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2025年02月18日

ウォーキングなどの運動は糖尿病の人に良い 運動で食欲も抑えられる 認知症の予防にもつながる

 ウォーキングなどの運動を行い、体を動かすことで、糖尿病だけでなく、肥満や脂質異常、高血圧などのリスクも下げることができる。

 活発な運動を行うことで、胃から分泌される食欲ホルモンも抑制され、食欲が減り、体重が減りやすくなるという研究が発表された。

 運動を行うことを習慣にして、生涯続けると、アルツハイマー病などの認知症を予防できる可能性が高まることも明らかになった。

運動に取り組むと血糖値が低下 糖尿病が改善

 ウォーキングなどの運動を行い、体を動かすことで、糖尿病だけでなく、肥満や脂質異常、高血圧などのリスクも下げることができる。

 ウォーキングなどの有酸素運動により筋肉への血流が増えると、ブドウ糖が細胞にとりこまれ、血糖値は低下する。

 有酸素運動や筋トレを行うと、筋肉を増やすことができ、持久性が向上する。運動を続けていると、血糖値を下げるインスリンの働きが高まり、ブドウ糖や遊離脂肪酸の燃焼が促され、血糖値が下がりやすい体に変わっていく。

運動を行うと食欲も抑制できる

 活発な運動を行うことで、胃から分泌される食欲ホルモンも抑制され、食欲が減り、体重が減りやすくなるという研究を、米国内分泌学会が発表した。

 「ウォーキングや筋トレなど活発で適度な運動を行うと、空腹感を抑えられることが明らかになりました」と、米バージニア大学で内分泌代謝学を研究しているカラ アンダーソン氏は言う。

 「運動には、病気を治療するための薬と同等、あるいはそれ以上の効果を期待できます。適切な運動量については、個人の体の状態や目標にもとづいて、カスタマイズされるべきだと考えられます」としている。

活発な運動を行うと「食欲ホルモン」が低下

 研究グループは今回、8人の男性と6人の女性を対象に試験を行った。参加者に1晩絶食してもらい、血中乳酸値の測定により決定したさまざまな強度の運動に取り組んでもらい、食欲にどのような変化があらわれるかを調べた。

 その結果、活発な運動を行うことで、血中の「グレリン」を抑えられることが示された。強度を高めた運動をした後では「空腹感が少ない」と感じる人が多かった。

 グレリンは胃から分泌されるホルモンで、食欲を高めて食事の摂食量を増やすなどの生理作用があり、体重増加に影響する。肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病など、さまざまな病気に関わっていると考えられている。

 「強度を高めた運動には、食欲を抑制する効果がある可能性があります。とくに体重を減らしたいと思っている人には、食事の管理に加えて、運動を習慣として行うことが勧められます」と、アンダーソン氏は指摘している。

ウォーキングなどの運動は認知症の予防にもつながる
糖尿病のある人は認知症リスクが高い

 ウォーキングなどの運動を行うことを習慣にして、生涯続けると、アルツハイマー病などの認知症を予防できる可能性も高まることが明らかになった。

 とくに、50歳未満のときに身体的に活発であると、脳の主に記憶を司る領域である海馬の拡大につながるという。

 研究は、英国のユニヴァーシティ カレッジ ロンドンによるもの。研究グループは、英国出生コホート研究に参加した502人の成人を、36歳から69歳まで30年間にわたり追跡して調査した。

 「生涯を通じて、とくに50歳になる前に、運動を行う習慣を身につけることが、脳の健康を維持し、初期のアルツハイマー病の進展を遅らせるのに役立つことが示されました」と、同大学認知症研究センターおよび生涯健康・高齢化MRCユニットのサラ ナオミ ジェームズ氏は言う。

 「脳の健康をサポートするために、あらゆる年齢層の人にとって、運動に取り組むことはとても重要です」としている。

 研究グループは、参加者の余暇時間の身体活動パターンが、脳の健康(初期のアルツハイマー病や、70歳時の認知力など)にどのような影響を与えるかを調査した。

 その結果、生涯を通じて運動を継続している人は、アミロイドの蓄積や脳の萎縮など、アルツハイマー型認知症の指標があっても、認知機能の低下を経験する可能性が低いことが分かった。この傾向は、とくに女性で強かった。

 若いときに活動的な生活をしていた人は、活動的ではなかった人に比べ、認知機能が優れている傾向も示された。

 運動により脳の健康を保つことは、認知機能の予備力と回復力を高めるのに役立ち、高齢になってから記憶力と思考力をより長く維持するのにも有用としている。

 とくに糖尿病のある人は認知症リスクが高く、糖尿病のない人に比べて、アルツハイマー病に1.5倍なりやすいという報告がある。

 しかし、食事を見直したり、運動を習慣として続けるなど、認知症のリスクを軽減するためにできることは多い。

 「運動が脳に物理的にどのような変化をもたらし、認知症から守るのかを解明することで、将来的に認知症の発症を予防する新たな介入策を開発できる可能性があります」と、ジェームズ氏は述べている。

Study finds intense exercise may suppress appetite in healthy humans (米国内分泌学会 2024年10月24日)
The Impact of Exercise Intensity and Sex on Endogenous Ghrelin Levels and Appetite in Healthy Humans (Journal of the Endocrine Society 2024年10月24日)
Exercising throughout life could prevent dementia (ユニヴァーシティ カレッジ ロンドン 2025年1月31日)
The relationship between leisure time physical activity patterns, Alzheimer's disease markers and cognition (Brain Communications 2025年1月30日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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