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2025年10月22日

歯磨きだけでは不十分?「歯間ケア」が良好な血糖管理に関係する可能性

 サンスターと南昌江内科クリニック/一般社団法人南糖尿病臨床研究センターとの共同研究により、歯間ケアの習慣や歯の本数の保持が血糖値の安定と関連することを示した論文が、オンラインで先行公開された。
 結果は2023年に学会で発表されていたが、このたびの論文は追加解析の結果を含む内容となっている。
 フロスや歯間ブラシなどを用いた歯間ケアの習慣が、糖尿病の管理において重要な役割を果たす可能性が改めて示された。

歯周病と糖尿病はお互いに影響し合う

 歯周病は、細菌により引き起こされる炎症性の疾患である。歯ぐきや歯を支える骨などが溶け、進行すると最終的には歯を失う1)。この歯周病と糖尿病は、互いに悪影響を及ぼし合う関係にあることがこれまで多くの研究で報告されてきた。

 糖尿病があると歯周病が進みやすく、歯周病が進行すると血糖管理が悪化しやすい。歯周病の治療が、糖尿病のある人のHbA1c(過去1〜2か月の平均血糖値を示す指標)を下げることもわかっている。

 2023年5月に学会で発表されたサンスターと南昌江内科クリニック/南糖尿病臨床研究センターの共同研究では、歯間ケアの習慣がある人や歯を20本以上保持している2型糖尿病患者は、平均血糖値(CGMによるグルコース値)が低く、24時間の血糖変動の質も良い傾向があることがわかった(詳しくは「1日2回の歯磨き」が糖尿病の血糖管理を改善 歯磨き習慣のある人はHbA1cや血糖値が低下」を参照)。

 2025年9月、この研究の追加解析を行った結果を含む論文が先行公開されたことに関するリリースが公開され、口腔ケアと血糖管理の関係性について改めて言及された2)

追加解析で改めて示された歯間ケアの大切さ

 この研究は、クリニックに通院中で、自分の歯が15本以上残っている2型糖尿病患者104名を対象に調査を実施。14日間にわたりCGM(持続血糖測定)の記録をとったほか、血液検査や口腔衛生に関するアンケートを行い、これらのデータから血糖管理との関係性を分析したものだ。

  今回の追加解析では、先の発表による歯間ケア習慣と血糖変動の関連性に加え、TIR(血糖が目標域70-180mg/dLに入った時間の割合)やGMI(CGMの数値から計算したHbA1cの推定値)など、現在の糖尿病治療で重視される臨床指標についてもさらなる解析を行い、定期的な歯科受診、歯磨きの回数、歯間ケアの頻度、残っている歯の本数の4項目から総合的に検証した。

 その結果、従来の解析でわかっていた、週3回以上フロスや歯間ブラシによる歯間ケアを行っている人は血糖値が一日を通じて低く、目標範囲にある時間が長いという事実について明確な差が認められ、より強く関連性が示された。また、歯が20本以上ある人についても、24時間を通じての血糖に明確な違いが見られ、GMIが低いことが明らかになった。

口腔衛生状態(歯科通院、歯みがき頻度、歯間清掃頻度、歯の本数)による血糖値(CGM測定グルコース値)の比較。15分ごとにCGMで測定したグルコース値の各グループの中央値をポイントで示している。

歯間ケア習慣・歯科検診の現状と重要性

 この研究では「歯間ケアの頻度」が良好な血糖管理に関係する可能性が示されているが、果たして日本では、どれくらいの人が歯間ケアを行っているのだろうか。

 令和6年の歯科疾患実態調査によると、歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシを使っている人は全体の55%程度にとどまっている。男女差もあり、女性の使用率は約60%であるのに対し、男性は約45%と低い3)

 また、同研究では歯が20本以上ある人は、15~19本の人と比べて、24時間を通じて血糖値が低いこともわかっているが、歯を失う主な原因は歯周病やむし歯であり、これらを防ぐには日々の口腔ケアとともに、定期的に歯科を受診することが肝心だ。

 日本歯科医師会では、年1回の歯科健診に加え、年2回以上の定期受診を勧めている4)。しかし、令和6年の歯科疾患実態調査3)の結果をみると、過去1年間に歯科健診(検診)を受けた人は60%程度にとどまっている。

 歯科健診や定期受診は、歯周病の早期発見・予防につながり、歯磨きや歯間ケアのアドバイスも受けられる。前述のとおり歯を守ることは血糖管理にも良い影響をもたらす可能性があり、歯ブラシに加えてフロスや歯間ブラシを使い、定期的な歯科受診を心がけることが大切である。

■参考

[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

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