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2025年12月25日
「楽しい」気持ちが行動を後押し 漫画による子どもの糖尿病教育の効果
筑波大学の研究グループが子どもに漫画を用いた糖尿病教育を行った結果、漫画による教育には講義で学ぶのと同じレベルの知識獲得と運動量の増加が期待できることがわかった。
また、漫画は講義よりも高い満足感を得られ、「楽しい」といった気持ちが行動の変化につながることも明らかになった。
漫画による糖尿病教育がもたらすポジティブな効果
糖尿病は大人に限った病気ではなく、子どもの糖尿病も世界的に増加している。糖尿病をもつ人が、子どもから高齢者まで自分らしく健康的に暮らすには周囲の理解が不可欠だが、世間では「糖尿病は怠け者の病気」などの正しくない思い込みもいまだ多い。そのような誤解を生まないためには、糖尿病のある人、ない人にかかわらず、子どもの頃からの教育が肝心だ。たとえば1型糖尿病と2型糖尿病の違いや、インスリン注射、食事管理などに関する子どもへの正しい知識の普及が求められている。
より多くの子どもが糖尿病の正しい知識を獲得するために、効果的な方法はなにか。筑波大学の研究グループは、この点に着目した研究を行った1)。
研究では、茨城県に住む小学生と中学生(8~15歳)30人を、糖尿病に関する「漫画を読むグループ」と「講義を聞くグループ」に分け、教育方法による効果の違いを比較。具体的には、両グループともに最初に糖尿病に関するテストを受けてもらい、その後2週間にわたり活動量を測定。そして「漫画」または「講義」による糖尿病教育(それぞれ20分程度)を実施し、6か月後に知識テストの結果と活動量の変化を見て評価した。
その結果、糖尿病知識テストでは漫画グループでスコアが11点上昇し、講義グループでも10点上昇した。また活動量については、漫画グループでは1日の平均歩数が約1,400歩増え、講義グループでも同じくらい増加した。
さらに心理面に注目すると、漫画グループは読んだ後に満足感を感じやすく、漫画を「楽しく」読めた子どもほど、身体活動量が増える傾向にあった。反対に、漫画を読んで「怖い」「悲しい」と感じた子どもは、知識や運動の伸びが小さい傾向が示された。一方、講義グループではこのような気持ちの変化と行動変容との間に、明確な関連は認められなかった。
漫画なら楽しみながら教育効果を得られる
結論として、この研究では漫画による糖尿病教育は、講義と同程度の知識や運動習慣の向上につながること、そして「楽しい」といった感情がそれらの向上に影響することが明らかになった。後者については講義による教育では認められなかったことから、漫画には子どもの「やる気」や「楽しい気持ち」を引き出す働きがあると考えられ、効果の大きさは同等であっても、教育効果のメカニズムは異なる可能性が示された。
今回の研究に使われた漫画は、筑波大学の医学系と芸術系の教員が共同で開発したもの。全体の構成は理学療法士が担当し、その草案をもとにイラストレーターが作画を行った。2章構成で、1型糖尿病と2型糖尿病をテーマにそれぞれの発症、症状、治療法、日常生活での注意点が20分程度で読める分量(56ページ)でわかりやすく解説されている(漫画はこちらから読むことができます)。
研究結果のリリースにあたり研究チームは、「今後はより大規模な研究を行い、学校や地域社会における『健康教育プログラム』として活用できる仕組みづくりを目指します。漫画を用いた教育は、子どもが楽しみながら知識を身につけ、自然に体を動かす行動につながる点が強みです。糖尿病だけにとどまらず、肥満や生活習慣病の予防、さらにはメンタルヘルス教育など幅広い分野への応用も期待されます」とコメント。
楽しみながら正しい知識を身につけていくことは、自身の将来の健康を支える一助となるだけでなく、糖尿病に対する誤解や偏見のない社会にもつながるはずだ。こうした研究のひとつひとつが、病気とともに生きる人がより自分らしく快適に暮らせる未来への一歩となることに期待したい。
■参考
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