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2025年06月23日

糖尿病と肥満のある人が体重を減らすとお得がいっぱい たとえ減量に失敗してもメリットが 食事日記をつければ成功率は2倍に

 糖尿病のある人が、肥満や過体重がある場合は、体重を減らすことで、糖尿病の管理を大幅に改善できることが明らかになった。

 目標とする体重を達成できなかった人も、食事や運動などの体重管理についてのサポートを受け、持続的な減量に取り組むことで、健康状態は大きく改善した。

 食事日記をつけ、食事を継続的に記録すると、体重減少は2倍成功しやすくなるという研究も発表された。

 食事日記は、何を食べたかを書きとめたり、毎食の記録をメールで自分に送ったりする、簡単なもので十分としている。
糖尿病の人は体重を減らすことで大きなメリットを得られる

 「糖尿病と肥満のある人は、体重を減らすことで大きなメリットを得られます」と、15年以上の食事指導の経験をもつ英国糖尿病学会(Diabetes UK)の栄養士であるダグラス トゥエネフォー氏は言う。

 「体重を5%減らすだけでも、血圧値やコレステロール値などを改善でき、糖尿病の管理を良くできます。健康的な体重を維持することで、心臓病や脳卒中といった深刻な合併症のリスクを大幅に減らすことができます」。

 肝臓や膵臓などの臓器のまわりに余計な脂肪が蓄積する内臓脂肪型肥満は、血糖値を下げるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性を引き起こす。体重を減らすことで、内臓脂肪を減らすことを期待できる。

 「減量に成功したほとんどの人は、気分も良くなり、エネルギーが充実し、よく眠れるようになったと言っています」としている。

 新規に2型糖尿病と診断され肥満のある人が、体重を減らし、糖尿病の寛解(糖尿病が治ったのに近い状態になること)を達成したケースも海外では報告されている。糖尿病の寛解により、血糖値を下げる薬を服用する必要もなくなった。

目標体重を達成できなくとも得られるものは多い
諦めないで挑戦を続けた方が良い

 しかし、健康的で理想的な体重を維持するのは、簡単なことではないことも知られている。肥満や過体重のある人が、減量に挑戦しても、思う通りにいかなかったり、挫折してしまうこともある。

 たとえ目標とする体重を達成できない場合でも、健康上​​のメリットを得られる可能性が高いので、諦めないで挑戦を続けた方が良いという新しい研究が発表された。

 米国のハーバード公衆衛生大学院とイスラエルのネゲヴ ベン グリオン大学によるもの。研究成果は「European Journal of Preventive Cardiology」に発表された。

 「減量プログラムでは、目標体重を達成できないと失敗とみなされることが多いのですが、今回の研究で、体重を減らすことができなかった人も、減量に取り組むことで代謝が改善し、長期的な病気のリスクを減らすことができることが示されました」と、同大学院疫学部のアナト ヤスコルカ メイヤー氏は言う。

 「健康的な体重を獲得しようと、減量に挑戦することは、どのような結果になろうとも無駄なことではありません。これは多くの人に希望をもたらすメッセージです」としている。

体重を減らせなかった人も検査値は改善

 研究グループは今回、肥満や過体重のある計761人の成人が参加した3件の試験(DIRECT試験、CENTRAL試験、DIRECT PLUS試験)のデータを解析した。それぞれ、参加者は体重を減らすために、18ヵ月から24ヵ月をかけて、食事や運動などの生活改善に取り組んだ。

 その結果、減量に成功した人の割合は36%で、体重の5%以上の減量を達成した。中程度の減量に成功した人は36%で、体重の0~5%を減らした。一方で、減量に成功しなかった人も28%いた。

 しかし、目標とする体重減少を達成できなかった人でも、生活改善に取り組むことで、糖尿病や脂質異常症などの代謝疾患や、高血圧、心血管疾患などのリスクは減少し、多くの健康上のメリットが得られたことが明らかになった。

 体重を減らすことができなかった人も、減量に取り組むことで以前に比べると、善玉のHDLコレステロールは増え、中性脂肪は減少し、食欲を抑えてエネルギー消費を促進するレプチンの分泌が改善し、内臓脂肪は減少していた。

