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2024年11月26日

ビールを飲む人は食事が不健康? 糖尿病の人にアルコールは良い? ビールを少し飲みすぎただけで高血圧や肝臓病のリスクは上昇

 ビールを1日に1杯飲みすぎただけでも、血圧は上昇することが、2万人の成人を対象に実施した研究で示されている。

 ビールのみを飲むという人は、ワインを飲む人に比べて、食事が不健康になりやすいことが示された。

 「アルコールを飲む習慣のある人は、野菜・精製穀物・大豆・果物などの植物性食品、健康的なタンパク質や脂肪が含まれる魚なども食べ、栄養バランスの良い食事をとることが大切です」と、研究者は指摘している。

ビールを1杯飲みすぎただけでも血圧は上昇

 ビールを1日に1杯飲みすぎただけでも、血圧は上昇することが、米国のテュレーン大学が約2万人の成人を対象に実施した研究で示されている。

 研究グループは、米国・韓国・日本で約2万人の成人を対象に、アルコール摂取量と血圧の関連を4~12年追跡して調べた7件の研究を解析した。参加者のいずれも、それまで高血圧・心血管疾患・アルコール依存症と診断されたことはなかった。

 その結果、純アルコールに換算して1日に12g飲んでいる人は、収縮期(最高)血圧が1.25mmHg高くなることが示された。このアルコール量は、およそ缶ビール(350mL)1本に相当する。

 さらに、純アルコールに換算して1日に48gを飲んでいる人は、収縮期血圧は4.9mmHg高くなった。これは、およそ缶ビールのロング缶(500mL)2.5本に相当する。

アルコールを飲み続けると血圧が高くなりやすい

 アルコールを飲む習慣と血圧の上昇との関連は、アルコール飲料の種類を問わず、男性と女性の両方、米国人でも日本人でも確認された。

 「毎日のアルコール摂取量が比較的少ない人であっても、飲み続けると血圧が高くなりやすいことが分かりました。アルコールを飲む量が増えると、血圧への悪影響はさらに大きくなります」、同大学公衆衛生大学院のショー チュワン氏は言う。

 「高血圧は心血管疾患のリスクを高めるので、アルコールを飲みすぎる習慣のある人は注意が必要です。血圧はまだ高くないが上昇傾向にあるという人も、アルコールの摂取量を減らすか、まったく飲まないのが、もっとも健康的ということになります」としている。

ビールのみを飲む人は食事が不健康になりやすい?

 アルコールを飲むのを楽しみにしている人にとって、どのアルコール飲料を選ぶかは、考えている以上に健康全般に影響を与える可能性がある。

 テュレーン大学の発表した別の新しい調査では、ビールのみを飲むという人は、ワインを飲む人に比べて、食生活が不健康になりやすいことが示された。この研究は、米国肝臓病学会の年次学術集会で発表された。

 研究グループは、飲酒の習慣のある米国の1,900人以上の成人を対象に調査した。参加者のさまざまな種類のアルコール飲料の摂取量と、健康的な食事指数(HEI)のスコアの関連を調べた。

 ビールのみを飲む人は39%、ワインのみの人は22%、リキュールのみの人は18%、いくつかの種類のアルコールを組み合わせて飲む人は21%だった。

 解析した結果、ビールのみを飲んでいる人は、ワインなどの他のアルコール飲料を飲んでいる人に比べて、食事スコアが3.12ポイント低く、食生活が不健康である傾向が示された。

 ビールを飲んでいる人は、若年の男性に多く、1日の総カロリー摂取量が多く、運動不足である傾向があることも分かった。

ワインを好んで飲む人の食事は健康的

 米国では、ビールが好んで飲まれる食事は、糖質の多い食品や脂肪の多い加工肉が多く、高カロリーで、食物繊維が少ない傾向があるという。

 その一方でワインは、とくに赤ワインが好まれる食事は、野菜や果物、脂肪の少ない肉、乳製品などを組み合わせた、より健康的なスタイルであることが多い。

 「アルコールの飲みすぎは、代謝機能障害に関連する脂肪肝疾患(MASLD)の原因になり、肝硬変のリスクを高めます」と、同大学医学部内科のマデリン ノヴァック氏は言う。

 「アルコールを飲む習慣のある人は、野菜・精製穀物・大豆・果物などの植物性食品、健康的なタンパク質や脂肪が含まれる魚なども食べ、栄養バランスの良い食事をとることが大切です」としている。

糖尿病のある人にアルコールは良い?

 糖尿病のある人にとって、適量のアルコールは動脈硬化などに良いとも言われているが、飲みすぎると、血糖のバランスを崩してしまうので注意が必要になる。

 アルコールはアルコールそのものの作用やアルコールの代謝により、血糖値に影響を与える。飲みすぎは糖尿病リスクを高め、肝臓にも負担がかかるので注意が必要となる。

 米国糖尿病学会(ADA)は、糖尿病の人のアルコール摂取について、「適度な飲酒により、血糖値の管理とインスリン感受性が改善するという報告もありますが、飲みすぎは、血糖値とHbA1c値の上昇につながります」「飲酒には健康上の利点はあるものの、注意すべき点もいくつかあります。もっとも懸念されるのは低血糖症です」と、注意を呼びかけている。

 食事をとらずに飲酒するのは避けるべきで、良質のタンパク質が多く含まれる魚や肉、大豆製品、ミネラルや食物繊維を多く含む野菜、とくに緑黄色野菜、海藻、キノコなどを食べることが勧められている。

Alcohol and Diabetes (米国糖尿病学会)

One beer a day is enough to increase blood pressure, new study finds (テュレーン大学 2023年8月1日)
Alcohol Intake and Blood Pressure Levels: A Dose-Response Meta-Analysis of Nonexperimental Cohort Studies (Hypertension 2023年7月31日)
Beer-only drinkers' diets are worse than wine drinkers (米国肝臓病学会 2024年11月13日)
Convergence of Alcohol Consumption and Dietary Quality in US Adults Who Currently Drink Alcohol: An Analysis of Two Core Risk Factors of Liver Disease (Nutrients 2024年11月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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