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2024年12月02日

糖尿病の人が運動に取り組むと老化を遅らせられる わずか5分のウォーキングでも血圧が低下

 糖尿病の人がウォーキングなどの運動を習慣として行うと、体の生物学的な老化を遅らせられることが、新しい研究で示された。

 体を活発に動かすことで、血圧も下げられることも明らかになった。

 近所を歩いてみたり、上り坂を歩いたり、階段を上ったりするなど、5分くらいの短い時間の身体活動であっても、日常生活で積み上げていくことで効果を期待できる。

 「毎日忙しく過ごしていて、週末しか運動する時間をとれないという人でも、あきらめないで運動に取り組むことで効果を期待できます」と、研究者はアドバイスしている。

糖尿病のある人は生物学的な老化が進みやすい

 糖尿病の人が運動を習慣として行うと、体の生物学的な老化を遅らせられることが明らかになった。

 研究は、中国の北京体育大学運動生理学部のドンジェ ウー氏らによるもの。研究成果は、科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

 糖尿病は、心血管疾患や脳卒中、腎臓病などの深刻な合併症を引き起こすだけでなく、生物学的な老化を加速させる要因にもなる。

 糖尿病の人が良好な血糖管理を維持できないでいると、老化が進み、膵臓の機能、筋肉量・筋力なども急速に低下することが知られている。

 さらに、細胞の寿命に関与しているテロメアの短縮、細胞のエネルギー生産工場であるミトコンドリアの機能不全、炎症の増加など、さまざまな分子メカニズムを通じて、細胞の損傷が進行しやすくなる。

ウォーキングなどの運動を行うと老化を遅らせられる

 糖尿病とともに生きる人は、ウォーキングなどの運動を習慣として行うと、老化を大幅に遅らせられることが、新しい研究で明らかになった。

 運動習慣は、2型糖尿病のある人の老化を大幅に遅らせ、男性の場合は、運動時間が週に600分(1日に100分)を超えると効果は最大になることが示された。

 「運動を習慣として行うと、生物学的老化を効果的に減らせられることが分かりました」と、ウー氏は言う。

 「毎日忙しく過ごしていて、週末しか運動する時間をとれないという人でも、あきらめないで運動に取り組むことで効果を期待できます」としている。

運動をしている糖尿病の人は老化が遅いことを確認

 研究グループは今回、米国疾病予防管理センター(CDC)が1999~2018年に実施した国民健康栄養調査(NHANES)に参加した、2型糖尿病のある4,134人を含む成人のデータを解析した。

 その結果、2型糖尿病があり、余暇時間に運動を習慣として行っている人は、生物学的な老化が遅いことが分かった。

 逆に、運動をしておらず、運動不足になっている人は、生物学的老化の評価指標であるPhenoAgeの値が高く、生理年齢が実年齢よりも老けていることが示された。

 運動や身体活動は、酸化ストレスの軽減やテロメアの長さの維持など、細胞プロセスに有益な効果をもたらすと考えられている。

 体を活発に動かしている人は、テロメアを伸長させ細胞の寿命を延ばす酵素であるテロメラーゼが活性化することなどが分かっている。

運動や血圧を下げるのにも役立つ
わずか5分の運動でも効果が

 オーストラリアのシドニー大学による別の新しい研究では、体を活発に動かすことで、血圧も下げられることも明らかになった。研究成果は、「Circulation」に掲載された。

 近所を歩いてみたり、上り坂を歩いたり、階段を上ったりするなど、5分くらいの短い時間の身体活動であっても、そうした時間を日常生活で積み上げていくことで、血圧を下げられることが示された。

 「1日に座ったまま過ごす時間が長い人は、上り坂のウォーキング、階段の昇降、ランニング、サイクリングなど、活発な運動を1日に20~27分行うようにすると、血圧を下げられることが分かりました」と、同大学で運動や身体活動について研究しているエマニュエル スタマタキス教授は言う。

 研究グループは、5ヵ国の1万4,761人の成人を対象とした研究のデータを解析した。参加者に、ウェアラブルの測定器を装着してもらい、1日を通して身体活動量と血圧を測定した。

 日常の活動を[睡眠・座位行動・ゆっくりとした歩行・活発な歩行・立位・ランニング、サイクリング、階段の昇降]などのカテゴリーに分けて、血圧との関連を調査した。

 その結果、座ったまま過ごす時間を1日に20~27分減らして、運動や身体活動に置き換えると、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが最大で28%減少することが示された。

 「運動をあまりしていない人にとって、ウォーキングなどの運動は血圧に良い効果をもたらします。さらに血圧を下げる効果を求めるのなら、早足で歩くようにするなど、より負荷をかけた運動を行うと、効果はさらに高いことも分かりました」と、スタマタキス教授は言う。

 「高血圧は世界的にもっとも大きな健康問題になっており、心血管疾患、心不全、脳卒中、腎臓病などのリスクを高め、世界中で早期死亡の最大の原因となっています」。

 「多くの人は血圧を下げる薬を飲んでいますが、毎日の生活でなるべく体を動かすようにし、運動や身体活動を取り入れることが、血圧を下げるのにも役立つことを知っていただきたいと思います」としている。

Dose response of leisure time physical activity and biological aging in type 2 diabetes: a cross sectional study (Scientific Reports 2024年11月1日)
Five minutes of exercise a day could lower blood pressure (シドニー大学 2024年11月7日)
Device-Measured 24-Hour Movement Behaviors and Blood Pressure: A 6-Part Compositional Individual Participant Data Analysis in the ProPASS Consortium (Circulation 2024年11月6日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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