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2025年05月08日
腎臓病は糖尿病の人が発症しやすい合併症 腎臓病の治療は進歩している 透析にならないために
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- 医薬品/インスリン 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症

腎臓病は、糖尿病のある人が発症しやすい合併症のひとつ。
腎臓病は無症状で進行することが多いため、症状のあるなしにかかわらず、糖尿病がある人は定期的に検査を受けることが大切だ。
医療は進歩しており、腎臓病を発症した場合でも、早期発見し治療を開始することで、その進行を抑えられるようになってきた。
腎臓病は糖尿病の人が発症しやすい合併症
腎臓病(糖尿病性腎症)は、糖尿病のある人が発症しやすい合併症のひとつ。腎臓病のリスク因子として、糖尿病、高血圧、肥満、喫煙、睡眠不足や過労などの身体的ストレス、加齢などが知られている。
血糖値が高い状態が長く続くと、腎臓が傷みやすくなる。高血糖により、大量の毛細血管のある腎臓の糸球体で血管が傷つけられ、老廃物などの不要なものをろ過する腎臓の機能が落ちてくる。
腎臓の機能が低下しても、早期の段階では自覚症状は少ないが、進行すると体の余分な老廃物や水分を尿として体の外に排泄する機能が弱まり、むくみが生じたり、気分が悪くなったりするなど、さまざまな症状が引き起こされる。
自覚症状が出るほど進行してしまうと、腎臓の働きを正常の状態に戻すことは難しくなり、最終的には腎不全に進行し人工透析が必要になる。
腎臓病は心臓病とも密接に関連
腎臓病は心臓病とも密接に関連しており、心血管・腎・代謝(CKM)症候群として知られている。腎臓と心臓のどちらか一方の機能が低下すると、もう一方も機能が低下することがある。
腎臓病を予防することは、心臓病のリスクを減らすためにも重要と、米国心臓学会(AHA)が発表した。
「多くの患者さんで、腎臓病と心臓病が同時に進行しています。腎臓病の初期の段階で、適切な治療を行わないでいると、心臓病、心不全、脳卒中などの心血管疾患のリスクも上昇します。初期の腎臓病の患者さんの5人に3人は心血管疾患のリスクも高いという報告もあります」と、ジョージ ワシントン大学医学部および健康科学部のジャナニ ランガスワミ教授は言う。
糖尿病とともに生きる人は、腎臓病を予防・治療するために、血糖値を管理を良好に維持するだけでなく、血圧や脂質も管理するなど、さまざまな側面から対策することが大切になる。
糖尿病がある人は検査を定期的に受けることが大切
腎臓病は無症状で進行することが多いため、症状のあるなしにかかわらず、糖尿病がある人は定期的に尿検査や血液検査を受けることが大切だ。
尿検査では、尿中の「アルブミン」と呼ばれるタンパク質が調べられる。腎臓は血液をろ過し、体に不要なものを排泄する機能をもつ。アルブミンは本来は体に必要な栄養素なので、正常な腎臓から尿に排泄されることはあまりないが、腎臓のろ過機能が機能しなくなると尿に出てくる。尿中のアルブミンが多いことは、腎臓が傷んでいることの目安になる。
また、血液検査では「クレアチニン」が調べられる。クレアチニンは、血液中にある老廃物の一種で、腎臓が正常であれば尿へ排出されるが、腎臓の働きが悪くなると、尿中に排出されずに体のなかにとどまってしまう。そのため血清クレアチニン値が高いことは、腎臓のろ過や排泄がうまくいっていないことを示している。
「血液検査では、eGFRという検査項目で腎臓の状態を知ることができます。eGFRは、クレアチニンの濃度、年齢、性別から計算する推算糸球体濾過量です。また、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)による検査は、腎臓病の診断や重症度を判定するために重要です。検査や健診を受けときは、これらの検査値を確認することをお勧めします」と、米国心臓学会のマリエル ジェサップ氏は述べている。
腎臓病の治療に利用されている薬
腎臓病は進行性の病気で、適切な治療を行わないでいると、最終的には腎不全にまで進行し、人工透析や腎臓移植が必要になる。そうなると患者にとって負担は大きく、生活の質が大きく低下するだけでなく、多額の医療費もかかる。
しかし、医療は進歩しており、腎臓病を発症した場合でも、早期に発見し治療を開始することで、その進行を抑えられるようになってきた。
糖尿病のある人の腎臓病の治療に利用されている薬として、「RAS阻害薬」や「SGLT2阻害薬」などがある。
「RAS阻害薬」は、高血圧などの治療に使われている薬で、血圧を下げる効果に加えて、尿タンパクを減らすことが報告されている。タンパク尿が持続することで腎機能はさらに悪化しやすくなるので、腎保護効果のある「RAS阻害薬」が利用されている。
また「SGLT2阻害薬」は、主に2型糖尿病の治療に使われている薬で、ブドウ糖を尿中に排泄するという作用がある。血糖値を下げる効果に加えて、腎臓病の進行を予防する効果があることが分かってきた。
そのため、糖尿病に腎臓病を合併している人に使われているのに加え、腎臓病の治療にも使われている。SGLT2阻害薬は、尿路感染や脱水などに注意する必要はあるものの、単剤使用では低血糖を起こす危険性は低く、安心して使える薬だ。
2型糖尿病や肥満症の治療に使われている「GLP-1受容体作動薬」も、腎臓病のリスクを減らすことが、分かってきた。GLP-1受容体作動薬は、主に血糖血を下げるインスリンが体から出やすくする作用のある注射薬(飲み薬タイプもある)。
なお、GLP-1受容体作動薬は、悪心・嘔吐などの消化器症状や体重減少をもたらすこともある。薬の作用について、かかりつけの医師や、薬剤師などの医療スタッフと相談することが勧められている。
慢性腎臓病(CKD)ってなぁに? (厚生労働省)
腎疾患対策 (厚生労働省)
Rise in kidney disease underscores critical heart-kidney connection (米国心臓学会 2025年3月24日)
Cardiovascular Disease and Diabetes (米国心臓学会 2025年4月2日)
Kidney Disease and Diabetes (米国心臓学会 2025年4月3日)
Popular diabetes and obesity drugs also protect kidneys, study shows (シドニー大学 ジョージ国際保健研究所 2024年11月26日)
Effects of GLP-1 receptor agonists on kidney and cardiovascular disease outcomes: a meta-analysis of randomised controlled trials (Lancet Diabetes & Endocrinology 2024年11月25日)
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