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2025年06月03日
糖尿病の人は不安やうつのリスクが高い 自然とのふれあいで改善 森は人間のこころの健康を高める

糖尿病の人は不安やうつのリスクが高い
糖尿病とともに生きる人は、食事や運動、飲み薬の服用やインスリン注射など、管理を毎日求められ、精神的負担が多い。そのため、糖尿病の人は不安障害やうつ病を発症する頻度が高いことが知られている。
1型糖尿病と2型糖尿病の人のうつ病のリスクは、そうでない人に比べて、2~3倍に上昇するという報告がある。糖尿病に対する誤った理解から、不当な差別を受けやすく、社会心理的負担が大きいことも指摘されている。
とくに、糖尿病のある人が、心臓病などの心血管代謝疾患を合併すると、うつ病のリスクを大きく高めるという調査結果を、英国のエディンバラ大学が発表した。研究成果は、「Communications Medicine」に発表された。
糖尿病と心臓病などの組み合わせは、うつ病と診断される可能性を2倍以上に高めるとしている。10年間のうつ病の発症リスクは、身体的な問題のないグループでは25人に1人なのに対して、もっともリスクの高いグループでは12人に1人に上昇した。
研究グループは、大規模研究であるUKバイオバンクに参加した、37~73歳の14万2,000人以上の男女のデータを解析した。
「医療の現場では、身体的健康と精神的健康は、別のものとして扱われることが多いのですが、今回の研究では、身体疾患をもつ人々のメンタルヘルスの改善についても注意し、治療する必要があることが示されました」と、同大学先端医療研究センターのブルース ガスリー教授は述べている。
自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善
不安やうつなどのメンタルヘルス不調を感じている人のために、効果的な治療法の開発が進められている。
自然とのふれあいをベースにした活動は、不安症やうつ病の効果的な治療法になりえるという新しい研究が発表された。
森林は人間の健康とウェルビーイングの促進において、重要な役割を果たしており、森の密度や多様性といった特性が影響しているという研究も発表された。
「自然と積極的につながることは、メンタルヘルスを改善するのに効果的であることを示した研究は増えています」と、研究者は述べている。
自然をベースにした活動が不安症やうつ病の治療に
自然とのふれあいをベースにした活動は、不安症やうつ病の効果的な治療法になりえるという新しい研究を、英国のヨーク大学が発表した。研究成果は、「Health & Social Care in the Community」に掲載された。
研究グループは、自然の豊かな環境で、野外レクリエーション、ガーデニング、ケアファーミング、スポーツや運動、屋外でのマインドフルネス、創作や芸術などの活動に取り組む、集団プログラムを作成した。
18~85歳の幅広い年齢層の220人超に参加してもらったところ、軽度から中程度のうつやメンタルヘルス不調を抱えている人は、わずか12週間で気分や不安のレベルが改善した。
研究グループは、地域密着型の自然活動への参加を通じて、医療行為を超えて健康とウェルビーイングの改善を支援する、「緑を活用した社会的処方(グリーン ソーシャル プリスクリプション)」を提唱している。
自然が人間の健康とウェルビーイングを改善

英国政府のメンタルヘルス改善政策の一環として、英国の全土でグリーン ソーシャル プリスクリプションの7ヵ所の拠点が設けられた。
参加者に、1~4週間、5~8週間、9~12週間のプログラムに毎週参加してもらい、自然の豊かな環境で活動してもらった結果、全員が幸福感と精神状態が改善した。とくに、より長期のプログラムに参加した人や、ガーデニングやケアファーミングなどの活動に参加した人で効果が高かった。
「近年、自然が健康とウェルビーイングに良い影響をもたらすことを示した研究は増えています」と、同大学健康科学部のピーター コベントリー教授は述べている。
「不安やうつは、孤独感や孤立感から生まれることが多いため、グループにつながり、とくに自宅近くにある自然の豊かな環境を保護したり改善する活動に参加すると、気分を高められ、不安を軽減できる可能性があります」としている。
自然は不安やストレスを減らしポジティブな感情を高める
森林は人間の健康とウェルビーイングの促進において、重要な役割を果たしており、森の密度や多様性といった特性が影響しているという別の研究を、英国のサリー大学やベルギーのゲント大学も発表した。研究成果は、「Nature Sustainability」に掲載された。
木が密集すると、より多くの日陰を確保でき、より安定した気候がつくられるため、熱中症によるストレスも軽減される。また、葉の面積が大きくなり、有害な粒子状汚染物質が付着することで、空気の質が向上し、大気汚染による健康被害の改善につながる。これらは、とくに熱波や大気汚染物質が発生しやすい都市部では重要な要素になる。
さらに、メンタルヘルスの観点からも、生物多様性にとんだ森林は、不安やストレスを軽減し、ポジティブな感情を高めるなど、有益な効果をもたらすとしている。
研究グループは、欧州5ヵ国の164の森林を調査し、森林管理と都市計画の関連などを分析。森林のもつ7つの生態学的特性が、人間の健康に及ぼすさまざまな影響についても調査した。
6人に1人が不安やうつを経験 森にいるだけでも改善
「森林が不安やストレスを軽減し、メンタルヘルスに良い影響を与えることは、とくに重要と考えられます。単に森のなかにいるだけでも改善を期待できます」と、同大学環境心理学部のメリッサ マルセル氏は指摘する。
「英国では6人に1人が不安やうつを経験しています。とくに都市部に住む英国人にとって、森林を保護し、アクセスしやすくして、生活や仕事、遊びの場として活用し、メンタルヘルスの改善に役立てることは効果的と考えられます」。
「英国の国民保健サービス(NHS)が支援した自然療法に関する研究で、メンタルヘルスを改善する効果があることが示されており、NHSは今後、森林を活用した社会的処方を促進する可能性もあります」としている。
Multiple chronic illnesses could double risk of depression (エディンバラ大学 2025年5月13日)
Cluster and survival analysis of UK biobank data reveals associations between physical multimorbidity clusters and subsequent depression ( Communications Medicine 2025年5月13日)
Nature-based activity is effective therapy for anxiety and depression, study shows (ヨーク大学 2025年4月16日)
Green Social Prescribing: A Before and After Evaluation of a Novel Community-Based Intervention for Adults Experiencing Mental Health Problems (Health & Social Care in the Community 2025年4月1日)
Forest management can influence health benefits (サリー大学 2025年5月19日)
Forest biodiversity and structure modulate human health benefits and risks (Nature Sustainability 2025年5月19日)
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