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2025年04月04日
朝に自然光を浴びて糖尿病を改善 夜は明るい光を避けることも大切 体内時計を調節

ヒトの体には、ほぼ1日の周期で体内リズムを調整する「体内時計」の機能がそなわっており、それがホルモンの分泌や代謝、睡眠リズムといった概日リズムを調整している。
夜に明るすぎる光を浴びると、体内時計が乱れて、概日リズムに異常があらわれすいことが分かった。
逆に、朝に自然光を浴びると、体内時計をリセットでき、生体リズムを整えられることも分かった。
夜間に明るすぎる光を浴びるのを避け、朝に光を浴びることが、糖尿病のリスクを減らすためにできる簡単な方法である可能性がある。
夜に明るすぎる光を浴びると糖尿病リスクが上昇
夜間に明るすぎる光を浴びるのを避けるのは、2型糖尿病のリスクを減らすためにできる簡単な方法である可能性がある。
「夜間に強い光にさらされると、概日リズムが乱れ、インスリン分泌やブドウ糖の代謝に影響が生じ、血糖値を調節する体の能力に悪い影響があらわれる可能性があります」と、オーストラリアのフリンダース大学公衆衛生学部のアンドリュー フィリップス氏は言う。
「夜間に長時間、明るい光を浴びていると、2型糖尿病の発症リスクが高くなることが分かりました」としている。
研究グループは、英国で実施されている大規模研究であるUKバイオバンクに参加した、平均年齢が62歳の男女8万4,790人のデータと、光センサーで測定した約1,300万時間分のデータを用いて、光への曝露のパターンが糖尿病のリスクにどう影響するかを調査した。
糖尿病を発症していない参加者に、光のレベルを追跡できるデバイスを昼夜を問わず1週間、手首に装着してもらい、その後9年間にわたって追跡して、糖尿病の発症との関連を調べた。
その結果、夜間に強い光を浴びている人は、そうでない人に比べて、糖尿病リスクが1.29倍から1.53倍に上昇した。
とくに夜の12時30分から朝の6時までのあいだに、強い光にさらされる時間が長いと、2型糖尿病のリスクは高くなった
夜に強い照明を浴びると体内時計の働きが乱れる
なぜ、夜に強い照明を浴び続けると糖尿病リスクが上昇するのか、因果関係は不明だが、夜に強い照明を浴び続けると、睡眠に障害があらわれる可能性があることを指摘している。
メラトニンは、覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘う作用をするホルモンで、「睡眠ホルモン」とも呼ばれている。
メラトニンの分泌は、主に光によって調節されている。夜中に強い照明を浴び続けると、体内時計の働きが乱れて、メラトニンの分泌が抑えられる。これが睡眠と覚醒のリズムが乱れる原因になると考えられる。
「夜の室内を間接照明にするなどして、明るい光を浴びすぎないようにすることが、糖尿病リスクを減らすための簡単で安価な方法になる可能性があります」と、フィリップス氏は述べている。
朝に明るい自然光を浴びると肥満予防につながる

逆に、朝に明るい自然光を浴びると、体内時計がリセットされ、体格指数(BMI)が低下し、肥満予防につながる可能性があるという研究を、米国のノースウェスタン大学が発表している。
「1日の早い時間に日光を浴びている人ほど、BMIは低く、肥満が少ない傾向が示されました。逆に、遅い時間に明るすぎる光にさらされる時間の長い人は、BMIは上昇しました」と、同大学神経学部のフィリス ジー教授は言う。
研究グループは、平均年齢30歳の54人の男女を対象に実験を行った。参加者に手首にアクチグラフィーモニターを装着してもらい、通常の生活環境で7日間、光への露出と睡眠パラメータを測定した。7日間の食事や体重などについても記録した。
その結果、午前中に500ルクスを超える明るい光を浴びている人は、1日の後半に強い光を浴びている人に比べ、体重増加が抑えられていることが示された。
「光を浴びることは、体内時計を同期させ、概日リズムを調節するもっとも強力な因子であり、体のエネルギー代謝のバランス調節にも影響します。空腹感や満腹感の調節にも影響すると考えられます」と、ジー教授は指摘している。
「体内時計を整えるために、午前8時から正午のあいだに、なるべく明るい光を浴びるようにすることをお勧めします。朝に日光を20~30分浴びるだけで十分です。曇りの日でも、屋外の光は1,000ルクス以上の明るさがあります」としている。
起床前に自然光を20分間浴びると、目覚めが良くなるという。
大阪公立大学の研究グループは今回、電動カーテンで寝室に適度な光を適時に入れると、朝の目覚めが良くなるかを検証した。
19人の参加者に対して、▼IA(起床前に20分間自然光を浴びる)、▼IB(夜明けから起床まで自然光を浴びる)、▼CC(起床前に自然光を浴びない)、という3つの条件で、起床後の眠気、覚醒度、疲労度を測りそれぞれ比較した。
その結果、起床前に20分間自然光を浴びたIAは、IBはCCに比較して、眠気がなく、覚醒度も良好で、目覚めを良くする効果的な方法であることが示された。
「カーテンを閉めて寝るか、それとも開けて寝るか? これはひとつの興味深い課題です。私たちは寝室のカーテンに、スマート制御装置を導入し、自然光が差し込むタイミングを調整することで、朝の覚醒度や反応速度に良い影響を与えることを確認しました」と、研究者は述べている。
「しかし、自然光は覚醒に効果的であるものの、必ずしも多ければ多いほど良いわけではありません。ふだんの起床時間の約20分前に自然光を浴びることが、適切な選択と言えるでしょう」。
「今後、一般的なカーテンなどの窓装備をスマート化することにより、目覚めの改善につながることが期待できます」としている。
研究は、大阪公立大学大学院生活科学研究科の王暁鋭氏、松下大輔教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Building and Environment」にオンライン掲載された。
Fight the late-night bright light (フリンダース大学 2024年6月26日)
Personal light exposure patterns and incidence of type 2 diabetes: analysis of 13 million hours of light sensor data and 670,000 person-years of prospective observation (Lancet Regional Health - Europe 2024年6月4日)
Morning Rays Keep Off the Pounds (ノースウェスタン大学 2014年4月2日)
Timing and Intensity of Light Correlate with Body Weight in Adults (PLOS ONE 2014年4月2日)
大阪公立大学大学院生活科学研究科
Natural light control to improve awakening quality (Building and Environment 2025年4月1日)
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