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2025年01月29日

良い睡眠は糖尿病リスクを減らす 睡眠は「魔法の薬」 3つの方法で改善

 睡眠を十分にとれていない人は、糖尿病リスクが高いことが明らかになった。

 睡眠不足が慢性化すると、食事を健康的にするだけでは糖尿病リスクを下げられないことも分かった。

 睡眠を改善するために3つの方法が効果的と、専門家はアドバイスしている。

睡眠を十分にとれていない人は糖尿病リスクが高い

 睡眠を十分にとれていない人は、2型糖尿病リスクが高いことが、米ブリガム アンド ウィメンズ病院の調査で明らかになった。睡眠時間が短いだけでなく、睡眠のとる習慣が不規則であることも、糖尿病リスクを高めるという。

 「糖尿病のリスクを減らすために、睡眠習慣を改善することは重要です。研究では、良い睡眠をとれている人は、2型糖尿病のリスクが低いことが分かりました」と、同病院ネットワーク医学部門のシナ キアネルシ氏は言う。

 研究グループは、約50万人が参加している大規模研究である英国バイオバンク研究に参加した平均年齢62歳の成人8万4,421人を対象に、7夜の睡眠パターンの記録データと、7年以上の追跡期間での2型糖尿病の発症との関連について調べた。

 参加者は、研究開始時には2型糖尿病を発症しておらず、期間中に2,058人が糖尿病を発症した。

 解析した結果、睡眠を十分にとれていない人は、睡眠をとれている人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクは34%高ことが明らかになった。

 睡眠時間が短いだけでなく、睡眠パターンが不規則であることも、糖尿病リスクと関連が高いことが示された。

 「毎日、規則正しく睡眠をとる習慣をもつと、糖尿病のリスクを減らせる可能性があります」と、キアネルシ氏は指摘している。

健康的な食事だけでは睡眠不足を解消できない

 英国バイオバンク研究の別の研究でも、十分な睡眠をとれていない人は、2型糖尿病のリスクが高いことが明らかになっている。

 睡眠不足が慢性化すると、食事を健康的にするだけでは糖尿病リスクを下げられないという。研究は、スウェーデンのウプサラ大学によるもの。

 「これまでの研究で、睡眠時間が短いと2型糖尿病のリスクは高まるものの、野菜を食べるなどの健康的な食事スタイルにより、リスクをある程度減らせることが示されています」と、同大学生物科学部のクリスチャン ベネディクト氏は言う。

 「しかし、睡眠不足が慢性化すると、健康的な食事だけでは糖尿病のリスクを減らすことはできないことが分かりました」としている。

 研究グループは、英国の約50万人が参加している大規模なデータベースである「UKバイオバンク」に登録された、平均年齢が56歳の成人24万7,867人を対象に、10年以上追跡して調査した。

 その結果、睡眠時間が少ない人は糖尿病リスクが高く、とくに1日の睡眠時間が6時間未満の人は、7~8時間の人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが16%から41%上昇することが判明した。

 食事のスコアが高く、健康的な食事をしている人でも、睡眠時間が少ないと糖尿病リスクは高いままだった。

 「糖尿病のリスクを減らすために、食事スタイルを改善することは大切ですが、睡眠を見直すこともやはり必要です。ふだんから十分な睡眠をとることを心がけることが大切です」と、ベネディクト氏は指摘している。

睡眠を改善する3つの方法

睡眠を改善する方法 1
運動をする習慣があると睡眠が改善

 それでは、良い睡眠をとれるようにするために、どうすれば良いのだろうか? 睡眠の質を良くするために、ウォーキングなどの運動をする習慣が大切であることが、南オーストラリア大学による研究で明らかになった。

 研究グループは、平均年齢が12歳の小児1,168人と、平均年齢が44歳のその保護者1,360人を対象に調査を実施。その結果、中強度から高強度の運動をする習慣のある人は、睡眠障害が少なく、睡眠の質が良く、疲労が軽減されている傾向があることが分かった。

 「良い睡眠をとることが大切であることを、ほとんどの人は知っていますが、ぐっすり眠るのに苦労し、睡眠の悩みをもっている人は多くみられます」と、同大学で健康科学・看護学を研究しているリサ マトリチアーニ氏は言う。

