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2026年02月20日
「1日5分だけ多く体を動かす」と死亡リスクが低下─海外最新研究より─
「運動は大切」と分かっていても、忙しい毎日のなかで続けるのは難しいものだ。しかし新しく特別なスポーツを始めずとも、日常のちょっとした身体活動の見直しが健康に良い影響をもたらす可能性が明らかになった。
紹介する海外の2つの研究は、日々の生活のなかでの少しの変化が、将来の死亡リスクの低下と関連することを示している。
日本人が「座っている時間」は長過ぎる
身体活動とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴うすべての活動のことをいう。運動はもちろん、家事やガーデニング、通勤といった日常的な動作も含まれる1)。
近年、身体活動の不足が健康に与える影響について、多くの研究が報告されている。厚生労働省によると、座っている時間が長い人は、そうでない人に比べて肥満、2型糖尿病、心臓病である率が高く、寿命も短いという2)。世界20か国の平日の座位時間を比較した調査では、日本人は諸外国の人と比べて座っている時間が最も長いという事実も見過ごせない2)。
たった「5分」の追加がもたらす大きな変化
こうした背景のなかで注目されるのが、2026年1月に世界的な医学誌『ザ・ランセット(The Lancet)』で発表された研究だ3)。ノルウェースポーツ科学大学のUlf Ekelund氏らが行ったこの研究では、ノルウェー、スウェーデン、米国、そして英国バイオバンクを含む複数の大規模研究から、計13万5千人以上のデータを解析している。
ウェアラブルデバイスで測定した活動量に基づき、活動時間の増加や座りっぱなしの時間の短縮で予防できた可能性のある死亡率を推定したところ、以下のような結果が得られた。
【中強度の身体活動を5分追加した場合】
•成人の大多数(人口の中で最も活動的な20%の層を除いた残り全員):中強度の身体活動(速歩きや階段の上り下りなど、少し息が弾む程度の動き)を1日平均17分ほど行っているこの層の場合、そこへ5分の同じ中強度の活動を追加するだけで、死亡リスクが10%減少
•最も活動量が少ない層(人口の中で最も活動的でない下位20%):中強度の身体活動が1日平均2分ほどのこの層であっても、速歩きなどを同じく5分追加するだけで、死亡リスクが約6%減少
【中強度の身体活動を10分追加した場合】
•大多数の成人(人口の中で最も活動的な20%の層を除いた残り全員):死亡リスクが約15%減少
•最も活動量が少ない層(人口の中で最も活動的でない下位20%):死亡リスクが約9%減少
【座る時間を30分短縮した場合】
•大多数の成人(1日平均10時間を座って過ごしている):死亡リスクが約7%減少
•最も座りっぱなしの時間が長い層(1日平均12時間を座って過ごしている):死亡リスクが約3%減少
結果が示すとおり、身体活動を増やすとともに座りっぱなしの生活を改善することは大切である。そして同時にこの結果から分かるのは、追加5分の身体活動の効率のよさだ。「中強度の運動を5分追加する」ことで得られる死亡リスクの減少(6〜10%)は、「座る時間を30分短縮する」効果(3〜7%)を上回っている。わずか5分の「少し息が弾む程度の動き」を日常に取り入れることは、効率においても注目に値する。
「睡眠・運動・食事」 複数の習慣を少しずつ変えるのが最も効率的
医師や保健師から「体を動かす習慣をつけるように」と何度となく言われたことがある人は多いだろう。しかし分かっていても、毎日継続するのは難しいものだ。そこで重要になるのが、一つの習慣を劇的に変えるのではなく、「複数の生活習慣を少しずつ組み合わせる」という考え方である。
ランセットの姉妹誌である『イークリニカルメディシン(eClinicalMedicine)』では、2026年1月、複数の生活習慣を組み合わせて改善することで、単一の習慣を改善するよりもはるかに効率的に、かつ少ない負担で健康効果が得られるという興味深い知見が発表された。
英国バイオバンクの6万人を対象としたこの研究4)によれば、「睡眠・運動・食事」の3つをセットでわずかに改善することが、寿命を延ばすための最も効率的な手段になるという。特に生活習慣が不健康な層(睡眠・運動・野菜の摂取のすべてが不足している層)において、理論上の寿命を1年延ばすために必要な最小単位の改善は以下の通りだ。
•睡眠時間を5分増やす
•中〜高強度の身体活動を2分増やす
•野菜の摂取量を1日あたり小鉢半分程度(約40g)増やす
注目すべきは、これらを同時に行うことで、個別の改善を積み上げた以上のメリットが得られる点である。例えば、この「生活習慣が不健康な層」が運動や食事を変えずに睡眠時間の改善だけで寿命を1年延ばそうとすれば、毎日25分の追加が必要だが、2分の運動と小鉢半分の野菜を組み合わせれば、睡眠時間はわずか5分の追加で済む計算になる。
また、最も理想的な生活習慣(1日7〜8時間の睡眠、40分以上の活動、健康的な食事)を実践できている場合、最も不健康な層に比べて寿命が9年以上長くなる可能性も示唆されている。
これらの研究報告を踏まえ、大切なのは、こうした生活習慣の改善を特別なものとして構える必要はないということである。「新しくスポーツを始めないといけない」「毎食を野菜中心にしなければいけない」とハードルを上げ過ぎず、日々の日常のなかに以下のような小さな工夫を取り入れることから始めてはいかがだろうか。
•デスクワークの合間に立ち上がり、腕を回したり体を動かしたりする。
•通勤や日常生活で出かける際の歩くスピードを上げる。
•エレベーターではなく、あえて階段を使ってみる。
•夕食に野菜をあと一品だけ足す。
•夜は数分だけ早く布団に入る。
日々の生活のなかの小さな一歩の積み重ねこそが、将来の健康へとつながっていくのである。
参考- 1)健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023|厚生労働省(2024年1月)
- 2)座位行動|厚生労働省
- 3)Ekelund U, et al. Lancet. 2026;407(10526):339-49.
- 4)Ding M, et al. eClinicalMedicine. 2026;81:102555.
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