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2025年07月18日
糖尿病の人は「サルコペニア」にご注意 筋肉の減少にこうして対策 何歳からでも予防・改善が可能
糖尿病のある人はサルコペニアのリスクが高い
「サルコペニア」とは、加齢などにもとない、筋肉量が減少したり筋力が低下し、身体機能が低下した状態。
サルコペニアになると、歩く、立ち上がるなどの日常生活での基本的な動作に支障がでてくる。運動能力やバランス感覚が低下し、転倒などのリスクも増加する。
糖尿病のある人が、血糖値が高い状態が続くと、筋肉量が減少しやく、身体機能が低下しやすいことが知られている。糖尿病予備群の段階から、サルコペニアのリスクは上昇する。
日本でも、2型糖尿病のある人は、サルコペニアのリスクが男性で2.6倍、女性で2.1倍に上昇するという調査結果が発表されている。
サルコペニアになると、運動や食事などの生活が困難になり、糖尿病の管理がより難しくなる。早期から適切な対策が必要となる。
サルコペニアのリスクは40代から上昇
サルコペニアのリスクは40代から上昇することが、オーストラリアのフリンダース大学の研究で示されている。研究成果は「BMC Geriatrics」などに発表された。
筋肉は、若年期をピークに、加齢にともない徐々に減少していく。高齢期になるとその減少は加速するので、若いときから対策することが重要になる。
研究グループは、オーストラリアの平均年齢が59.9歳の656人の成人を調査した。うちサルコペニアと判定されたのは2%だったが、4割近くの人はサルコペニア予備群と判定された。
サルコペニア予備群は、40代や50代の段階でその予兆があらわれており、筋肉が減少したり低下していたことが分かった。
「健康的に年齢を重ねられるようにするために、サルコペニアに対策するための介入と自己管理は、40代からはじめるべきです」と、同大学加齢・ケア学部のスー ゴードン氏は言う。
サルコペニアを予防・改善する4つの方法
それでは、サルコペニアを予防・改善するために、何をすれば良いのだろうか?
食事で必要な栄養をとり、運動を習慣として行うことが、筋肉量と筋力を維持するための重要な戦略になるという研究を、国際骨粗鬆症財団(IOF)が発表している。研究成果は「Osteoporosis International」に発表された。
「加齢にともなう筋肉の衰えは、60歳頃から加速しますが、すでに40代からはじまっています。最適な栄養状態と筋力トレーニングを組み合わせることが、サルコペニアの予防と改善に対して相乗的な効果をもたらします」と、スイスのジュネーブ大学骨疾患学部のジャン フィリップ ボンジュール教授は言う。
研究グループが推奨している、サルコペニアの予防法は次の通り――。
タンパク質を多く含む食品は、肉類、魚介類、卵類、大豆・大豆製品、乳製品など。タンパク質の最適な摂取量として、1日に体重1kgあたり1.0~1.2gを推奨している。
食事で、十分なビタミンDを摂取し、日光を浴びると皮膚で生成されるので、日光を浴びることも必要。必要に応じて、ビタミンDのサプリメントも摂取する。
肉類、チーズなどの乳製品、お菓子などの食品は、酸性に傾いていることが多いので、キャベツ、ホウレンソウ、ニンジン、ブロッコリー、トマトなどの、アルカリ性の野菜も食べるようにする。
日本でも、厚生労働省と農林水産省が策定した「食事バランガイド」で、主食・主菜・副菜をそろえた食事が推奨されている。
筋トレのバリエーションは多く、▼ウェイトマシンを使った筋トレ、▼ダンベルやバーベルなどを使ったフリーウェイト、▼伸縮性のあるゴムなどを使ったエラスティックバンド運動、▼自分の体重を使って行う自重トレーニングなどがある。
「筋肉の健康は財産のようなものです。筋肉は、身体機能だけでなく、全身の代謝や多くの臓器が正常に機能するために不可欠です」と、ボンジュール教授は述べている。
ふくらはぎが細くなっていたら筋肉減少のサイン
筋肉の減少を簡単に知る方法がある。
年齢や肥満状況にかかわらず、ふくらはぎが細くなっている人は、筋肉量が減少しているおそれがあることが、明治安田厚生事業団体力医学研究所や早稲田大学の新しい研究で明らかになった。
一般にウエストが太ってきたら肥満を気にするように、ふくらはぎが細くなったら筋量減少を気にして、対策に取り組むことが望まれるとしている。
研究グループは、近年、筋量の簡便なスクリーニング法のひとつとして広まっている、ふくらはぎ周囲長に着目し、筋量変化の把握に活用できるかを検討した。
40~87歳の日本人成人227人を対象に、平均8.0年追跡して調査し、ふくらはぎ周囲長の変化と筋量の変化を調査した。
その結果、ふくらはぎ周囲長の変化と四肢筋量の変化との間には正の相関関係があり、ふくらはぎが細くなっている人は、筋量が減少している傾向があることが確認された。年齢や肥満状況別にみても、おおむね同様の結果になった。
「筋量の変化を気軽に把握できれば、早期に筋量の衰えに気づくことが可能となります。筋量や筋力が低下した状態であるサルコペニアは、何歳からでも筋力トレーニングなどにより予防・改善が可能です。生活に支障が出る前に改善に取り組むことが重要です」と、研究者は述べている。
「一般にウエストが太ってきたら肥満を気にするように、ふくらはぎが細くなったら筋量減少を気にして、対策に取り組むことが望まれます」としている。
研究は、明治安田厚生事業団体力医学研究所の川上諒子研究員(早稲田大学スポーツ科学研究センター招聘研究員)、早稲田大学スポーツ科学学術院の谷澤薫平准教授らの研究グループによるもの。同大学の卒業生やその配偶者を対象とした研究「WASEDA'S Health Study」のデータを活用した。研究成果は「Clinical Nutrition ESPEN」に掲載された。
'Pre-frailty' from age 40 - what to look out for (フリンダース大学 2020年4月18日)
Pre-frailty factors in community-dwelling 40-75 year olds: opportunities for successful ageing (BMC Geriatrics 2020年3月6日)
Older adults' understandings and perspectives on frailty in community and residential aged care: an interpretive description (BMJ Open 2020年3月)
Feasibility and acceptability of commonly used screening instruments to identify frailty among community-dwelling older people: a mixed methods study (BMC Geriatrics 2020年4月22日)
Multiple treatments to slow age-related muscle wasting (バーゼル大学 2022年4月20日)
Which nutritional factors help preserve muscle mass, strength and performance in seniors? (国際骨粗鬆症財団 2013年1月18日)
Impact of nutrition on muscle mass, strength, and performance in older adults (Osteoporosis International 2012年12月18日)
公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所
Relationship between longitudinal changes in calf circumference and skeletal muscle mass (Clinical Nutrition ESPEN 2025年8月)
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