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2025年06月26日
【睡眠の最新情報】良い睡眠は糖尿病や肥満のリスクを減少 眠りの質を上げる方法は?

睡眠をとれていない人は糖尿病リスクが高い
睡眠を十分にとれていない人は、2型糖尿病リスクが高いことが、米ブリガム アンド ウィメンズ病院などの調査で明らかになっている。睡眠時間が短いだけでなく、睡眠のとる習慣が不規則であることも、糖尿病リスクを高めるという。研究成果は「Diabetes Care」に発表された。
「糖尿病のリスクを減らすために、睡眠習慣を改善することは重要です。研究では、良い睡眠をとれている人は、2型糖尿病のリスクが低いことが分かりました」と、同病院ネットワーク医療部門のシナ キアネルシ氏は言う。
研究グループは、約50万人が参加している大規模研究である英国バイオバンク研究に参加した平均年齢62歳の成人8万4,421人を対象に、7夜の睡眠パターンの記録データと、7年以上の追跡期間での2型糖尿病の発症との関連について調べた。
解析した結果、睡眠を十分にとれていない人は、睡眠をとれている人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクは34%高ことなどが明らかになった。
睡眠時間が短いだけでなく、睡眠パターンが不規則であることも、糖尿病リスクの上昇と関連していた。
「毎日、睡眠を十分にとる習慣をもつと、糖尿病のリスクを減らせる可能性があります」と、キアネルシ氏は指摘している。
睡眠が不足すると何が良くないのか?
厚生労働省は、睡眠学の世界的権威である筑波大学の柳沢正史教授のインタービュー記事の公開を開始した。
睡眠は、すべての世代の健康維持・増進に不可欠な休養活動だが、日本人の平均睡眠時間は世界と比較して短い。とくに日本の働き盛りの世代では、十分な睡眠をとれていないことに気づいていない人も多いとしている。
睡眠が不足することで心身の健康に影響を及ぼし、不調だけでなく病気や事故をまねく場合もある。十分な質と量の睡眠を確保することは、重要な課題になっている。
「長期的な睡眠不足を"睡眠負債"とよく言いますが、睡眠の借金がたまってくると、身体的な病気のリスクが上がっていくことが知られています。もっともエビデンスレベルが高いのが、いわゆるメタボリックシンドロームの類で、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症などの生活習慣病です。メタボのリスクは確実に上がることが知られています」と、柳沢教授は述べている。
「また、免疫系の働きも悪くなるので、いろいろな感染症にかかりやすくなったり、一部のがんのリスクが上がるという報告もあります」。
「さらに、うつ病をはじめとしたメンタルの問題についても、発症や悪化に関係することがわかっています。ほかにも、中高年以降になると睡眠不足をはじめとする睡眠障害があると、認知症の発症リスクが上がることが分かっています」としている。
良い睡眠をとるためのポイント
それでは睡眠を改善するために、どうすれば良いのだろうか?
柳沢教授は、十分な睡眠時間を確保し、良い睡眠をとるためのポイントとして、▼寝室の環境を整える、▼昼間に活動的に過ごす、▼自分が眠くなるための入眠儀式をもつ、▼夕方以降の夜の時間帯に仮眠をとらないことなどを紹介している。
夕方以降のカフェイン摂取や、大量の飲酒、喫煙も睡眠の質を下げる原因になるという。
柳沢教授は、筑波大学の睡眠の研究所である国際統合睡眠医科学研究機構で、睡眠研究を行っている。さらに、大学発ベンチャーとして立ち上げた「S'UIMIN」では、脳波測定ウエアラブルデバイスとAIを駆使した自動解析による睡眠測定サービスを行っている。
健康的な食事が良い睡眠につながる
良い睡眠をとるために、健康的な食事をとることも大切だ。
睡眠と⾷事管理は関連しており、健康的な食事は睡眠の改善につながる可能性があることが、筑波大学の別の新しい研究で示された。
この研究も、柳沢正史教授らによるもの。研究成果は、「Journal of Medical Internet Research」に掲載された。
研究では、食事の総エネルギーが多いほど睡眠時間が短く、中途覚醒が⻑いことや、⾷物繊維を多く摂取している⼈は睡眠時間が⻑く、睡眠潜時(寝付き時間)と中途覚醒が短いこと、タンパク質を十分に摂取している人は睡眠時間が⻑いこと、ナトリウムをとりすぎていてカリウム摂取が少ない⼈は総睡眠時間が短く、睡眠潜時と中途覚醒が⻑くなることなどが明らかになった。
「健康的な⾷事習慣により、睡眠を改善できる可能性が示されました。今後は、実際の⾷事介⼊などによる効果検証を⾏い、より詳細な因果関係などを究明する予定です」と、研究者は述べている。

アプリとデバイスを使い栄養と睡眠との関連を調査
研究グループは、ポケモンの睡眠ゲームアプリ「Pokémon Sleep」と、⾷事管理アプリ「あすけん」を同時に利⽤している4,825⼈を対象に、利⽤データを⽤いて、栄養素と睡眠との関連を調べた。
分析には、「Pokémon Sleep」でスマートフォンに内蔵された3軸加速度計データから得られる総睡眠時間、睡眠潜時、中途覚醒時間のデータを、「あすけん」で毎⽇の⾷事内容の記録から数値化された14項⽬の栄養素のデータを使用した。
その結果、主要栄養素の相互依存関係を考慮した分析では、次のことが明らかになった――。
- 総エネルギーが多いほど総睡眠時間が短く、中途覚醒が⻑い。
- タンパク質の摂取量が多い⼈は総睡眠時間が⻑い。
- ⼀価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の摂取が多い⼈は睡眠時間が短い。
- 多価不飽和脂肪酸の摂取が多い⼈は睡眠潜時と中途覚醒が短くなるが、⼀価不飽和脂肪酸の摂取が多いと睡眠潜時と中途覚醒が⻑くなる。
- ⾷物繊維を多く摂取している⼈は、総睡眠時間が⻑く、睡眠潜時(寝付き時間)と中途覚醒が短くなる。
- ナトリウム対カリウム⽐が⾼い(ナトリウム摂取が多い)⼈は総睡眠時間が短く睡眠潜時と中途覚醒が⻑くなる。
Study Finds Irregular Sleep Patterns Lead to Increased Risk of Type 2 Diabetes (ブリガム アンド ウィメンズ病院 2024年7月17日)
Association Between Accelerometer-Measured Irregular Sleep Duration and Type 2 Diabetes Risk: A Prospective Cohort Study in the UK Biobank (Diabetes Care 2024年7月17日)
筑波⼤学 国際統合睡眠医科学研究機構
Relationship Among Macronutrients, Dietary Components, and Objective Sleep Variables Measured by Smartphone Apps: Real-World Cross-Sectional Study (Journal of Medical Internet Research 2025年1⽉30⽇)
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