食事日記をつければ体重管理は2倍成功しやすくなる

 心筋梗塞・脳卒中・がん・腎臓病・認知症などを予防するために、若い頃からの健康的なライフスタイルが重要となる。

 しかし、食事や運動などの生活改善に取り組んでも、その効果がみえづらく、それを維持することは難しいため、多くの人が途中で挫折している。

 そうした人のために、食事日記をつけ、食事を継続的に記録し、それをもとにフィードバックを受けることで、体重減少は2倍成功しやすくなるという研究が発表された。

 食事日記をつける頻度と、グループミーティングへの参加が、体重減少のもっとも効果的な予測因子であることも示された。

 研究は、米国の大手保険システムであるカイザーパーマネンテの健康研究センターによるもの。研究成果は「American Journal of Preventive Medicine」に発表された。

食事日記をつけて運動にも取り組む グループで支援

 「食事の記録を毎日つけていた人は、つけていなかった人に比べて、体重の減少が2倍に上りました。食べたものを記録するという単純な行為が、摂取エネルギーを減らすことを促すと考えます」と、同研究センターのジャック ホリス氏は言う。

 研究グループは、25歳以上の成人1,685人を対象に、食事日記をつけてもらい、食事や運動などについてアドバイスするグループセッションにも参加してもらった。

 参加者に、高血圧の予防・改善を目的に開発された「DASHダイエット」に取り組んでもらった。この食事法は、野菜、全粒穀物、低脂肪の乳製品、魚介類、果物などを十分にとり、体に悪い塩分や飽和脂肪酸などを減らすことが中心になる。

 さらに、活発なウォーキングなどの中強度の運動を1日30分以上行うことなども求めた。

効果的なツールとサポートがあればほとんどの人は体重を減らせる

 その結果、参加者の体重は平均して5.8kg減少し、3分の2以上(69%)は4kg以上の減量に成功した。なお、食事日記の週の提出回数の平均は3.7回だったとしている。

 「過去の研究では、わずか2.3kgの減量でも、高血圧のリスクを20%低減できることが示されています。今回の研究では、食事日記を多くつけ、グループミーティングに参加した人の多くが、4kg以上の減量に成功しました」と、同研究センターのビクター スティーブンス氏は言う。

 「これだけの減量を達成すれば、高血圧、高コレステロール、糖尿病、心臓病、脳卒中などの発症リスクを大幅に減少できます」としている。

 食事日記は、必ずしも形式的なものである必要はなく、何を食べたかを書きとめたり、毎食の記録をメールで自分に送ったり、自分にテキストメッセージを送ったりするだけでも十分だとしている。

 「今回の研究は、適切なツールとサポートがあれば、ほとんどの人が体重を減らせることを示しています。何を食べたかを振り返るプロセスを通して、私たちは自分の習慣に気づき、行動を変えることができます」と、同研究センターの体重管理イニシアチブの医師であるキース バックマン氏は述べている。

Weight loss and diabetes (英国糖尿病学会)
Optimum Protection Against Diabetes: Weight Loss Plus Remission of Prediabetes (ドイツ中央糖尿病協会 DZD 2024年6月19日)
Role of weight loss-induced prediabetes remission in the prevention of type 2 diabetes: time to improve diabetes prevention (Diabetologia 2024年5月23日)
Adopting a healthy diet may have cardiometabolic benefits regardless of weight loss (ハーバード公衆衛生大学院 2025年6月5日)
Individual response to lifestyle interventions: a pooled analysis of three long-term weight loss trials (European Journal of Preventive Cardiology 2025年6月5日)
あなたの肥満、治療が必要な「肥満症」かも!? (一般社団法人 日本肥満学会)
Keeping A Food Diary Doubles Diet Weight Loss, Study Suggests (カイザーパーマネンテ 2008年7月8日)
Weight Loss During the Intensive Intervention Phase of the Weight-Loss Maintenance Trial (American Journal of Preventive Medicine 2008年8月)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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