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2024年12月03日
糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬が腎臓病のリスクを大幅に低下 認知症も減少

2型糖尿病などの治療に使われているGLP-1受容体作動薬が、腎臓病のリスクを大幅に減らすことが、大規模な研究で明らかになった。
7種類のGLP-1受容体作動薬を比べたところ、薬剤に関わらず共通して効果があることも分かった。
GLP-1受容体作動薬が、アルツハイマー病のリスクを減少するという調査結果も発表されている。
やはり医師から処方された薬を、指示通りにきちんと用いることが大切だ。
GLP-1受容体作動薬はどのような薬か?
GLP-1受容体作動薬は、主に血糖血を下げるインスリンが体から出やすくする作用のある注射薬(飲み薬タイプもある)。 「GLP-1」は、食事が刺激になり、消化管から分泌されるインクレチンというホルモンのひとつ。 GLP-1は、体のなかにある受容体に作用し、▼膵臓からインスリンの分泌を促す、▼血糖値を上昇させるグルカゴンというホルモンを抑え、血糖値が上がりにくくする、▼胃や消化管の動きを遅くし、ゆっくりと消化させる、▼脳に働きかけて食欲を抑えるといった作用もする。 GLP-1は、体のなかでDPP-4という酵素によって分解され、その作用はすぐに消えてしまうが、GLP-1受容体作動薬はDPP-4により分解されにくく、受容体に作用しインスリン分泌を促し、血糖値を下げる。 また、血糖値が高いときだけに作用するので、単独で使用した場合は低血糖が生じる心配は少ないとされている。GLP-1受容体作動薬が腎臓や心臓を保護
GLP-1受容体作動薬が、腎臓や、心臓と血管の循環器系に、好ましい作用をすることが、世界中の多くの研究で報告されているが、GLP-1受容体作動薬がもたらす利益は「クラスエフェクト」であることが、オーストラリアのシドニー大学などによる新しい研究で明らかになった。 クラスエフェクトは、いくつかある同じタイプの薬剤間で共通する作用があるというもの。GLP-1受容体作動薬は多くの種類があり、糖尿病や肥満症の治療に使われている。 研究グループは、2型糖尿病患者6万7,769人を含む計8万5,373人を対象とした、GLP-1受容体作動薬の大規模臨床試験11件のメタ解析を実施した。 7種類のGLP-1受容体作動薬を比べたところ、薬剤に関わらず共通して効果があることが分かった。 GLP-1受容体作動薬を使った治療は、プラセボに比べて、腎不全のリスクの16%減少、腎臓の機能の悪化(腎臓が濾過する血液の量を示す推定糸球体濾過率の低下)の22%減少、これらの腎臓病による死亡のリスクの19%減少と関連していた。 関連情報腎臓病は深刻な問題 腎臓を守るためにできること
「腎臓病のリスクを高める2型糖尿病や、過体重や肥満のある人にとって、腎臓と心臓を守るための治療は、重要な役割を果たすと考えられます」と、同大学ジョージ国際保健研究所のスニル バドベ教授は述べている。 「とくに慢性腎臓病(CKD)は進行性の病気で、適切な治療を行わないでいると、最終的には透析や腎臓移植が必要となる腎不全に進展し、心臓病による死亡のリスクも上昇します。慢性腎臓病は、患者さんの生活の質に大きく低下させるだけでなく、多額の医療費が必要になり国の医療財政にとっても深刻です」としている。 CKDは、世界中で10人に1人に相当する8億5,000万人が発症しており、健康上の大きな負担となっている。CKDは、世界の死亡原因の第10位であり、2050年までに第5位にまで上昇するとみられている。CKDの危険因子は糖尿病、心血管疾患、肥満などだが、いずれも改善が可能だ。 なお、GLP-1受容体作動薬は、悪心・嘔吐などの消化器症状や体重減少をもたらすこともある。使用中の薬について詳しくは、かかりつけの医師や、薬剤師などの医療スタッフに確認することを勧めている。 日本では、薬について詳しい情報を知りたい人のために、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が、「患者向医薬品ガイド」をネットで公開している。GLP-1受容体作動薬がアルツハイマー病のリスクも減少
GLP-1受容体作動薬による治療を受けている2型糖尿病の人は、もっとも一般的にみられる認知症であるアルツハイマー病のリスクも大幅に低いことが、100万人以上の2型糖尿病患者を3年間した別の研究で明らかになった。
研究は、米国のケース ウェスタン リザーブ大学が発表したもの。アルツハイマー病を発症するリスクは、GLP-1受容体作動薬を使用している人は、インスリンを使用している人に比べて67%低いことなどが示された。
アルツハイマー病は、記憶力や思考力が徐々に壊されていく脳障害。米国アルツハイマー病協会によると、米国の700万人の高齢者がこの病気を発症しており、その死亡者数は、乳がんと前立腺がんによる死亡者数を合わせた数よりも多いとしている。
「GLP-1受容体作動薬による治療を受けている2型糖尿病の患者は、他の糖尿病治療薬に比べても、アルツハイマー病のリスクが低いことが示されました」と、同大学バイオメディカル情報科学部のロン シュー教授は言う。
これまでの研究でも、GLP-1受容体作動薬に、神経変性や神経炎症を防ぐ効果もある可能性が指摘されている。
「ただし今回の研究は、GLP-1受容体作動薬がアルツハイマー病を予防する可能性を示すものであり、因果関係を確かめるためには、今後、ランダム化比較臨床試験を実施する必要があります」と、シュー教授は指摘している。
Effects of GLP-1 receptor agonists on kidney and cardiovascular disease outcomes: a meta-analysis of randomised controlled trials (Lancet Diabetes & Endocrinology 2024年11月25日)
Popular diabetes and weight-loss drug may reduce risk of Alzheimer's disease (ケース ウェスタン リザーブ大学 2024年10月24日)
Childhood type 2 risk and beta cell therapy in type 1: Research highlights November 2024 (英国糖尿病学会 2024年11月28日)
Associations of semaglutide with first-time diagnosis of Alzheimer's disease in patients with type 2 diabetes: Target trial emulation using nationwide real-world data in the US (Alzheimer s & Dementia 2024年10月24日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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