ニュース

2025年07月08日

【夏はビールの飲みすぎにご注意】軽度の飲酒は糖尿病リスクを低下? ノンアルコール飲料を利用し飲酒量を減少

 暑い夏に、キンキンに冷やしたビールなどのアルコールを飲むのを楽しみにしている人は多い。

 軽度の飲酒をしている人は、血糖などに良い影響があらわれ、2型糖尿病のリスクが減少するという調査結果も発表されている。

 ただし、アルコールを飲みすぎると、糖尿病リスクを減らすベネフィットは打ち消されてしまうことも分かった。

 研究者は、1型糖尿病と2型糖尿病のある人は、アルコールの摂取に対し、とくに注意する必要があることも指摘している。

 アルコールの飲みすぎを防ぐために、ノンアルコール飲料の利用が効果的という研究も発表された。

適度な飲酒は健康に良い?

 アルコールを飲むのを楽しみにしている人は多い。適度な飲酒はストレスの軽減につながり、血行が促進され、人との円滑なコミュニケーションにも役立つ。

 アルコール摂取量と心血管疾患発症とのあいだにU字型の関連があり、日本でも軽度のアルコールを摂取している人は心筋梗塞や脳卒中などのリスクが少ないことなどが報告されている。

 軽度の飲酒をしている人は、血糖などに良い影響があらわれ、2型糖尿病のリスクが減少するという調査結果も発表されている。適度な飲酒は高い生活の質(QOL)と関連することも指摘されている。

軽度の飲酒は2型糖尿病のリスクを低下

 軽度の飲酒をしている人は、2型糖尿病のリスクが低いことが、大規模な調査で確かめられている。

 研究は台湾の国立陽明大学などによるもの。研究グループは、全国健康面接調査(NHIS)に参加した平均年齢42歳の成人4万3,000人を対象とした調査のデータを解析した。

 その結果、2型糖尿病の発症がもっとも少ないのは、軽度の飲酒の習慣がある人であることが示された。

 軽度の飲酒をしている人に比べると、アルコールをまったく飲まない人では、糖尿病リスクは1.2倍に上昇した。

 ただし、アルコールを飲みすぎると、糖尿病リスクを減らすベネフィットは打ち消されてしまうことも分かった。

 大量の飲酒をしている人では、軽度の飲酒をしている人に比べて、2型糖尿病のリスクは2.2倍に上昇した。

軽度の飲酒は血糖と脂肪の代謝に良い影響が

 軽度の飲酒をしている人は、血糖と脂肪の代謝に良い影響があらわれ、2型糖尿病のリスクが減少する可能性があるという調査結果も発表されている。研究は中国の東南大学によるもの。

 研究グループは、2型糖尿病の成人計575人を対象に実施された10件のランダム化比較試験をメタ解析した。

 その結果、軽度の飲酒をしている糖尿病の人は、インスリン値と中性脂肪値が低い傾向があることが示された。軽度の飲酒は、純アルコールに換算して1日に20g以下に相当する。

糖尿病のある人はアルコールに対し注意が必要

 ただし研究者は、1型糖尿病と2型糖尿病のある人は、アルコールの摂取に対し、とくに注意する必要があることも指摘している。

 アルコールを飲みすぎていると、体重が増加し、血糖値を下げるインスリンが働きにくくなるなど、血糖管理が難しくなり、多くの健康問題も引き起こされる。

 糖尿病の薬物療法を行っている人では、アルコールが血糖値を低下させ、血糖値が下がりすぎる低血糖が起こる可能性もあるとしている。

適度な飲酒の目安は?

