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2026年02月10日

無症状でも生じている網膜の変化から糖尿病による視覚障害を予測可能

 糖尿病患者が将来視力を失うリスクの有無を、網膜の構造的な変化を詳細に観察することで予測できるようになるかもしれない。その可能性を示唆する、コインブラ大学(ポルトガル)のAntónio Francisco Ambrósio氏らによるラットを用いた研究の結果が、「Eye and Vision」12月号に掲載された。論文の共同責任著者の1人である同氏は、「われわれの研究結果は、糖尿病網膜症の存在が臨床的に明らかになるよりもずっと前から、テクスチャー分析という手法によって、網膜に生じ始めた微細な変化を把握できることを示している」と語っている。

 米国眼科学会(AAO)は糖尿病網膜症を、慢性の高血糖によって網膜の血管がダメージを受けることで発症する病気だと解説している。網膜とは、目の奥に広がっている細胞の層で、その層で感知した光の情報は視覚信号として脳に送られる。AAOによると、高血糖でダメージを受けた血管が閉塞して血液の流れが途絶えたり、血管が腫れて血液の成分が漏れ出したりすると、今度は網膜の細胞がダメージを受けて視機能が失われてしまうという。

 研究者らは、「残念ながら、網膜にダメージが生じていることに気づかずに、視力を失うリスクが高くなってから初めて診断される患者がたいへん多い」と指摘している。その理由として、糖尿病網膜症に伴う初期の変化である、神経の変性、炎症、血管機能の障害などは、眼科で一般的に使用されている検査ツールでは検出が難しいことが挙げられるとのことだ。

 今回の研究では、光干渉断層撮影(OCT)と呼ばれる検査法を、2型糖尿病を模した実験用ラットの眼に適用して、糖尿病による初期の変化を捉えられるかどうかをテストした。OCTは、瞳孔から目の奥に向けて光を照射して、その反射光の情報を基に眼球内の様子を画像に表すという検査法。臨床においては主に網膜の構造や厚さを評価するために使用されているが、研究においてはOCT画像を詳細に分析する「テクスチャー分析」によって、眼の健康状態に関する極めて精密な情報を把握できることが示唆されてきている。

 Ambrósio氏らは、健康なラットと2型糖尿病のラットを対象にOCT検査を行い、合計80件以上の網膜スキャン画像のテクスチャー分析を実施。その結果、糖尿病のラットの網膜には特異的な変化が起きていることを見いだした。重要なこととして、そのような変化は、炎症や血液成分の漏れが全くない網膜でも発生していたことから、それらの変化が糖尿病網膜症の早期警告サインとなる可能性が考えられた。

 同氏は、「OCT検査で得られる微細な信号を解析するというこのアプローチは、糖尿病網膜症の最も初期のプロセスを検出するものだ」と解説。その上で、「この手法は、永続的な視力障害が発生する前に高リスク者を特定して早期治療を可能にし、転帰改善につなげられる。また、このテクスチャー分析の結果はどの糖尿病ラットでも一貫して認められることから、より早期に糖尿病網膜症を診断するための普遍的な検査指標となり得るのではないか」と付け加えている。

 研究者らは今後さらに、OCT画像のテクスチャー分析に人工知能(AI)を活用することも考えられるとしている。ただし、この手法を実際の臨床に使う前に、ヒトを対象とする研究が必要であることも指摘している。

(HealthDay News 2025年12月17日)

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