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2025年07月17日

わずか10分間のウォーキングで糖尿病リスクが減少 どの年齢の人も運動をはじめると寿命を延ばせる

 どの年齢の人も、運動をはじめて、より活発に体を動かすライフスタイルに切り替えると、死亡リスクを大幅に低減でき、寿命を延ばせることが最新の研究で明らかになった。

 ずっと運動不足だった人も、また土日の余暇時間だけの運動であっても、活動レベルを高めることで効果を期待できるという。

 糖尿病とともに生きる人が運動に取り組むと、わずか10分のウォーキングなど、短時間の運動であっても、糖尿病の合併症のリスクを減らし、医療費を削減するすのに役立つことも示されている。

どの年齢の人も運動をはじめると寿命を延ばせる

 運動不足だった人も、ウォーキングなどの運動をはじめて活動レベルを高めると、あらゆる原因による死亡のリスクが低下することが、オーストラリアのクイーンズランド大学や東京医科大学などの研究者による最新の調査で明らかになった。

 高齢になってから活動的になったという人も、死亡リスクは20~25%減少した。

 どの年齢の人も、より活発に体を動かすライフスタイルに切り替えると、とくに心血管疾患による死亡リスクを大幅に低減でき、寿命を延ばせる可能性がある。

 また、運動ガイドラインで推奨されている運動量を達成できなくとも、運動を続けることで大きな効果を得られるとしている。

運動不足だった人も運動をはじめると死亡リスクは大幅に低下

 研究グループは今回、2024年4月までに発表された、357人から657万2,984人を対象とした85件の研究をレビューした。

 その結果、一貫して活動的だった人は、あらゆる原因による死亡リスクが30~40%低かったのに加えて、運動や身体活動をあまり活発に行っていなかった人も、活動レベルを高めることで、運動不足がずっと続いた人に比べて、あらゆる原因で死亡するリスクが22%低下することが明らかになった。

 また、運動不足が続いた人に比べて、余暇時間の活動レベルを高めた人も、あらゆる原因で死亡するリスクは27%低かった。

 さらに、心血管疾患やがんで死亡するリスクは、生活全般で活動レベルを高めた人は40%低く、余暇時間の活動レベルを高めた人も25%低いことも示された。

どのような運動のやり方であっても良い結果に

 研究は、クイーンズランド大学公衆衛生学部のリュイ ユー氏、グレゴレ ミエルケ氏、東京医科大学公衆衛生学分野および神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科の根本裕太氏らによるもの。研究成果は、「British Journal of Sports Medicine」に発表された。

 運動ガイドラインでは、成人はウォーキングなどの中強度の運動や身体活動を、週に150~300分行うか、筋トレなどを含む高強度の身体活動を週に75~150分行う、あるいはその両方を行うことが目標に定められている。

 「研究では、ガイドラインで推奨されている運動量を達成している人は、もっとも効果が高いことが示されましたが、推奨量を下回るレベルであっても、運動を行う習慣を維持したり、運動量を増やした人は、明らかな健康上のベネフィットを得られることが示されました」と、研究者は述べている。

 「どのような運動のやり方であっても、あるいは短時間の運動でも、まったく運動をしないでいるのに比べれば、ずっと良い結果につながります」。

 「人生のどの時点でも、より活動的なライフスタイルに切り替えることで、寿命を延ばすことを期待できます。健康と長寿のために、運動を開始するのが遅すぎることも、運動量が少なすぎるとこともありません」としている。

運動が糖尿病リスクを減らす
1日にわずか10分のウォーキングでも効果が

 欧州心臓病学会(ESC)が発表した研究では、糖尿病とともに生きる人が運動に取り組むと、糖尿病の合併症のリスクを減らすことができ、費用対効果も高いことが示されている。

 「運動や身体活動の量を少し増やすだけでも、2型糖尿病や心臓病のリスクのある方の健康を高める大きな効果を得られます」と、オランダのマキシマ医療センターの心臓内科医であるハレルド ケンプス氏は言う。

 「運動のためにまとまった時間をとれないという人も、短時間でも良いので歩くようにすると、血糖管理の改善を期待できます。活発なウォーキングなどの運動を、わずか10分行ったり、週に2時間行うだけでも、何もやらないでいるよりは良いのです」としている。

 座ったまま過ごす時間が長引いたら、それを中断し職場や自宅のまわりを歩いてみたり、エレベーターやエスカレーターを使わないで、なるべく自分の足で階段を上る、活動量計やスマホで毎日の歩数を記録するといったことで、運動量を増やすことができる。

 「多くの人は実行可能な具体的な目標があると、モチベーションを高められる傾向があります。運動により糖尿病の合併症を予防できれば、長期的には医療費も削減できます」と、ケンプス氏は指摘する。

It's never too late: Just moving more could add years to your life (BMJ Group 2025年7月12日)
Physical activity trajectories and accumulation over adulthood and their associations with all-cause and cause-specific mortality: a systematic review and meta-analysis (British Journal of Sports Medicine 2025年7月10日)
Physical activity reduces mortality in patients with diabetes (欧州心臓病学会 2019年1月15日)
Exercise training for patients with type 2 diabetes and cardiovascular disease: What to pursue and how to do it. A Position Paper of the European Association of Preventive Cardiology (EAPC) (European Journal of Preventive Cardiology 2020年8月29日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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