 日本の健康日本21でも、適度な飲酒は1日に純アルコールに換算して20g程度とされている。これは、缶ビール約1.5本(500mL、アルコール度数5%)、缶チューハイ1本(350mL、アルコール度数7%)、日本酒1合(180mL、アルコール度数15%)、ワイン1杯(200mL、アルコール度数12%)に相当する。

 1日に60gを越えるような多量の飲酒は、健康に悪影響をもたらし、生産性の低下など職場への影響も無視できないとしている。

 多量飲酒をしている人が、お酒を飲む量をコントロールするために、ノンアルコール飲料を上手に利用すると効果的という研究や、スマートフォンなどのアプリの活用するとアルコール関連の障害を減らすのに役立つ可能性があるという研究も発表されている。

アルコールの飲みすぎは肝臓病のリスクも高める

 アルコールの飲みすぎは、肝臓病のリスクも高める。

 過剰な飲酒を長期にわたり続けると、さまざまな臓器に障害が起こり、なかでも肝障害は高い頻度で起こり、重症化しやすいことが知られている。

 アルコールの飲みすぎが習慣になると、脂肪が肝臓に蓄積され脂肪肝になる。さらに多量飲酒を続けると肝障害が進行し、肝臓の線維化が引き起こされ肝炎になる。最終的に肝硬変を発症し、死亡にいたるケースもある。

 過度の飲酒が原因になるアルコール関連肝疾患(ALD)のリスクが、20年で倍増しているという最新の調査結果が発表された。

 研究は米国のスタンフォード大学医学部消化器病・肝臓病学のロバート ウォン氏らによるもの。研究成果は「JAMA Network Open」に掲載された。

 研究グループが、ALDが原因で死亡した43万6,814人を横断調査した結果、米国人のALDの死亡率は、1999~2022年に10万人あたり6.71人から12.53人に2倍に増えたことが明らかになった。とくに25~44歳の若年成人や女性での増加が目立つという。

 「アルコール関連肝疾患は、肝硬変に関連する死亡の原因の4分の1を占め、公衆衛生上の大きな懸念事項になっています」と、研究者は述べている。

ノンアルコール飲料を利用すれば
飲酒量を減らせる可能性が

 アルコールの飲みすぎを防ぐために、アルコールテイスト飲料、いわゆるノンアルコール飲料の利用が効果的という研究が発表された。

 ノンアルコール飲料を利用することで飲酒量が減少することが、筑波大学が20歳以上の男女を対象に実施した試験で明らかになった。

 筑波大学の研究グループはこれまで、アルコール依存症の患者などを除いた20歳以上の成人対象に、ノンアルコール飲料を提供する介入群と対照群の2つの群に無作為に分けて、飲酒量の推移を観察するランダム化比較試験を実施している。

 その結果、介入開始前からの飲酒量減少率は、介入群が対照群よりも有意に上回っており、ノンアルコール飲料の提供が飲酒量を減らす対策として有効であることを実証した。

 研究グループは新しい研究では、ノンアルコール飲料の提供が飲酒量におよぼす影響について、これまでに実施したランダム化比較試験を二次解析し、性差の観点から検討した。

 その結果、ノンアルコール飲料を12週間提供した介入群では、対照群に比べ、飲酒量が大幅に減少した。

 男性では飲酒日の飲酒量が減少し、女性では飲酒頻度が減少した。ノンアルコール飲料の利用の影響に性差があることも分かった。

 「ノンアルコール飲料が、男⼥問わず飲酒量を低減するきっかけになる可能性があります。過剰なアルコールの飲みすぎによる健康被害を抑えるために、性差をふまえた対策も必要と考えられます」と、研究者は述べている。

健康日本21 (アルコール) (厚生労働省)
Frequency of alcohol consumption and risk of type 2 diabetes mellitus: A nationwide cohort study (Clinical Nutrition 2019年6月)
Light drinking may be beneficial in type 2 diabetes: Further research needed (Diabetologia 2019年9月16日)
Alcohol-associated liver disease mortality (JAMA Network 2025年6月11日)
Alcohol-Associated Liver Disease Mortality (JAMA Network Open 2025年6月11日)
筑波⼤学 健幸ライフスタイル開発研究センター
Gender differences in changes in alcohol consumption achieved by free provision of non-alcoholic beverages: a secondary analysis of a randomized controlled trial (BMC Public Health 2024年1⽉10⽇)
Effect of provision of non-alcoholic beverages on alcohol consumption: a randomized controlled study (BMC Medicine 2023年10月2日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