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2025年06月10日
糖尿病の合併症を防ぐために「高血糖」と「高血圧」の治療が必要 高血圧があるとリスクは3倍に上昇
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- ヘルシーエイジング 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
血糖と血圧を管理できていれば多くの合併症を防げる
糖尿病のある人が高血圧を合併すると、血管が傷つけられ動脈硬化がより速く進行しやすくなり、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などを発症する危険性が高くなる。
また、糖尿病と高血圧の合併は、腎臓病や網膜症などを悪化させる原因にもなる。
血糖値を管理し、高血圧を防ぐことは、糖尿病と高血圧が引き起こすさまざまな病気の発症や進行を防ぐことにつながる。
糖尿病のある人が、血糖値と血圧値をより良く管理することは、命に関わる合併症を防ぐもっとも効果的な手段になることが、米国のラトガース大学の調査で明らかになっている。
糖尿病のある人が、高血圧を合併すると、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクが2.95倍に、心不全のリスクが6.28倍に、腎臓病のリスクが2.84倍に、それぞれ上昇することが示された。
一方で、治療を受けて糖尿病と高血圧を管理できている人は、それらの疾患のリスクが、糖尿病のない人と同程度に低下することも示された。
「糖尿病と高血圧の両方がある人は、血糖値と血圧値を適切に管理することが大切です。そうすることで、糖尿病と高血圧が引き起こすさまざまな疾患のリスクを減らすことができます」と、
研究グループは、ニュージャージー州の病院の救急科に搬送された糖尿病患者783人と非糖尿病患者1,001人を比較して調査した。
糖尿病と高血圧を治療しないと腎臓病のリスクも上昇
糖尿病と高血圧のある人が、血圧を適切に管理できないでいると、腎臓病のリスクが上昇することは、オーストリアのウィーン医科大学の研究でも明らかになっている。研究成果は、「Hypertension」に発表された。
血糖値が高い状態が長く続くと、腎臓が傷みやすくなる。高血糖により、大量の毛細血管のある腎臓の糸球体で血管が傷つけられ、老廃物などの不要なものをろ過する腎臓の機能が落ちてくる。
腎臓の機能が低下しても、早期の段階では自覚症状は少ないが、進行すると体の余分な老廃物や水分を尿として体の外に排泄する機能が弱まり、むくみが生じたり、気分が悪くなったりするなど、さまざまな症状が引き起こされ、心血管合併症のリスクも高まる。
「高血圧と糖尿病は、腎臓病を進行させる原因として、もっとも多くみられます。腎臓の機能が低下しないようにする治療を行う必要があります」と、同大学で腎臓・透析を専門としているライナー オーバーバウアー氏らは言う。
「腎臓病の進行を遅らせ、長期的な障害を防ぐために、血糖値を良好に管理するだけでなく、血圧や脂質の管理も必要です。糖尿病や腎臓病を早期発見し、適切な管理を行うことで、進行を防いだり遅らせることが可能になります」としている。
研究グループは、2型糖尿病と高血圧のある人と、そのどちらもない人の計99人の腎臓組織を調べた。最新の画像診断技術とコンピューター支援手法を使い、腎臓の濾過機能で重要な働きをする糸球体を詳しく調べた。
糖尿病と高血圧があると死亡リスクは3倍に上昇
2型糖尿病と高血圧の合併は、どちらか一方(2型糖尿病のみ、あるいは高血圧のみ)の場合と比較して、死亡リスクを大幅に上昇させることが、約5万人の成人を対象とした最新の調査でも明らかになった。
高血圧と2型糖尿病を合併している場合は、どちらもない場合と比較して、全死因死亡リスクが2.46倍に、心血管疾患死亡リスクが2.97倍にそれぞれ上昇することが示された。
糖尿病と高血圧の合併は、糖尿病のみの場合と比較して、全死因死亡リスクを25%、心血管疾患死亡リスクを2倍以上に上昇させることなども分かった。
研究は、米コロンビア大学公衆衛生大学院、アルバート アインシュタイン医科大学、カリフォルニア大学などによるもの。研究成果は、米国糖尿病学会(ADA)の「Diabetes Care」に掲載された。
「糖尿病と高血圧を合併する人は増えています。糖尿病予備群の段階で、リスクが上昇することも分かりました。2つの疾患を効果的に予防・管理し、その悪影響を取り除くための戦略が必要とされています」と、コロンビア大学公衆衛生大学院のヌール マカレム氏は言う。
糖尿病のある人の3分の2が高血圧も合併 予防戦略が必要
研究グループは今回、1999~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した4万8,727人の成人のデータを解析した。参加者を、「高血圧および2型糖尿病の合併なし」「高血圧のみ」「2型糖尿病のみ」「両方が合併」の4つのグループに分けて比較した。
参加者の50.5%は2型糖尿病も高血圧も発症しておらず、38.4%は高血圧のみか2型糖尿病のみで、8.7%は両方を合併していた。
「今回の研究は、20年にわたる全国規模の代表的データを使用したものですが、注目するべきこととして、2型糖尿病と高血圧の合併による負担が期間中にほぼ倍増したことが挙げられます」と、マカレム氏は指摘している。
「糖尿病患者の約3分の2が高血圧も合併しており、高血圧の成人患者の約4分の1が糖尿病も合併していることが、最近の調査で示されています」としている。
研究者らは、患者の服薬アドヒアランスの向上やエビデンスにもとづいた生活習慣介入の導入など、予防対策に加え、統合的な管理戦略への投資を行うことを提唱している。
Managing High Blood Pressure in Diabetics May Prevent Life-Threatening Organ Damage (ラトガース大学 2018年10月23日)
Hypertensive emergencies in diabetic patients from predominantly African American urban communities (Clinical and Experimental Hypertension 2018年10月4日)
Hypertension causes kidney changes at an early stage (ウィーン医科大学 2025年3月27日)
Association of Podometrics Findings in Patients With Hypertension and Type 2 Diabetes: A Retrospective Analysis (Hypertension 2025年3月6日)
Burden of Coexisting Hypertension and Type 2 Diabetes in U.S. Adults is Increasing (コロンビア大学公衆衛生大学院 2025年5月28日)
Associations of Concurrent Hypertension and Type 2 Diabetes With Mortality Outcomes: A Prospective Study of U.S. Adults (Diabetes Care 2025年5月21日)
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