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2025年06月02日
【熱中症予防の最新情報】糖尿病のある人は暑さへの備えが必要 熱中症搬送者数を予測するサイトを公開

糖尿病のある人は夏の猛暑にとくに注意が必要
地球温暖化の進行にともない、日本でも熱中症患者の増加が懸念されている。2025年の夏の気温も平年より高いことが見込まれており、熱中症対策は急ぎの対応を要する課題になっている。
とくに糖尿病のある人では、高温の曝露により、入院や死亡のリスクが上昇することが懸念されている。
東京医科歯科大学の調査では、糖尿病ある人の高温環境への曝露が、糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群、低血糖といった深刻な病態による入院リスクと関連することが明らかになっている。研究成果は、「Environment International」に発表された。
糖尿病性ケトアシドーシスは、血糖値を下げるインスリンが不足し、十分に血糖値が下がらないことで起こる。脂肪分解が亢進しケトン体が増え、血液が酸性に傾いた状態(ケトアシド-シス)になり、高度の脱水になる。生命の危険をともなう合併症なので、早く気づき、速やかに治療をうけることが重要になる。
また、高血糖高浸透圧症候群も、高血糖による急性合併症のひとつ。インスリンの相対的不足と極度の脱水により、著しい高血糖と脱水になり、意識障害を引き起こす。
糖尿病のある人は十分な準備が必要
研究グループは、全国の2012~2019年の診断群分類(DPC)のデータと、気象庁の全国日平均気温データと統合し分析した。
その結果、気温が29.9℃(99パーセンタイル)の場合、高血糖緊急症による入院リスクは1.64倍に、低血糖による入院リスクは1.65倍にそれぞれ上昇することなどが示された。いずれも、全国日平均気温の75パーセンタイルの気温(22.6℃)を基準としている。
「とくに、高血糖緊急症のリスクが高い、管理不良の糖尿病患者さんや、インスリンを使用しているなどHbA1cを低く管理している患者さんでは、高温環境による血糖への影響を事前に調べ共有し、医師と相談し薬剤を調整するなどの治療介入を積極的に行うことが、高血糖、低血糖による入院を予防するために有用である可能性があります」と、研究者は述べている。
高齢者は水分補給量が足りていないことを自覚しにくい
熱中症は生命にかかわる病気だが、予防法を知っていれば防ぐことができる。
体温を下げるためには、汗が皮膚表面で蒸発して身体から気化熱を奪うことができるように、しっかりと汗をかくことが重要で、そのために、汗で失った水分や塩分を適切に補給する必要がある。
とくに子供や高齢者は、熱中症の高リスク群とされており、対策の強化が求められている。大正製薬が20代~80代の700人を対象に行った調査では、高齢者は他年代に比べて熱中症対策の意識が高く、8割近くは室内でも熱中症対策を意識しており、夏場の水分補給についても9割近くは意識していることが分かった。
一方で、熱中症による救急搬送人員は他年代に比べて高齢者がもっとも多く、高齢者は熱中症対策意識が高いにも関わらず、熱中症が頻発していることも示された。
「十分な水分量を補給できていると答えた高齢者のうち、実際には水分補給量が不足していた人は40%以上もいることが分かりました。この割合は高齢者が全年代のなかでもっとも高く、高齢者は水分補給量が足りていないことを自覚しにくいと考えられます」と、同社では述べている。
- 熱中症警戒アラートが発表された地域では、気温が著しく高くなることにより熱中症による人の健康に係る被害が生ずるおそれがあるので、他人事と考えず、暑さから自分の身を守りましょう。
- まずは、室内などのエアコンなどにより涼しい環境にて過ごしましょう。
- そのうえで、こまめな休憩や水分補給・塩分補給をしましょう。
- 身近な場所の暑さ指数(WBGT)を確認し、警戒が出ているときは、運動などを行うときに定期的に休息をとりいれ体調に気をつけ、危険や厳重警戒が出ているときは、炎天下を避け涼しい環境に移動しましょう。
- 持病のある人、高齢者、乳幼児などは、とくに熱中症にかかりやすいので注意し、周囲の方も声かけをしましょう。
熱中症を防ぐための対策が進められている。名古屋工業大学は、気象データを用いた熱中症搬送者数の予測技術を開発しており、このほど熱中症搬送者数の予測値を提供するWebコンテンツの対象地域を全国47都道府県に拡大した。
開発した予測技術は、対象都道府県での熱中症による救急搬送者数の予測値を、1週間先まで日ごとにリアルタイムで提供するもの。熱中症リスクの低減に向けた啓発活動や、救急搬送需要の事前把握などでの利用を期待している。
研究グループは2024年度に、都道府県で試行運用を開始。「今後も、気象条件や地域特性に応じた予測精度のさらなる向上に向けて、各地域との連携を深めながら技術開発を継続します」と述べている。
研究グループはこれまで、数値人体モデルを用いた体内温度上昇および発汗量を推定可能な解析手法を開発してきた。さらに、熱中症による救急搬送者に関するビッグデータと組み合わせることで、気象データを入力値とした大規模シミュレーションにより1日の発汗量を推定し、それを用いた熱中症搬送者数を推定する予測式を提案してきた。
これらの技術は、名古屋市消防局との共同研究で、病院や小中学校などへの情報提供、救急隊の効率的な運用支援、さらに熱中症予防の啓発活動などで実用化されているという。
研究は、名古屋工業大学の平田晃正教授(電気・機械工学類、先端医用物理・情報工学研究センター長)、小寺紗千子准教授(電気・機械工学類)、三輪将大氏(物理工学科)、村川卓也氏(情報工学科)、浅野いぶき氏(工学専攻電気電子プログラム)らの研究グループによるもの。
なぜ高齢者の熱中症は減らないのか? 熱中症対策への意識の高さと裏腹な実態 (大正製薬 2025年5月27日)
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