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2026年02月19日

「肥満」は悪くない 〜偏見生む病気との違い〜

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時事通信社

 肥満の人に対する批判や偏見は、日本でも外国でも根強い。しかし、肥満自体と肥満が引き起こす疾患「肥満症」は全く違う。神戸大学大学院の小川渉教授(日本肥満学会常務理事)は「両者をきちんと区別しないと、偏見(スティグマ)を生むことに加え、治療を受ける必要がある人たちへの障害になってしまう」と強調する。

カードを使い、肥満への偏見を知ってもらう

カードを使い、肥満への偏見を知ってもらう

 ◇偏見解消へツール作成

 製薬企業の日本イーライリリーと田辺ファーマは企業や団体などに向けて、肥満に対する偏見解消につなげるツールを作った。「みえない偏見カード」と「みえない要因すごろく」だ。

 カードは、テレビ番組や映画、食事のシーン、職場など日常生活に潜む誤解や偏見を可視化。例えば、自分に合うサイズがないのは「痩せる努力をしていない本人のせいなので仕方ない」という考えに共感するかどうかを問い掛ける。カードゲームの参加者は意見を交わしながら理解を深めていく。すごろくは、身体的・心理的・環境・社会的という4種類の「みえない要因カード」をそろえてゴールを目指すボードゲームだ。

 両社は2025年12月に研修会を実施。26年3月4日の「世界肥満デー」に向けて、Web上で二つのツールを公開している。

 ◇肥満の要素は多様

肥満症はBMI25以上で高血圧などの健康障害がある場合

肥満症はBMI25以上で高血圧などの健康障害がある場合

 監修した小川教授は「肥満自体は決して悪いことではない」と話す。「自分で食事をコントロールできない」「だらしない暮らしをしているせいだ」など、肥満に冷たい視線を送る人は少なくない。しかし、遺伝的な要因や体質、生活環境、職場環境、ストレスなど肥満になる要素は多様だ。小川教授は「一言で肥満を『悪』と決め付けるのは差別ではないか」と指摘する。

 ◇肥満症とは

 BMI25以上で、高血圧や糖尿病、脂質異常、関節症、月経不順など11以上の健康障害がある場合を肥満症と呼ぶ。減量によって症状は改善する。肥満の定義は、日本はBMI25以上、欧米ではBMI30以上と異なる。BMI25以上の日本人の場合、内臓脂肪が蓄積していることが多いという。

 「内臓脂肪の蓄積は皮下脂肪の蓄積より健康上、望ましくない。これにはエビデンス(医学的根拠)がある」

 ただ、内臓脂肪を正確に測るCTなどの検査は保険が適用されない。そこで、健診やかかりつけのクリニックなどでは腹囲測定の数値を内臓脂肪型肥満かどうかを判断する目安としている。

 小川教授は「肥満が原因の疾患であれば、肥満を解消すれば症状が改善する」と言う。

神戸大学大学院の小川渉教授

神戸大学大学院の小川渉教授

 ◇肥満症治療の選択肢

 治療の選択肢はいろいろある。薬物療法は約20年前から始まり、2014年には手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除)も保険適用されるようになった。食事・運動・行動療法という非薬物療法は基本の一つだ。ただ、日本肥満学会が認定する専門医は約250人と少なく、所属する施設も限られているのが現状だという。

 薬物療法では新薬も登場している。仕事柄、外食を取ることが多い職種の人はカロリー過剰摂取につながりやすい。小川教授は「食欲を抑制する薬剤によって、食生活における行動を変えやすくなる」と説明する。

 「会食の席で、私が頼んでもいないのに大盛りの食事が前に置かれる。太っているからだと思うが、とても嫌だ」

 小川教授が診察した患者はこんな嘆きを漏らしたという。

 肥満だと病気になるかもしれないと不安だけをあおるのは差別を生むだけだ。外見上、痩せた方が良いのか。健康障害を改善するために減量治療を受けた方が良いのか。患者側だけでない。「かかりつけ医の皆さんも含め、この点を分けて考えてほしい」と言う。(鈴木豊)


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日本医療・健康情報研究所

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