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2024年11月25日

寒い冬は高血圧のリスクが上昇 糖尿病の人は高血圧にもご注意 【血圧を下げる3つの方法】

 糖尿病とともに生きる人は、高血圧にも注意が必要だ。糖尿病のある人は、糖尿病のない人に比べて、高血圧を発症する頻度が2倍高いことが知られている。

 寒い冬を迎えて、多くの人は血圧が高くなりやすくなっている。血圧を下げて高血圧に対策する3つの効果的な方法を、最新の研究からご紹介する。

寒い冬には高血圧にとくにご注意

 血圧は常に一定ではなく、寒暖差にともなう「季節変動」がある。春から夏の気温が上昇する季節には血圧は下がり、冬になり気温が低下する季節になると血圧は上昇しやすいことが知られている。

 寒い冬を迎えて、多くの人は血圧が高くなりやすくなっている。冬場の血圧上昇には、寒さによる血管の収縮や、血圧を上げることによって体温を維持しようとする体の働きに加え、運動量が減少したり、塩分の多い食事が増えたりすることも影響する。

 高血圧は、世界中で早期死亡の最大の原因になっている。世界で12億8,000万人の成人が高血圧を発症しており、脳卒中・心臓発作・心不全・腎臓病など、多くの健康障害を引き起こしている。高血圧は、症状がほとんどないことから「サイレントキラー」とも呼ばれている。

糖尿病の人は高血圧にとくに注意が必要

 糖尿病とともに生きる人は、高血圧にも注意が必要だ。糖尿病のある人は、糖尿病のない人に比べて、高血圧を発症する頻度が2倍高いことが知られている。

 糖尿病も高血圧症も動脈硬化を進める。米ジョンズ ホプキンズ大学病院によると、糖尿病のある人は血糖管理が良好でないと、糖尿病のない人に比べて、心臓病や脳卒中などの発症リスクが高く、とくに糖尿病に高血圧が加わると、リスクは4倍以上に上昇するとみられている。

 糖尿病と高血圧を適切に管理していれば、合併症のリスクは低くなるが、糖尿病の成人の3分の2は血圧が高く、130/80mmHgを超えているか、高血圧の治療薬を服用している。

 血圧を下げて高血圧に対策する3つの効果的な方法を、最新の研究からご紹介する。

高血圧を改善する方法 1
野菜・大豆・果物などのアルカリ食品を食べる

 野菜・大豆・果物などのアルカリ食品を十分に食べ、肉類などの酸性食品を食べすぎないようにすると、血液が酸性に傾いた状態になるのを防げて、血圧を下げやすくなる。

 さらには、腎臓病の予防につながり、心血管代謝にも好ましい影響があらわれるという新しい研究が発表された。

 「動物性食品が多い、酸を生成しやすい食事を続けていると、腎臓は血液から酸を取り除く働きをし、そのため障害が起きやすくなると考えられます」と、米テキサス大学内科学のドナルド ウェッソン教授は言う。

 「今回の研究で、野菜や果物などを十分に食べて、食事の酸塩基バランスを改善することは、腎臓や心臓の健康にも良いことが示されました」としている。

 研究グループは、高血圧があり、尿中アルブミン排泄量が多く慢性腎臓病のリスクの高い153人の成人を3つのグループに分け、5年間のランダム化比較試験を実施した。

 その結果、野菜や果物などを毎日食べているグループのみ、腎臓の健康が改善し、血圧は低下し、心血管疾患のリスクは減少した。

 「高血圧の治療では多くの場合、降圧薬を使った薬物療法からはじめられ、それでも血圧を適切に管理できない場合は食事療法が加えられることが多いのですが、まず食事の改善を行った方が効果は高い可能性があります」と、ウェッソン教授は指摘している。

 肉類は、大切なタンパク質の供給源になるが、肉を食べすぎて、野菜をあまり食べないでいると、食事が酸性に傾きやすい。

 そうなると体重が増え、血糖を下げるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性が高まり、糖尿病・高血圧・脂質異常症といった疾患のリスクも上昇し、動脈硬化が進みやすくなるとみられている。

 日本人約9万人を対象とした大規模な調査でも、食事の酸性度スコアが高いほど、循環器疾患や死亡のリスクが上昇することが確かめられている。やはり食事では、バランス良く食べることが大切だ。