 「大人も子供も、適度な運動を行うことを習慣にすると、睡眠の質が向上し、疲労感も減ることが分かりました」。

 「睡眠を直接妨げる習慣をやめることも大切です。朝起きたら朝日を浴びて体内時計を調整し、日中に起きているときはなるべく活動的に過ごすことなども必要です」としている。

睡眠を改善する方法 2
夜は高カロリーのジャンクフードを食べないようにする

 夜に高カロリーのジャンクフードを食べる習慣も、睡眠の質を低下させる原因になることが、スウェーデンのウプサラ大学による別の研究で示されている。

 「これまでの疫学研究でも、私たちが食べるものは、睡眠に影響することが分かっています。不健康な食事と睡眠不足は、どちらも公衆衛生上のリスクを高めます」と、同大学で細胞生物学を研究しているジョナサン セデルナエス氏は言う。

 研究グループは、15人の標準体重の男性を対象に、研究室で睡眠を数日間とってもらう試験を行った。カロリーは同じだが、健康的な食事と不健康な食事をランダムな順番でとってもらい、睡眠への影響を調べた。

 その結果、参加者が不健康な食事をしたときは、健康的な食事をしたときに比べて、深い睡眠を示す徐波活動が少なくなることが分かった。

 「基本的に、夜に不健康な食品を食べると、睡眠が浅くなることが示されました。ジャンクフードの多くは、糖質と飽和脂肪酸が多く、食物繊維は少なく、高カロリーです。睡眠を改善するために、健康的な食事をとることも大切です」と、セデルナエス氏は指摘している。

睡眠を改善する方法 3
就寝前にスマホやタブレットなどの画面を見ない

 就寝の1~2時間前に、スマートフォンやタブレット、パソコンなどの画面を見ると、眠りにつくのが遅くなり、睡眠の質も低下すると考えられているが、そうしたスクリーンタイムは、とくに就寝後に悪影響をもたらすことが明らかになった。

 「ベッドに入ってからスマートフォンなどの画面を見ると、睡眠が妨げられることが分かりました」と、ニュージーランドのオタゴ大学糖尿病・肥満研究センターのブラッドリー ブロスナン氏は述べている。

 「そうしたデバイスをベッドのまわりに置かないようにして、ベッドのなかでは使用しないようにすると、睡眠を改善できる可能性があります」としている。

 研究グループは、11~14歳の若年者85人を対象に、胸にボディカメラを装着してもらい、就寝の3時間前から就寝後の行動を1週間にわたり記録した。

 その結果、若年者の99%が就寝前の2時間以内にスクリーンを使用し、半数以上が就寝後にもスクリーンを使用していた。とくに就寝後にもスマホやタブレットを見ていた人は、睡眠が妨げられ、睡眠時間も短いことが分かった。

Study Finds Irregular Sleep Patterns Lead to Increased Risk of Type 2 Diabetes (ブリガム アンド ウィメンズ病院 2024年7月17日)
Association Between Accelerometer-Measured Irregular Sleep Duration and Type 2 Diabetes Risk: A Prospective Cohort Study in the UK Biobank (Diabetes Care 2024年7月17日)
Too little sleep raises risk of type 2 diabetes, new study finds (ウプサラ大学 2024年3月6日)
Habitual Short Sleep Duration, Diet, and Development of Type 2 Diabetes in Adults (JAMA Network Open 2024年3月5日)
Healthy sleep needs a healthy day: boost exercise to beat your bedtime blues (南オーストラリア大学 2024年3月1日)
Time use and dimensions of healthy sleep: A cross-sectional study of Australian children and adults (Sleep Health 2024年1月9日)
Junk food may impair our deep sleep (ウプサラ大学 2023年5月30日)
Exposure to a more unhealthy diet impacts sleep microstructure during normal sleep and recovery sleep: A randomized trial (Obesity 2023年5月28日)
Keep devices out of bed for better sleep - study (オタゴ大学 2024年9月4日)
Screen Use at Bedtime and Sleep Duration and Quality Among Youths (JAMA Pediatrics 2024年9月3日)

睡眠対策 (厚生労働省)
健康づくりのための睡眠ガイド2023
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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