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2025年10月14日

息で糖尿病を検出するセンサーが開発進行中

 近い将来、装置に息を吹き込むだけという簡単な方法で、糖尿病の有無が分かるようになるかもしれない。米ペンシルベニア州立大学のHuanyu "Larry" Cheng氏らが開発中のこの新しい検査機器は、吐き出す息(呼気)の中のアセトンをセンサーで検知して、糖尿病の人と健康な人を判別する。さらに、糖尿病患者の血糖管理状態を把握できるようになる可能性も秘めているという。開発状況の詳細が、「Chemical Engineering Journal」9月号に掲載された。

 Cheng氏によると、「この測定システムは、息を袋に吐き出してセンサーに呼気を当て、数分待つだけで結果が得られる」という。同氏の説明では、これまでにも呼気を検体とする機器は開発されてきているが、採取した呼気を実験室で分析する必要があったとのことだ。それに対して開発中の測定器は、「呼気を採取した現場で判定でき、費用対効果も優れている」としている。

 研究者らによれば、この測定システムの精度が検証・証明されたとしたら、現在の糖尿病の診断に必要とされている糖負荷試験という、複雑なステップのある採血検査よりも、簡便な検査法として承認される可能性があるという。なお、研究者らは背景説明として、米国の成人糖尿病患者は3,700万人に上り、そのうち約5人に1人は自分が糖尿病であることを知らずにいると述べ、糖尿病をより簡便に見いだす検査法の必要性を指摘している。

 開発中の測定システムのセンサーは、人体のエネルギー生成過程で発生する副産物である、アセトンを検出する。アセトンは糖尿病の有無にかかわらず、誰の呼気にも含まれているが、アセトン濃度が高い人は糖尿病を患っている可能性が高いと考えられる。

 今回報告された研究には、2型糖尿病患者51人と健康なボランティア20人が参加。参加者の呼気をアルミホイルの袋に収集し、そこにセンサーを挿入してアセトン濃度を測定した。すると、2型糖尿病患者の呼気と健康な人の呼気で、センサーは異なる測定値を示した。検討の結果、糖尿病と診断する呼気中のアセトン濃度の閾値は、約1.8ppmと判断された。

 また、このセンサーの反応は、研究参加者の血糖値と相関を示した。これに関連してCheng氏は、「得られた結果は、センサーの性能を改良していくことにより、この測定器が単に糖尿病の有無の判定だけでなく、糖尿病患者の血糖管理状態を日常的にモニタリングするという目的にも、十分な性能を発揮する可能性があることを示している」と語っている。また、「人がいつ、何を食べるかによって血糖値が変動するのと同じように、食事や運動によって呼気中のアセトン濃度がどのように変化するのかについて十分に理解を深めることができれば、本センサーは糖尿病の診断にとどまらず、ほかの健康関連領域への応用も期待できる」と同氏は展望している。


 研究者らは研究開発の次のステップとして、センサーを改良してマスクの内側に取り付けたり、人の鼻の下に直接留置したりするなどして、より使い勝手の良いものにしていくことを計画している。

(HealthDay News 2025年8月27日)

https://www.healthday.com/health-news/diabetes/breath-test-for-diabetes-under-development

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Photo Credit: Mohd Azrin/Adobe Stock

(参考情報)Abstract/Full Text

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1385894725056931

Press Release
https://www.psu.edu/news/engineering/story/new-sensor-breath-fresh-air-diagnosing-diabetes

[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

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