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2025年01月16日

少し食べすぎただけで糖尿病? ストレスが糖尿病や肥満の原因に ウォーキングなどの運動でストレスを解消

 ストレスがたまっている人が、少し太っただけでも糖尿病のリスクが上昇するのは、ストレスホルモンの作用が影響しているからかもしれない。

 肥満が交感神経系を刺激し、ストレスホルモンの放出を増やし、インスリン抵抗性を引き起こすメカニズムを解明したと発表された。

 ストレスに関連するうつなどのメンタルヘルス不調を経験している人は、ウォーキングなどの運動に取り組むことで、大きな恩恵を受けられることも分かった。

ストレスホルモンが糖尿病や肥満を引き起こす仕組みを解明

 肥満が交感神経系を刺激し、情報伝達に関わるストレスホルモンの放出を増やし、「インスリン抵抗性」を引き起こすメカニズムを解明したと、米国のラトガース大学が発表した。

 交感神経は、自律神経の一種で、体の活動性を高める役割をになっている。ストレスがあったり興奮した状態のときに活発化する。

 インスリンの作用が十分に発揮されなくなっている状態がインスリン抵抗性。運動不足や食べすぎ、肥満などが影響し、糖を体に効率良くとりこめなくなり、血糖値が上昇する。

 インスリンは、血糖の調節や脂質代謝などをになう重要なホルモンで、インスリンをうけとる細胞では、「インスリン受容体シグナル伝達」と呼ばれる仕組みが働き、通常は血糖値が一定の範囲に保たれている。

ストレス対処ができていれば糖尿病リスクを減らせる

 過食や肥満などがあると、体の交感神経系が刺激され、細胞のインスリンシグナル伝達は機能していても、ストレスホルモンであるノルエピネフリンとエピネフリンが増える。

 その結果、インスリンの作用が打ち消されてしまい、血糖値が上昇しやすくなるという。

 「肥満のある人は、2型糖尿病を発症しやすい人と発症しない人に分かれることが知られていますが、肥満があってもストレスへの対処が上手にできている人では、糖尿病のリスクは上昇しない可能性があります」と、同大学内分泌・代謝・栄養学部のクリストフ ビュートナー氏は言う。

 「経済的なストレス、夫婦間のストレス、アルコールの飲みすぎから生じるストレス、安全でない地域に住んでいたり不当な差別を受けることなどによるものなど、ストレスには多くのものがあります。そうしたストレスが、肥満による代謝ストレスに相乗すると、糖尿病のリスクは高まります」としている。

食べすぎが少し続いただけで体重が増えるのはストレスホルモンのせい?

 研究グループは、健康なマウスであっても、過食が数日続くと、交感神経系が刺激され、ストレスホルモンが増加することを実験で確かめた。

 ストレスホルモンの影響を受けない遺伝子改変マウスを作製し、高脂肪・高糖質の食餌を与えたところ、肥満にはなったが、糖尿病などの代謝性疾患を発症しなかった。

 「ストレスと肥満が2型糖尿病を引き起こすメカニズムには、ストレスホルモンの作用が共通して関わっていると考えられます」と、ビュートナー氏は述べている。

 「多くの人が連休中に、食べすぎや飲みすぎが短期間続いただけで、体重が2~4kg増えてしまったという経験をもっています。ストレスを効果的に解消したり、ストレスホルモンの活動を阻害する治療法を開発することで、糖尿病や肥満のリスクを減少できる可能性があります」としている。

ウォーキングなどの運動をする習慣がストレス対策に
ストレス関連の脳活動を減らし健康リスクを低下

 それでは、ストレスに対策するために、どのような方法に効果があるだろうか?

 ウォーキングなどの運動は、脳内のストレスに関連するシグナル伝達を減らし、心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患のリスクも低下させることが明らかになった。

 とくに、ストレスに関連するうつなどのメンタルヘルス不調を経験している人は、運動に取り組むことで大きな恩恵を受けられる可能性があるという。

 これは、米マサチューセッツ総合病院(MGH)が、5万359人を10年間にわたり追跡して調査した研究で明らかになったもの。774人の参加者は、脳画像検査とストレス関連の脳活動の測定も受けた。

 その結果、参加者の13%が心血管疾患を発症したが、ガイドラインで推奨されている身体活動レベルを満たしている人は、心血管疾患のリスクが23%低いことが明らかになった。

 「運動を習慣として行っている人は、ストレスに関連する脳の活動が低い傾向があることも分かりました。これにより、実行機能(意思決定を行ったり、衝動を制御する能力)が高まり、ストレス中枢を調整することが知られている脳の前頭前野の機能の向上も期待できます」と、同病院心臓血管画像研究センターのアハメド タワコル氏は言う。

 「運動がストレス軽減に役立つメカニズムを解明するために、さらに前向き研究が必要となりますが、運動に取り組むことは、とくにストレスに関連する障害を経験している人にとって大きな利益をもたらすことを、多くの人に知ってもらう必要があります」としている。

Researchers Suggest Stress Hormones Explain How Obesity Causes Diabetes (ラトガース大学 2024年11月12日)
Overnutrition causes insulin resistance and metabolic disorder through increased sympathetic nervous system activity (Cell Metabolism 2025年1月7日)
Physical Activity Reduces Stress-Related Brain Activity to Lower Cardiovascular Disease Risk (マサチューセッツ総合病院 2024年4月16日)
Effect of Stress-Related Neural Pathways on the Cardiovascular Benefit of Physical Activity (Journal of the American College of Cardiology 2024年4月23日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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