」に発表された。

 BMIは身長と体重から算出され、体重が適正範囲内かどうかを判定するときなどに用いられる。

 研究グループは、健康保険組合に加入している、2型糖尿病と診断された人男女5万9,717人を対象に、食べる速度と体重の増減との関連を調べた。

 その結果、ゆっくり食べる習慣のある人では、BMIが25以上の肥満の割合が、食べる速度が速い人に比べて42%少ないことが明らかになった。食べる速度がゆっくりであるほど、肥満は少ないことが示された。

 ゆっくり食べる人では、内臓脂肪の蓄積の目安となる、へその高さで測るウエスト周囲径が減りやすいことも分かった。早食いは、血糖値の上昇しやすさと関連しているという報告もある。

 「食事ではなるべくゆっくり食べるようにすると、糖尿病や肥満のリスクを減らし、健康を高めるのに効果的である可能性があります」と、研究者は述べている。

なぜ早食いは糖尿病や肥満のリスクを高める?

 食物を摂取すると血中のブドウ糖が増え、血糖値が上昇する。すると、血糖値を抑制しようと、膵臓からインスリンが分泌される。

 早食いをすると、膵臓は短時間で必要なインスリンを分泌しなくてはならなくなる。食後のインスリンの分泌が追いつかないと、血糖値が上昇しやすくなる。膵臓にも負担がかかり、膵臓が疲弊しやすくなる。

 その結果、インスリンの分泌量が減少したり、分泌されても十分に機能しなくなったりなどの問題が生じて、やがて血糖値の管理が難しくなる。

 日本人を含むアジア人は欧米人に比べ相対的にインスリンの分泌量が少ないことが知られる。糖尿病に予防・対策するために、早食いに注意し、膵臓への負担を軽減することが大切となる。

 ゆっくり食べることで、満腹中枢も働きやすくなる。満腹中枢は、脳の視床下部にある器官のひとつで、摂取した食物に反応して体に満腹感を知らせる。

 満腹中枢が血糖値の上昇を感知するまでに約15分かかるとされている。食べすぎを改善するために、それ以上の時間をかけて食事をすることが大切だ。 度に飲む習慣は健康維持に役立ちそうだ。

こうすればゆっくり食べられるようになる
「ゆっくり食べる」を科学的に検証
 それでは、ゆっくり食べるのを習慣にするために、どうしたら良いだろうか?

 ▼ 咀嚼回数を増やす、▼ 一口に入れる量を減らし食事を口に運ぶ回数を増やす、▼ ゆっくりとしたテンポの音楽を聴きながら食事をする――といった対策が役に立つ可能性があることが、藤田医科大学の新しい研究で示された。

 研究は、同大学臨床栄養学講座の飯塚勝美教授、青嶋恵氏、出口香菜子氏の研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」にオンライン掲載された。

 研究グループは、平均37.2歳の男性 15人と女性 18人を対象に実験を行った。テスト食(ピザ)を用いて食事時間などを測定し、食事行動やそれに影響を与える因子を調べた。

 その結果、食事時間は咀嚼回数、口に運ぶ回数と関連しており、噛む回数を増やす、一口を小さくすることで、ゆっくり食べられるようになることが示唆された。

 メトロノームのリズムに合わせて食事をしてもらい、ゆったりとしたテンポに合わせてもらうと、食事時間、咀嚼回数、口に運ぶ回数が増えることも分かった。

 食事時間にゆっくりとした音楽をかければ、時間をかけてよく噛んで食べられるようになる可能性がある。

 「この方法は、肥満を予防・改善する対策として、すぐに簡単に取り組めるもので、お金もかかりません」と、飯塚氏は研究の実際的な成果について述べている。

Eating fast increases diabetes risk (欧州内分泌学会 2012年5月7日)
Fast eating and the risk of type 2 diabetes mellitus: A case-control study (Clinical Nutrition 2013年4月)
Slow eating speed may be linked to weight loss (BMJ Open 2018年2月12日)
Effects of changes in eating speed on obesity in patients with diabetes: a secondary analysis of longitudinal health check-up data(British Medical Journal 2018年2月12日)
藤田医科大学臨床栄養学講座
Slowing Down to Eat Less: Towards Simple Strategies for Obesity Prevention (藤田医科大学 2025年3月25日)
肥満患者の生活指導"ゆっくり食べる"を科学的に検証 (藤田医科大学 2025年3月13日)
Greater Numbers of Chews and Bites and Slow External Rhythmic Stimulation Prolong Meal Duration in Healthy Subjects (Nutrients 2025年3月10日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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