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2025年02月19日

【歯周病ケアにより血糖管理が改善】糖尿病のある人が歯周病を治療すると人工透析のリスクが最大で44%減少

 歯科で歯周病の治療を受けた糖尿病患者は、受けなかった患者に比べて、人工透析に移行するリスクが32~44%低いことが、東北大学が約10万人の糖尿病患者を調査した研究で明らかになった。

 糖尿病のある人が、定期的に歯科を受診し、歯周病の治療・予防を行うことが、その後の合併症の予防および生活の質(QOL)の向上につながる可能性があるとしている。

糖尿病のある人が歯周病を治療してもらうと血糖管理が改善

 歯周病は、日本人の中高年のおよそ7割が発症しているとみられており、歯を失う原因になる。

 糖尿病のある人は、血糖管理が良好でないと、歯周病になりやすいことが知られている。糖尿病と歯周病は悪い影響を及ぼしあう。歯周病になると、炎症に関わる物質(炎症性サイトカイン)が全身に放出され、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くし、血糖管理がさらに難しくなる。

 一方で、糖尿病のある人が、歯周病の治療を受けると、血糖管理が改善しやすいことも分かってきた。歯周病を引き起こし、炎症の原因になるプラークや歯石を取り除くことで、全身の炎症が軽減し、インスリンの働きが良くなるとみられている。

 また、腎臓病は糖尿病の合併症のひとつで、血糖値が高い状態が長く続き、腎臓が傷んでしまうことで発症する。

 腎臓病は、早期には無症状であることが多いが、放置していると腎機能が低下し、体の調節機能が弱まりさまざまな症状が起こる。さらに腎臓の機能低下が進行し、末期腎不全に至ると、人工的に腎臓の機能を補う「透析療法」が必要になる。

 人工透析のうち「血液透析」は、患者にとって負担が大きいだけでなく、医療費が年間に500万~600万円に上り、医療体制の負担も深刻だ。

歯科で歯周病の治療を受けた糖尿病患者は人工透析のリスクが減少

 今回の研究は、東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野の竹内研時准教授らによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Periodontology」に掲載された。

 これまで、糖尿病のある人が歯周病の治療を受けると、長期的に糖尿病の合併症の予防につながるのかは明らかにされていなかった。

 そこで、研究グループは、9万9,273人分の40~74歳の糖尿病患者の医療受診データ・特定健診データを用いて、歯周病治療での歯科受診の有無による人工透析への移行リスクを調べた。

 その結果、歯科を受診して歯周病の治療を受けた人は、人工透析へ移行するリスクが低いことが明らかになった。

 歯科を受診しなかった人(4万9,177人)に比べて、歯周病治療を1年に1回以上受けた人(2万1,637人)で32%、半年に1回以上受けた人(2万1,308人)で44%、人工透析のリスクはそれぞれ減少した。

歯科を受診し歯周病の治療を受けた糖尿病患者は人工透析へ移行するリスクが低い
40~74歳の糖尿病患者約10万人の医療受診データ・特定健診データを調査
出典:東北大学、2025年

糖尿病治療では医科と歯科の緊密な連携も必要

 「歯周病は、糖尿病の発症や進行に影響を与える重要な要因のひとつであり、多くの糖尿病患者さんが歯周病を有しています」と、研究者は述べている。

 歯周病と糖尿病とは相互に影響しあっており、糖尿病の治療では医科と歯科の連携も必要であることが世界的に指摘されている。

 しかし今回の研究では、糖尿病のある人のおよそ半数は、歯周病治療をともなう歯科受診をしておらず、糖尿病治療での医科歯科連携が不十分である現状も浮き彫りになった。

 「今後、糖尿病治療で医科と歯科がより緊密に連携し、糖尿病のある人が定期的に歯科を受診し、歯周病の治療・予防を行えるようにすることが、その後の合併症の予防および生活の質(QOL)の向上、さらには社会全体として医療費負担の減少につながると考えられます」としている。

東北大学大学院歯学研究科 歯学イノベーションリエゾンセンター
Periodontal Care Is Associated With a Lower Risk of Dialysis Initiation in Middle-Aged Patients With Type 2 Diabetes Mellitus: A 6-Year Follow-Up Cohort Study Based on a Nationwide Healthcare Database (Journal of Clinical Periodontology 2025年1月5日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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