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2026年01月08日

心電図で糖尿病予備群を検知できる時代へ スマートウォッチへの活用にも期待~血液検査なしで早期発見を可能にする新たなAI技術~

 東京科学大学と東北大学の共同研究チームは、糖尿病予備群の段階で心電図に生じる、従来は捉えられなかった微細な変化をAIにより見いだすことに成功した。
 研究チームはこの研究により、心電図データから糖尿病予備群を高精度で検出するAI「DiaCardia」を構築。スマートウォッチに応用できる可能性もあり、日常のデバイスが常にリスクを監視し、早期発見へ導く新たな予防医療の実現に期待が寄せられる。


糖尿病になる前の段階でいかに早くリスクに気づけるかが大事

 糖尿病は多くの場合、自覚症状がほとんどないまま始まり、ゆっくり進行する病気である。体調に大きな変化を感じないうちに血糖値が高い状態が続き、病気が見つかった時には目や腎臓、神経などに負担がかかり、合併症が起こりやすい状態になっていることも少なくない。そのため、糖尿病になる手前の段階である「糖尿病予備群」にいかに早く気づけるかが、将来の健康を左右する重要な鍵となる。

 しかし、糖尿病やその予備群のリスクを把握するには医療機関での採血検査が不可欠であり、身体的な負担や、検査を受けに行く手間が避けられないといったことから十分なチェックが行き届いていない人も多いのが現状である。

 本記事で取り上げる研究は、まさにこの状況を打破する糸口となるかもしれない。研究チームが着目したのは、健康診断で一般的に使われている「12誘導心電図」。本研究の成果を応用すれば、将来的に体に針を刺すことなく、また、わざわざ病院に出向かなくても、糖尿病のリスクを早めに検知できる可能性があることが示されたのだ。

心電図から糖尿病予備群を見つける新しいAI技術とは

 研究チームは心電図検査の波形にごくわずかな変化が生じ、そこに糖尿病に関連する兆候が反映されている可能性があるという仮説のもと検証を行った。

 研究1)では、2022年に単一の施設で健康診断を受けた18歳以上のデータのうち、心電図、空腹時血糖値、HbA1c、糖尿病治療の有無が確認できた16,766件を解析。これらの数値をもとに、対象者を「糖尿病予備群/糖尿病のグループ」と「正常血糖グループ」に分けたうえで心電図の波形をAIに学習させた。

 結果、この研究で構築した機会学習モデル「DiaCardia」は、12誘導心電図から得られる269項目の特徴量のみを用いて、糖尿病予備群/糖尿病を検出することに成功。人間では気づくことができないほどの心電図上の微細な変化をAIが捉えることで、「病気の予兆」を高精度で検知した。

 さらにDiaCardiaは、別メーカーの心電計や他施設の健診データを用いた検証でも高い精度を保っており、特定の施設や機器に依存しないAIモデルであることが示されている。

スマートウォッチが「気づき」を与える未来

 今回の研究成果が注目されている理由は、もうひとつある。それが、腕時計型のウェアラブル端末(スマートウォッチなど)で取得できる心電図データにも応用できる可能性を秘めている点だ。一部のスマートウォッチでは、12個の波形で構成される12誘導心電図のうちのひとつ、「I(いち)誘導心電図(右手首と左手首から電気信号を読み取る心電図)」に相当するデータが取得できる。研究では、このI誘導心電図の情報だけを用いた場合でも、12誘導心電図を用いた場合と同程度の検出精度が得られることがわかっている。

 このことは、将来的にスマートウォッチを装着するだけで、検査を意識することなく糖尿病予備群を把握できる日が来る可能性を示唆している。既に不整脈や血中酸素レベル、血圧の変動、睡眠の状態などを教えてくれるスマートウォッチが実用化されているが、さらにそこへ「糖尿病リスクの検知」も加わり、いつも身につけているデバイスが多方向から健康の状態を見守ってくれる、新しい予防医療の未来が着実に近づいているといえる。

 今回の研究で用いられた技術は、糖尿病を気にする個人だけでなく、その家族にとっても大きな意味を持つ。遺伝や生活習慣の影響を受けやすい糖尿病は、家族単位での予防が重要だ。スマートウォッチによる日常的なモニタリングは、「症状がないから大丈夫」という思い込みを見直し、家族全体で健康を意識するきっかけになり得る。

■参考

[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

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