高血圧を改善する方法 2
睡眠を十分にとると高血圧リスクは大幅に軽減

 米テキサス大学による別の新しい研究では、ガイドラインで推奨されている睡眠時間を満たしている人は、高血圧リスクが大幅に低いことが明らかになった。

 研究グループは、米国の21の都市の10代前半から成人初期の若年者3,320人を対象とした大規模調査のデータを解析した。

 その結果、健康的な睡眠パターンを維持することで、若年者が高血圧を発症するリスクは37%低下することが示された。

 「十分な睡眠をとれていないと、コルチゾールなどのストレスホルモンのレベルが上昇し、体のストレス反応に変化が起こり、血圧が上昇するおそれがあります」と、同大学公衆衛生学部のアウグスト セザール フェレイラ デ モラエス氏は言う。

 これまでの調査でも、不十分な睡眠や質の悪い睡眠は、成人の肥満や2型糖尿病、高血圧などの健康リスクと関連することが報告されている。

 「睡眠を改善するために、就寝前にスマホやパソコンなどの明るいスクリーンをなるべく見ないようにする、静かで落ち着ける睡眠環境をつくるなどして、対策することをお勧めします」としている。

高血圧を改善する方法 3
1日にわずか5分間の運動でも血圧を下げられる

 上り坂を歩いたり、階段を上がり下りするなど、毎日の生活に短い時間に行う活発な運動や身体活動をとりいれると、血圧を下げるのに役立つことが、オーストラリアのシドニー大学などの新しい研究で明らかになった。

 「わずか5分間の運動であっても、とくに1日に座ったまま過ごす時間が長い人では、血圧を下げるのに効果的です」と、同大学公衆衛生学部のエマニュエル スタマタキス教授は言う。

 研究グループは、6件のコホート研究に参加した、5ヵ国の平均年齢54歳の成人1万4,761人のデータを解析し、1日を通して[座位行動・起立・ゆっくり歩き・速歩き・複合運動・睡眠]の6種類の行動と血圧値との関連を調べた。

 その結果、運動を行う時間を5分増やしただけでも、収縮期(最高)血圧は0.68mmHg低下し、拡張期(最低)血圧は0.54mmHg低下することが示された。

 「ほとんどの人にとって、血圧を下げる鍵となるのは、速めのウォーキングなど、強度を少し高めた活発な運動であることが分かりました」と、英ロンドン大学スポーツ・運動・健康研究所のジョー ブロジェット氏は言う。

 「座ったままの時間を、上り坂のウォーキング、階段の昇降、ランニング、サイクリングなどの1日に20~27分の活発な運動に置き換えると、臨床的に意味のある血圧低下につながり、心血管疾患のリスクを最大で28%減らせることが示されました」としている。

 良いニュースは、運動を行うと、身体能力に関わらず、血圧に良い影響があらわれるまでに時間はそれほどかからないことだとしている。電車やバスに間に合うように小走りしたり、ちょっとした用事を自動車ではなく徒歩で済ませるなど、活発な運動や身体活動を日常生活に組み込むことが大切だ。

 「運動をあまりしない人にとっても、ウォーキングは血圧に良い効果をもたらします。しかし、高血圧をさらに改善したいのであれば、心臓血管系にかかる負荷を増やした活発な運動を習慣として行うことをお勧めします」と、スタマタキス教授は指摘している。

Diabetes and High Blood Pressure (ジョンズ ホプキンズ大学病院 2024年)
Eating More Fruits & Vegetables to Reduce Dietary Acid Lowers Blood Pressure and Improves Kidney and Heart Health in Patients with Hypertension (Elsevier.2024年8月6日)
Kidney and Cardiovascular Protection Using Dietary Acid Reduction in Primary Hypertension: A Five-Year, Interventional, Randomized, Control Trial (American Journal of Medicine 2024年11月)
Dietary acid load and mortality among Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based Prospective Study (American Journal of Clinical Nutrition 2017年7月)
Adequate sleep significantly reduces the risk of hypertension in adolescents, according to new study by UTHealth Houston researchers (テキサス大学医療サイエンスセンター 2024年11月11日)
Impact of Environmental Noise and Sleep Health on Pediatric Hypertension Incidence: ABCD Study (Journal of the American Heart Association 2024年11月11日)
Five minutes of exercise a day could lower blood pressure (シドニー大学 2024年11月7日)
Device-Measured 24-Hour Movement Behaviors and Blood Pressure: A 6-Part Compositional Individual Participant Data Analysis in the ProPASS Consortium (Circulation 2024年11月6日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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