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2025年05月26日

【笑いが糖尿病を改善】 お笑いライブ鑑賞でストレスが減り楽観性が向上 「笑いヨガ」の効果

 お笑いライブを鑑賞することが、心理的ストレス(悲観性、不安感)、生理的ストレス指標を短期的に軽減し、楽観性を高めるなどの効果があることが、弘前大学の研究で明らかになった。

 「笑い」は心理状態にポジティブな影響をもたらすだけでなく、血糖値を下げ糖尿病を改善するなど、さまざまな作用があることも示されている。

 日常生活での「笑い」は重要であり、地域での文化活動を公衆衛生やメンタルヘルス向上やストレスマネジメントに役立てられる可能性がある。

「笑い」はストレス軽減に役立つ 心理状態を改善

 お笑いライブを鑑賞することが、一般市民の心理的ストレス(悲観性、不安感)、および生理的ストレス指標を短期的に軽減し、楽観性を高める効果があることが、弘前大学の研究で明らかになった。

 笑いが健康に与える影響についての研究は数多く行われているものの、笑いが楽観性、悲観性、不安に及ぼす影響を明らかにした研究は少ない。

 研究グループは、2023年に弘前市民会館で開催されたお笑いステージ「TAnGE OMOSHÉ」に来場した18~64歳の参加者を対象に、シソンヌ、とにかく明るい安村、もう中学生、パンサーら人気お笑い芸人4組による約2時間のライブパフォーマンスを鑑賞してもらい、その前後で、質問紙調査(楽観性・悲観性、不安感など)と唾液採取(ストレスマーカーである唾液α-アミラーゼ(sAA)活性測定)を行った。

 その結果、ライブ鑑賞後に、参加者の楽観性スコアは有意に上昇した一方で、悲観性スコアと不安スコアは有意に低下した。

 また、ストレスによって上昇する唾液α-アミラーゼ(sAA)活性も、ライブ鑑賞後に有意に低下した。とくに、参加者の63.7%で鑑賞後にsAA活性の低下がみられた。

 鑑賞後の楽観性の高さには、「他者によって笑わされる傾向が強いこと」や「愛想笑いの傾向が低いこと」などが関連していることも示された。

「笑い」がストレス軽減や気分改善の手段に

 研究は、弘前大学大学院保健学研究科の冨澤登志子教授を中心とする研究グループによるもの。研究成果は、「Health Psychology and Behavioral Medicine」に掲載された。

 研究は、日常生活における「笑い」の重要性を再認識させるとともに、地域における文化活動が公衆衛生やメンタルヘルス向上に貢献する可能性を示すものとしている。

 得られた知見は、今後のストレスマネジメントなどの取り組みに応用されることが期待されるとしている。

 「多くの人が経験的に感じている『笑いは心身に良い』効果をもたらすことを、心理指標と生理指標の両面から客観的に示すことができました。お笑いライブのような、みなで楽しさを共有できる文化的な体験が、ストレス軽減や気分の改善に有効な手段となりえることを示唆しています」と、冨澤教授は述べている。

「笑い」に多くの健康効果が
糖尿病を改善する効果も確認

 「笑い」を医学的に解明した研究は増えている。

 糖尿病のある人にも、笑いは心理状態にポジティブな影響をもたらし、血糖管理が改善することが、福島県立医科大学などの研究で示された。

 研究は、同大学疫学講座の広崎真弓氏らによるもの。研究成果は、「Frontiers in Endocrinology」に発表された。

 糖尿病とともに生きる人は、健康的な食事、運動の習慣化、血糖値の管理、処方された薬の服用など、代謝を改善するための自己管理を生涯にわたり続ける必要がある。

 しかし、多くの人にとって、ライフスタイルを自分で管理し続けるのは困難がともない、努力をしていても上手くいかないこともある。そのため、感情的なストレスが引き起こされやすい。

 その一方で、物事を肯定的に捉え、積極的で前向きな考え方やもち、行動できていれば、自己管理は改善しやすいことも知られている。

 そこで研究グループは、糖尿病のある人のために、笑いに焦点をあてた楽しいセルフケア介入として、「笑いヨガ(Laughter yoga)」を提唱している。

 このほど2型糖尿病患者42人を対象に、12週間のランダム化比較試験を実施した。参加者を笑いと深呼吸エクササイズなどを組み合せた「笑いヨガ」に参加する群と、参加しない対照群に分けて比較した。

 その結果、笑いヨガに参加した群は、1~2ヵ月の血糖値の平均があらわれるHbA1c値が0.31%より減少し、ポジティブな感情のスコアも改善し、睡眠時間も増加した。笑いヨガのプログラムの参加率は92.9%と高かった。

 これまでも笑いには、ストレス軽減、がん細胞を攻撃し排除する働きをするナチュラルキラー細胞の活性化、アレルギー反応の抑制、食後血糖値の上昇の抑制など、さまざまな健康効果があることが報告されている。

 「12週間の笑いヨガプログラムは、2型糖尿病の人にとって実行可能であり、血糖管理を改善することが示されました。楽しみながら行うことはセルフケア介入になりえます。笑いヨガの効果をより適切に評価するために、より多くの参加者を対象としたさらなる研究が必要です」と、研究者は述べている。

弘前大学大学院保健学研究科
Unlocking optimism in everyday life: a short-term study on the power of live comedy to reduce stress and anxiety in general public (Health Psychology and Behavioral Medicine 2025年4月24日)
福島県立医科大学医学部疫学講座
Laughter yoga as an enjoyable therapeutic approach for glycemic control in individuals with type 2 diabetes: A randomized controlled trial (Frontiers in Endocrinology 2023年3月31日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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