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2025年01月31日

ニンジンやカボチャが血糖値の上昇を抑制 糖尿病の人が食べたい野菜 どう食べると良い?

 ニンジンに含まれる栄養が、血糖値を調節する体の能力を高め、腸内細菌の構成にも良い影響をもたらすという研究が発表された。

 カボチャの栄養が、糖の消化吸収を抑える働きをしている可能性があるという研究も発表された。

 ニンジンやカボチャは、β-カロテンや食物繊維が豊富に含まれる、糖尿病のある人の食事に活用したい野菜だ。

ニンジンの栄養が糖尿病を改善

 ニンジンに含まれる栄養が、血糖値を調節する体の能力を高め、腸内細菌の構成にも良い影響をもたらす可能性があるという研究を、南デンマーク大学が発表した。

 従来の食事療法・運動療法・薬物療法に加えて、野菜を積極的に食べるバランの良い食事が、糖尿病の予防・改善に役立つ可能性があるという。

 「野菜などの植物性食品に含まれる生理活性化合物が、人間に有益な効果をもたらし、健康を促進し、糖尿病や肥満などの予防・改善に役立つ可能性があります」と、同大学物理・化学・薬学部のラース ポルシャー クリステンセン教授は言う。

ニンジンの栄養が糖を吸収する能力を高める

 研究グループは、ニンジンに含まれる生理活性化合物が、細胞の糖を吸収する能力を高め、血糖値の調節を助けることを、マウスを使った実験で明らかにした。

 ニンジンの栄養を混ぜた高脂肪食を与えたマウスは、ブドウ糖を投与してから30分後の血糖値の上昇が有意に低いことを確かめた。

 さらに、ニンジンを与えたマウスでは、腸内微生物叢の構成が改善していた。ニンジンを食べる習慣があると、腸内細菌のバランスが健康になり、糖尿病にも良い影響があらわれる可能性があるという。

 ニンジンを与えたマウスの腸内では、短鎖脂肪酸を生成する細菌が多く存在していた。そうした腸内細菌は、腸の健康をサポートし、エネルギー代謝と血糖値を調節するのに有用とみられている。

ニンジンはβ-カロテンが豊富

 ニンジンには、ビタミンA(β-カロテン)がとくに豊富に含まれる。ニンジン1本くらいで、1日に必要なビタミンAを摂取できる。生のニンジン100gには、β-カロテンが6,900μg含まれる。

 β-カロテンは、ニンジンなどの緑黄色野菜に多く含まれる橙色の色素成分。β-カロテンはビタミンAに変換されて作用し、皮膚や粘膜の健康を維持したり、細胞の増殖や分化などにも寄与する。

 β-カロテンは、有害な活性酸素を除去する抗酸化作用をもち、老化防止、がん、動脈硬化、心疾患などの予防に役立つと注目されている。

ニンジンは糖尿病の人が食べたい野菜

 研究グループは、そうした栄養に加えて、ニンジンに含まれる「ファルカリノール」や「ファルカリンジオール」といった生理活性化合物にも着目している。

 これらの生理活性物質は、パセリ、セロリ、パースニップなど、ニンジン科の他の野菜にも含まれる。こうした物質に、抗炎症作用や抗菌作用、細胞毒性を減らす作用があるとみている。

 なおニンジンは、野菜のなかでは糖質が比較的多く含まれる。ニンジン100gあたり炭水化物は6.7g含まれる。

 「ニンジンは糖質も含まれますが、2型糖尿病のある人の食事で、上手に食べるのが良い野菜と考えられます」と、クリステンセン教授は指摘している。

軽く調理したものや生がおすすめ

 「2型糖尿病は世界中で多くの人を悩ませており、デンマークでも1996年以降、2型糖尿病の症例数は4倍以上に増加しています」と、クリステンセン氏は言う。

 「ニンジンと糖尿病の関連について、ヒトを対象とした臨床試験も計画しています。野菜などに含まれる生理活性化合物を使った大規模な臨床研究を行えば、ニンジンが2型糖尿病を改善する効果を実証できる可能性があります」。

 ニンジンが大腸がんに及ぼす影響を調べた研究の予備調査でも、生あるいは軽く調理したニンジンを毎日30~40g食べると、有益な効果を得られる可能性が示されたという。

 「ニンジンは、調理しやすい野菜で、さまざまな料理に使えます。スープなどに入れて長時間煮ても、栄養はある程度残りますが、できるだけ多くの栄養をとるために、軽く調理したものか生のものを食べることをお勧めします」。

 「また、ニンジンの表皮の部分も栄養が多いので、なるべく皮を剥かずに食べると良いでしよう」としている。

カボチャにも血糖値を上昇を抑える効果?

 β-カロテンが多く含まれる野菜は他にもある。カボチャもβ-カロテンの多い緑黄色野菜で、生100gにβ-カロテンが1400μg含まれている。

 カボチャには食物繊維も多く含まれる。カボチャ100gに炭水化物は10.9g含まれ、野菜のなかでは糖質が多いが、食物繊維も2.8g含まれる。

 立命館大学は、糖尿病の発症メカニズム解明と治療の研究に取り組んでおり、このほど最新の研究成果である「カボチャの血糖値上昇に対する抑制効果」を公表した。

 研究グループは、健常なラットに対しさまざまな方法でブドウ糖を与え、血糖値の上昇を比較する実験を行った。

 その結果、カボチャを投与したラットは、ブドウ糖による血糖値の上昇のピークが有意に低いことが明らかになった。

 先に投与したカボチャ自体に糖分が含まれていて、その後さらにブドウ糖を与えたにもかかわらず、血糖値の上昇が抑制されていた。血糖値の上昇を抑制する成分が含まれる可能性がある。

 「研究はまだ途上ですが、現段階の仮説として、カボチャの成分が糖の消化吸収を抑える働きをしているのではないかと考えています。カボチャの成分が小腸での糖の吸収過程に影響している可能性があります」と、研究者は述べている。

 カボチャは、糖質も含まれるが、栄養価の高い野菜だ。食べ方を工夫して、上手に食事に取り入れれば、糖尿病の予防・改善につながる可能性がある。

 研究は、立命館大学生命科学部の向英里教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「第27回日本病態栄養学会年次学術集会」で発表された。

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Effect of carrot intake on glucose tolerance, microbiota, and gene expression in a type 2 diabetes mouse model (Clinical and Translational Science 2024年12月3日)

糖尿病予防にカボチャが効く? 最新研究で分かった血糖値のピークを下げる効果 (立命館大学 2024年12月23日)

ニンジンのの栄養 (日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
カボチャの栄養 (日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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