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2025年01月15日

大豆を食べると糖尿病リスクが低下 心臓病や脳卒中も減少 大豆タンパクは腸内細菌にも良い

 豆腐・納豆・枝豆・厚揚げ・がんもどき・おから・豆乳・みそ・しょうゆなどの大豆食品は日本食に欠かせない。大豆には良質な植物性タンパク質が豊富に含まれている。

 大豆食品をよく食べている人は、糖尿病リスクが低く、心臓病や脳卒中などのリスクも低いことが報告されている。

 大豆に含まれるタンパクが、腸内細菌叢に有益な変化をもたらし、心不全の進行を防ぐことも明らかになった。

大豆食品を食べている人は糖尿病リスクが低い

 豆腐・納豆・枝豆・厚揚げ・がんもどき・おから・豆乳・みそ・しょうゆなどの大豆食品は日本食に欠かせない。大豆には良質な植物性タンパク質が豊富に含まれている。

 日本の国立国際医療研究センターなどによる大規模研究「JPHC研究」で、大豆食品をよく食べている女性で、2型糖尿病のリスクが低下することが示されている。

 研究グループが、日本人6万人を対象に5年間追跡したところ、2型糖尿病のリスクの高い肥満や閉経後女性で、糖尿病の発症が減ることが示された。大豆食品に含まれる植物性タンパク質やイソフラボンが、インスリン感受性(インスリンの効きやすさ)を改善している可能性を指摘している。

 女性では、女性ホルモンであるエストロゲンが、糖の代謝や脂肪細胞の調節、脂質生成の阻害などの働きをしている。イソフラボンは女性ホルモンと構造が似ているため、弱いながら同様の作用があると考えられている。

関連情報

大豆を食べるとインスリン感受性が改善して糖尿病リスクが低下

 大豆を食べることで、インスリン感受性が向上して糖尿病のリスクが低下し、心臓病や脳卒中などのリスクが低下することは、中国の四川大学や国立老年医学臨床研究センターなどの研究でも示されている。

 大豆にはコレステロールが含まれておらず、植物性タンパク質、食物繊維、多価不飽和脂肪酸、イソフラボン、レシチン、植物ステロイドなどが含まれる。

 研究グループは、大豆の摂取と糖尿病や心血管疾患などの発症の関連を調べた29件の論文をメタ分析した。1万6,521人の2型糖尿病患者などを2.5~24年間追跡して調査した。

 その結果、大豆をもっとも多く食べていた人は、ほとんど食べていない人に比べ、2型糖尿病のリスクが17%、心血管疾患のリスクが13%、脳卒中のリスクが12%、それぞれ少なかった。

 心血管疾患のリスクは、豆腐を食べている人では18%、納豆を食べている人では17%、それぞれ減少した。

 これまでの研究でも、大豆に含まれる栄養が、総コレステロールや悪玉のLDLコレステロールの値を下げ、糖尿病を改善し、心臓血管の健康を守ることが報告されている。

 「大豆を食べる習慣は、2型糖尿病や心血管疾患のリスクと負の相関関係にあり、それらを予防するために有益である可能性があります」と、同センター代謝研究室のタオ リー氏は述べている。

大豆は腸内細菌も改善 有用な代謝物を増やして心不全を防ぐ

 日本人の死亡原因で2番目に多いのは心臓の病気で、そのうち心不全は心臓の働きが徐々に低下していく状態。

 糖尿病のある人が、血糖値などの管理が良好でないと、心不全のリスクが高くなることが知られている。適切な対策をすることで、心不全の進行を予防することもできる。

 国立循環器病研究センターの研究では、糖尿病のある人が心不全を予防するために、1~2ヵ月の血糖値の平均が反映されるHbA1cを7%未満に、少なくとも8%を超えないように管理することが必要であることが示されている。

 名古屋大学などの新しい研究では、大豆に含まれるタンパクに機能性があり、腸内細菌叢に有益な変化をもたらし、心不全の進行を防ぐことが明らかになった。

 心不全のマウスに大豆タンパクを摂取させると、短鎖脂肪酸を産生する菌が増え、酢酸や酪酸などの主要な短鎖脂肪酸が増えた。大豆タンパクにより、心機能低下・心肥大・心筋の線維化などの進行が抑制されることを確かめた。

 短鎖脂肪酸は、善玉の腸内細菌が食物繊維を消化するときに産生される代謝物で、エネルギー源として利用されるとともに、免疫反応を調整するなど、生体に有用な働きをするとみられている。

 これまでの研究でも、大豆やその成分には抗酸化・抗炎症機能があり、心血管傷害から保護する作用があることなどが報告されている。

 研究は、名古屋大学大学院医学系研究科 総合保健学専攻 オミックス医療科学の古川希助教、上山純准教授、神経遺伝情報学の伊藤美佳子氏らの研究グループが、中部大学生命健康科学部の平山正昭教授、名古屋学芸大学管理栄養学部の大野欽司教授と共同で行ったもの。研究成果は、「Clinical Nutrition」に掲載された。

大豆製品・イソフラボン摂取と糖尿病との関連について (多目的コホート研究 JPHC Study)
Soy product and isoflavone intakes are associated with a lower risk of type 2 diabetes in overweight Japanese women (Journal of Nutrition 2010年3月)
Soy Consumption and the Risk of Type 2 Diabetes and Cardiovascular Diseases: A Systematic Review and Meta-Analysis (Nutrients 2023年3月10日)
糖尿病患者の心不全発症頻度を調査 糖尿病管理が心不全にも影響 (国立循環器病研究センター 2014年4月21日)
名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻・医学部保健学科
Soy protein β-conglycinin ameliorates pressure overload-induced heart failure by increasing short-chain fatty acid (SCFA)-producing gut microbiota and intestinal SCFAs (Clinical Nutrition 2024年12月)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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