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2025年07月15日
高血圧対策では減塩が必要 魚介系ラーメンは血圧を上げない? こんな食事は食塩が多くなりやすい
血圧を上げにくいのは魚介スープのラーメン
野菜も食べることが大切
日本人は、世界的にみて食塩の摂取量が多い。とくに、醤油、味噌、塩などの調味料から、食塩を多く摂取している。
外食で食塩がとくに多く含まれるのは、ラーメンなどのめん類だ。
塩分(ナトリウム)のとりすぎは、高血圧、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管疾患の大きな原因になり、糖尿病のリスクも高める。
食事では、ナトリウムを減らして、野菜が主な供給源となるカリウムを増やすことが重要だ。
京都府立大学が、京都市内の人気ラーメン店のラーメンの、食塩(ナトリウム)量およびカリウム量を測定した結果、スープの出汁の種類では、▼魚介、▼鶏、▼豚骨の順で、ナトカリ比が低い(ナトリウムが少ない、カリウムが多い)ことが明らかになった。
魚介スープでナトカリ比が低いのは、煮干し、削り節や魚のアラから抽出されたカリウムが多いことや、カリウムの塩味を増強する作用により、使用する食塩を抑えられている可能性が考えられるという。
「ラーメンを食べるときは、スープを残す、あるいはカリウムを多く含む野菜をともに食べるなどの工夫で、血圧への影響を和らげる可能性があります。スープの出汁素材を工夫することも、塩分を控えた美味しいラーメンスープ作りに役立つ可能性もあります」と、研究者は指摘している。
ラーメンを食べると血圧が上がりやすい?
カリウムもとってナトリウムの排出を増やす
カリウムは、ナトリウムの排出をうながし、血圧を下げる働きをする。カリウムの摂取は心血管疾患の予防に対して効果的であることが知られている。
カリウムは、野菜以外にも、海藻類、イモ類、豆類、果物などに多く含まれる。腎機能が正常であれば、食事ではカリウムを十分にとることを心がけたい。
塩分(ナトリウム)と野菜(カリウム)の摂取のバランスをあらわす指標が「ナトリウム/カリウム比」[ナトカリ比]。この値が高いとナトリウム摂取量が多い、あるいはカリウム摂取量が少ないことをあらわしている。
京都市内の人気ラーメン店24店を調査
「減塩+カリウムアップ」で高血圧に対策
研究グループは今回、京都市内ラーメン店のうち、「食べログ」で高評価であった24店の協力を得て、52食分のスープと具材を入手し、食塩量とカリウム量を測定した。
その結果、ラーメン1食あたりの平均の食塩の量は6.7g、血圧に対して食塩と反対の効果をもつカリウムの量は448mgで、ナトカリ比は10.7mmol/mmolであることを明らかにした
研究は、京都府立大学農学食科学部栄養科学科の奥田奈賀子教授らによるもの。研究成果は、「Dietetics」にオンライン掲載された。
「"ラーメンのナトカリ比は高い"という結果は、"ラーメンを多く食べると血圧が高くなりやすい"ことを、"魚介ラーメンのナトカリ比は、豚骨ラーメンよりも低い"という結果は、"魚介ラーメンは豚骨ラーメンよりも高血圧になりにくい可能性"を示唆しています」と、研究者は説明している。
「高血圧予防には、"減塩+カリウムアップ"が重要です。これを行うと、ナトカリ比は下がります」としている。
どんな食事をすると食塩が多くなりやすい?
どのような食事をすると、食塩摂取量が多くなりやすいかが、東京大学の別の新しい研究で明らかになった。
食塩摂取量が多くなりやすい食事には、▼昼食や夕食、▼非勤務日、▼レストランなどの外食、▼2人での食事、▼秋冬といった食事の状況や、▼めん類などの主食、▼汁物、▼漬物、▼中程度〜高度に加工された肉や魚介類、▼アルコール飲料が多い、▼塩を使った調味料や野菜の摂取量が多いといった特徴があることが示された。
研究グループは、日本人成人2,757人から得られた、のべ6万食以上の食事データを用いて、食塩摂取量が多い食事の状況と食品の種類を調査した。
個人の食塩摂取量が、どのような状況や食品で多くなるのかを、食事の情報をその都度リアルタイムに記録する「生態学的瞬間評価」という手法を用いてはじめて解明した。
めん類や汁物・漬物・加工肉などを食べすぎないことが大切
減塩を達成するために、控えることが推奨されている食品は、汁物・漬物・加工された肉や魚介類など。一方で、積極的にとることが勧められている食品は、野菜、減塩調味料、ハーブやスパイス、酢やかんきつ類の果汁、果物などだ。
研究グループは、18~79歳の日本人男女2,757人を対象に、各季節に2日ずつ、合計8日間にわたり、すべての食事について、食事の状況、すなわち食事の種類(朝食・昼食・夕食)、勤務日かどうか、食事場所、一緒に食べた人数と、食品の種類と量を記録してもらった。食塩摂取量への影響が小さい間食を除外し、のべ6万3,239食を解析対象とした。
その結果、食塩摂取量は、▼主食(とくにめん類)、▼汁物、▼漬物、▼中程度〜高度に加工された肉や魚介類(ソーセージやかまぼこなど)をよく食べる食事で多く、▼果物を含む食事の多い食事では少ない傾向が示された。
また、塩を使った調味料や野菜の使用量が多いほど、食塩摂取量も多い傾向がみられた。
「今回の研究では、食事に関する情報をリアルタイムに繰り返し収集する手法により、食事での食塩摂取量と関連する食事の状況や食品摂取の特徴を明らかにしました。研究成果は、日本人の食塩摂取量を減らすための、具体的で実践的な対策の検討に役立つことが期待されます」と、研究者は述べている。
研究は、東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の篠崎奈々助教、村上健太郎教授、佐々木敏・東京大学名誉教授らによるもの。研究成果は、「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に発表された。
京都府立大学 農学食科学部 栄養科学科
Na and K Content and Na/K Ratio of Ramen Dishes Served in Ramen Restaurants in Kyoto City, Japan (Dietetics 2025年6月3日)
東京大学 大学院医学系研究科 社会予防疫学分野
Ecological momentary assessment of meal context and food types contributing to salt intake at meals (International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity 2025年6月28日)
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