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2025年04月22日

【自転車生活で健康に】サイクリングが糖尿病リスクを減少 高齢者にもメリットが

 自転車の利用は、糖尿病ともに生きる人の健康を改善し、心血管疾患などの合併症のリスクを減らすためにも役立つことが明らかになっている。

 高齢者が自転車を利用すると、健康寿命や寿命の延伸につながることが、日本人を対象とした長期的な追跡調査でも明らかになった。

 「車を使わず、自転車や徒歩による移動を促進することで、糖尿病や肥満のリスクのある人の健康増進を促進できると考えられます」と、研究者は指摘している。

自転車が糖尿病のある人の健康を改善

 自転車の利用は、糖尿病ともに生きる人の健康を改善し、心血管疾患などの合併症のリスクを減らすためにも役立つことが、デンマークのコペンハーゲン大学などの研究で明らかになっている。

 自転車を利用している糖尿病の人は、他に運動や身体活動を行っているかに関係なく、全死亡リスクおよび心血管疾患による死亡リスクが低下することが示された。

 研究は、同大学身体活動研究センターのマティアス リード ラーセン氏らによるもの。研究成果は、「JAMA Internal Medicine」に発表された。

 「糖尿病のある人は、そうでない人に比べ、あらゆる原因による早期死亡や心血管疾患(CVD)のリスクが高いことが知られています。しかし、運動を習慣として行うと、それらのリスクを減らすことができます」と、ラーセン氏は言う。

糖尿病のある人が自転車に乗ると健康リスクが減少

 研究グループは、欧州の8ヵ国で実施されたコホート研究である「欧州がん・栄養前向き調査(EPIC)」に参加した、糖尿病のある平均年齢55.9歳の7,459人の成人を対象に調査を行った。

 その結果、糖尿病のある人は、自転車にまったく利用しないという人に比べて、死亡リスクが週にサイクリングを1~59分行っている人で22%、60~149分の人では24%、150~299分の人では32%、300分以上の人では34%、それぞれ減少した。

 「車を使わず、自転車や徒歩による移動を促進することで、糖尿病や肥満のリスクのある人の健康増進を促進できると考えられます」と、ラーセン氏は指摘している。

自転車で通勤している人は炎症レベルが低下

 自転車や徒歩で通勤している人は、2型糖尿病などのリスクと関連のある、全身の慢性炎症が軽減されていることが、東フィンランド大学による別の研究でも明らかになっている。

 フィンランドで実施されているコホート研究である「FINRISK研究」に参加した平均年齢44歳の男女6,208人を調査した結果、自転車や徒歩によるアクティブ通勤により、C反応性タンパク質(CRP)と呼ばれる炎症マーカーの値が低下することが示された。

 自転車や徒歩による通勤を、毎日15~29分以上行っている人は、高感度CRPの値が低下しはじめ、45分以上行っている人では16.8%も低下した。

 体に起こる炎症は、組織のダメージを治癒したり、感染症を抑止するための反応として、正常なもだが、何らかの原因で全身性の異常な炎症が続いている場合は、2型糖尿病、心臓病、がんなどのさまざまな疾患のリスクが上昇することが知られている。

自転車利用は高齢者の健康寿命や寿命の延伸にもつながる

 高齢者が自転車を利用すると、健康寿命や寿命の延伸につながることは、日本人を対象とした長期的な追跡調査でも明らかになった。

 研究は、筑波大学体育系の角田憲治准教授らによるもの。研究成果は、「Transportation Research Part F: Traffic Psychology and Behaviour」に掲載された。

 「先行研究でも、自転車の利用者は社会交流や身体活動量が多いことが分かっています。日本では欧米に比べて、多くの高齢者が移動手段として自転車を利用しています。自転車は、徒歩よりも長距離の移動が容易であり、高齢者が痛みを抱えやすい膝関節への負担が軽いという利点もあります」と、研究者は述べている。

 「今回の研究により、高齢者での自転車利用は、要介護化および死亡リスクにつながり、健康寿命および寿命の延伸に貢献し、この効果はとくに車を運転しない人で大きいことが示唆されました。高齢者にとって自転車は"生活の足"として機能し、心身の健康維持・増進に貢献していると考えられます」。

 「運転免許返納による高齢者の移動手段の確保が課題となっている日本で、高齢者の自転車利用を促進するような社会的支援が望まれます」としている。

自転車利用を4年間続けた人は要介護・死亡リスクが低下

 研究グループは今回、茨城県笠間市の平均年齢74.2歳の高齢者6,385人を対象に、10年間にわたり追跡して調査し、要介護化(要支援1以上)と死亡の状況について調査した。

 その結果、短時間でも自転車を利用していた高齢者は、非利用者に比べて、その後10年間の要介護化および死亡リスクが低いことが分かった。自転車利用によるリスク低下は、とくに車を運転しない人で強まることも示された。

 次に、生存者でかつ介護認定歴や転出歴がない高齢者3,558人を対象に再度調査を行い、週1日以上の自転車利用から「非利用、利用開始、中断、継続」の4グループに分け、6年間にわたり追跡し、要介護化と死亡の状況について調査した。

 その結果、自転車利用を4年間継続していた人は、非利用者に比べて、その後6年間の要介護および死亡のリスクが低いことが分かった。車を運転しない人に限った分析では、自転車利用の継続者に加え、開始者も要介護化リスクが低いことも示された。

自転車を利用していた高齢者は10年間の要介護化および死亡リスクが低いことが判明
調査開始時の自転車利用量と要介護化リスク(左図)および死亡リスク(右図)

車を運転しない人では、自転車の利用を継続した高齢者に加え、利用を開始した高齢者も要介護化リスクが低いことが判明
車の非運転者における自転車利用の変化と要介護化リスク(左図)および死亡リスク(右図)
出典:筑波大学、2025年

Study shows that cycling is associated with reduced risk of both all-cause and cardiovascular mortality among people with diabetes (Diabetologia 2020年9月23日)
Association of Cycling With All-Cause and Cardiovascular Disease Mortality Among Persons With Diabetes (JAMA Internal Medicine 2021年7月19日)
Daily active commuting may lower inflammation levels (東フィンランド大学 2024年1月16日)
Association between active commuting and low-grade inflammation: a population-based cross-sectional study (European Journal of Public Health 2023年12月8日)

筑波大学体育系
Changes in cycling and incidences of functional disability and mortality among older Japanese adults (Transportation Research Part F: Traffic Psychology and Behaviour 2025年5月)

サイクル健康 GOOD CYCLE JAPAN (国土交通省)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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