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2025年01月28日

座っている時間が糖尿病や肥満のリスクを上昇 わずか10分間の運動で血管が健康に 睡眠も改善

 座っている時間が長く、運動不足の生活が続くと、肥満や糖尿病などの慢性疾患のリスクが高くなるだけでなく、メンタルヘルスにも悪影響があらわれることが分かってきた。

 デスクワークなどが続くと、下腿の血流が減少しやすくなる。しかし10分間の休憩をとり、立ち上がって周りを歩くことを習慣にすると、血管の健康を改善できることが示された。

 仕事中に座ったまま過ごす時間の長い人は、そうでない人に比べて、不眠症などの睡眠の問題を抱えるリスクが高いことも明らかになった。

 世界20ヵ国を対象とした調査では、平日に座っている時間は、日本人の成人がもっとも長いという結果が出ている。

座位時間を50分減らすと血糖値やインスリン感受性が改善

 毎日の座ったままの時間を減らし、なるべく体を動かすようにすると、わずか3ヵ月で糖尿病や心臓病のリスクを減らすことを期待できると、フィンランドのトゥルク大学が発表している。

 毎日座ったままの時間を約1時間減らし、軽めの運動や身体活動を増やすことで、血糖管理やインスリン感受性、肝臓の健康状態が改善するという。

 「座っている時間を減らし、軽めの運動や身体活動の量を増やすだけで、健康上のベネフィットを得られるというのは心強い情報です。多くの人はそれくらいなら、毎日の生活で実行できるのではないでしょうか」と、同大学健康科学部のタル ガースウェイト氏は言う。

 研究グループは、座りがちの生活をしており運動不足になっており、2型糖尿病と心血管疾患のリスクの高い中高年64人を2つのグループに分けた。

 1つは介入グループで、1日1時間座っている時間を減らし、立ったまま過ごす時間を増やし、軽めの運動や身体活動も増やすよう指導された。もう1つの対照グループで、従来通りの座りがちな生活を続けた。

 その結果、介入グループは、運動や身体活動を増やしたことにより、座りがちな時間を平均して1日に50分短縮することに成功した。3ヵ月間で、血糖コントロールやインスリン感受性が改善し、肝臓の健康状態も改善した。対照グループでは変化がなかった。

 「座っている時間を減らすことに加えて、運動や身体活動の量や強度を増やすことで、より大きな利益を期待できます」と、ガースウェイト氏は指摘している。

関連情報

10分間でも立ち上がって体を動かすと血管の健康が改善

 オフィス内のコンピューター作業などによる長時間の座位行動が続いたときは、10分間でも体を動かす時間をつくることを習慣にすると、血管機能を改善でき、血管の健康を回復できることが、米ミズーリ大学による研究でも示されている。

 「テクノロジーの進歩により、座ったまま過ごす時間が増え、体を動かさないことが習慣になり、その結果、血管の健康に深刻な影響があらわれていることが懸念されます」と、同大学栄養・運動・生理学部のジャウメ パディラ氏は言う。

 研究グループは、11人の健康な男性を対象に、8時間の労働時間のうち6時間を連続して座ったまま作業をしてもらい、その前後の血管機能の変化を比べた。

 その結果、座ったまま行うデスクワークが6時間続いた後では、膝窩動脈(下腿の動脈)の血流が大幅に減少することが明らかになった。

 しかし10分間の休憩をとり、立ち上がってオフィスを1,000歩ほど歩くと、脚の血流は改善することも分かった。体を動かすことで、血管の内皮機能を示す血流依存性血管拡張反応(FMD)なども改善した。

 「長時間座った後に、10分間歩くだけで、血管の健康を回復できることが示されました。座る時間が減ると、代謝と心臓血管の健康状態が良くなることも分かっています」と、パディラ氏は言う。

 「時間を忘れて仕事に没頭し、体を動かさない状態が長時間続くことは、誰にでもあることですが、そうした時間が長引いたときには、立ち上がり体を動かすことを意識して行うことが大切です」とアドバイスしている。

座位時間が長いと良い睡眠をとれなくなる
働く人の80%は座ったまま仕事をしている

 仕事中に座ったまま過ごす時間の長い労働者は、そうでない労働者に比べて、不眠症などの睡眠の問題を抱えるリスクが高いことが、新しい別の研究で明らかになった。

 研究は、米サウスフロリダ大学によるもの。研究グループは、フルタイムで働いている労働者1,297人を対象に、約10年の間隔をおいた2つの時点で、睡眠の時間や規則性、入眠時間、不眠症の症状、昼寝、日中の疲労感などについて調査した。

 その結果、日中の仕事中に座位行動の多い人は、そうでない人に比べ、寝つきが悪い、眠りが浅く途中で目が覚める、日中に疲労感を感じやすいなどの睡眠の問題を抱える割合が37%高いことが明らかになった。

 「コンピューターでの作業が増えるなど、技術の進歩にともない、座ったまま体を動かさない状態で仕事をしている人が増えています」と、同大学心理学部のクレア スミス氏は言う。

 「企業などの従業員の多くは、8時間の勤務時間の大半を座って過ごしていると推定されます。職場での長時間におよぶ座位行動は、睡眠の健康に対しても深刻な影響をもたらします」としている。

 健康的な睡眠とは、単に一晩の睡眠時間を7~8時間とれていることだけではなく、入眠障害がないこと、中途や早朝の覚醒がないことなど、質の良い睡眠をとれていることが大切で、一貫した睡眠スケジュールを守ることも必要としている。

 調査では、日中の長時間の座位行動が影響し、睡眠不足のパターンにおちいっている労働者は、そうした不健康なパターンに何年もとらわれてしまう可能性があることも示された。たとえば不眠症のような深刻な睡眠の問題をかかえる人の90%は、10年後もそうした症状が続いていた。

 「質の良い睡眠を十分にとれていることは、生産性、幸福感、全体的な健康に好ましい影響を及ぼすことが分かっており、従業員と雇用者の両方にとって重要です」と、スミス氏は述べている。

Reducing sedentary time mitigates the risk of type 2 diabetes and cardiovascular diseases (トゥルク大学 2022年5月2日)
Effects of reduced sedentary time on cardiometabolic health in adults with metabolic syndrome: A three-month randomized controlled trial (Journal of Science and Medicine in Sport 2022年4月7日)
A walk around the office can reverse vascular dysfunction caused by hours at a computer (ミズーリ大学 2015年9月28日)
Your work habits may be threatening your sleep, USF-led study shows (サウスフロリダ大学 2025年1月7日)
Designing work for healthy sleep: A multidimensional, latent transition approach to employee sleep health (Journal of Occupational Health Psychology 2024年12月)
Impact of prolonged sitting on lower and upper limb micro- and macrovascular dilator function (Experimental Physiology 2015年4月30日)
座位行動 (厚生労働省)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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