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2025年12月18日

糖尿病のある人の4割が職場でネガティブな扱いを経験~国際調査が示す実態~

 世界では糖尿病をもちながら働く人の多くが職場での偏見や否定的な扱いに直面している。国際糖尿病連合(IDF)が7カ国で新たに実施した調査によると、糖尿病をもつ従業員の40%が職場で否定的な扱いを経験し、32%が「その扱いを理由に退職を考えたことがある」と回答。糖尿病治療を続けながら働いている人に対する理解がいまだ十分に成されておらず、職場での制度的・組織的なサポートの必要性が高いことが示されている。

偏見やキャリアへの悪影響をなくすために

 糖尿病の管理は、血糖値の測定やインスリン注射など、日常的かつ継続的な対応が欠かせない。IDFのデータによると糖尿病をもつ人の7割は働く世代1)だが、職場環境によっては糖尿病の管理と仕事の両立が難しくなる場合がある。
 IDFは、アルゼンチン、中国、ドイツ、インド、パキスタン、南アフリカ、アメリカの7カ国で、糖尿病のある成人1,400人を対象に世界規模のオンライン調査を実施した2)。その結果、回答者の40%が「糖尿病を理由に職場で否定的な扱いを受けた」と答え、32%は「その扱いを理由に仕事を辞めることを考えたことがある」と回答。糖尿病への理解不足や偏見が、いまも多くの職場に残っている実態が浮き彫りとなった。否定的な扱いを経験した割合は、1型糖尿病のある人で46%、2型糖尿病のある人で36%と、1型のほうが高かった。

 ネガティブな扱いの具体的内容としては、「糖尿病を管理するための休憩や休暇を拒否された」が28%、「糖尿病を理由にキャリア開発や研修の機会を逃した」が23%にのぼった。
 職場でのこうした否定的な扱いは、糖尿病をもつ人の身体的・精神的な負担に加え、将来のキャリア形成にも影響が及ぶ可能性がある。

 アンケート結果には国による差もみられた。職場で否定的な扱いを受けたと答えた割合は、パキスタン(68%)、インド(55%)、アメリカ(42%)の順で多かった。また、ドイツでは対人的な差別を感じている人の割合は他国と比べ少なかった一方で、「糖尿病のある人を支援する職場方針がない」と答えた人が51%に達し、世界平均の29%を大きく上回った。

 さらに、日々の糖尿病管理そのものが職場での不安要因となっていることも明らかになった。26%が職場でインスリンを投与することに、20%が血糖値の測定をすることに気まずさを感じていると回答。糖尿病のある従業員に不必要なストレスを強いないためにも、糖尿病治療に対する職場での環境整備と理解が必要だ。

健康について誰もが安心して話せる職場づくりを

 調査では、「糖尿病であることを雇用主に伝えていない」と答えた人が10%存在した。その理由として、43%の人が「他の人と異なる扱いを受けることへの不安」を、29%の人が「病状を明かすことでキャリアが制限されることへの懸念」を挙げている。
 一方で、29%の人が「信頼できる同僚1人」に、41%の人が「職場のごく少数の人」に糖尿病であることを打ち明けている。このことは、上司や人事部といった職場の正式な枠組みを使って相談しづらい環境が存在していることを示す。

 調査結果のリリースにあたり、IDF会長のピーター・シュワルツ教授は、「差別的な扱いや、機会を失うことへの恐れから、病気のことを隠さなければならない人がいてはいけません。糖尿病とともに生きるには継続的な管理が必要であり、職場はその身体的・精神的負担を認識する必要があります。柔軟な勤務スケジュールや、血糖測定、インスリン投与など糖尿病を管理するためのプライベートな空間をつくるといった小さな配慮が、大きな違いを生み出すのです」と語っている。

 IDFは、11月に行われた世界糖尿病デーのキャンペーンで、世界中の雇用主に対し、糖尿病のある従業員をどのように支援しているかを見直し、健康について安心して話し合える支援的な職場環境を整えること、そして糖尿病のある人のニーズに対応する明確な方針を実施するよう強く呼びかけた。

 職場全体で糖尿病への理解を深め、治療や管理に配慮した柔軟な働き方や環境を整えることは、糖尿病のある人だけでなく、すべての従業員が働きやすい職場づくりにもつながる。IDFの呼びかけを機に、働く人の健康と尊厳を守る取り組みがさらに広がることが期待される。

■参考

[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

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