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2025年01月14日
妊娠前の健康的な生活習慣が妊娠糖尿病などのリスクを減少 健康的な習慣を1つでも増やすことが大切
妊娠前の健康的な生活習慣が、妊娠中や出産時の母子の健康リスクの低下につながることが、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加した7万9,703組の母子を対象とした調査で明らかになった。
妊娠前に健康的な生活習慣を1つでも増やすことが、母子ともに、妊娠・出産時および将来の健康リスクを減らす効果的で実践しやすい予防策になることが示された。
「妊娠可能な年齢の女性に向けた情報提供や支援体制を、よりいっそう強化する必要性があります」と、研究者は述べている。
妊娠前の5つの健康的な習慣が母子の健康リスクの低下につながる
妊娠前の健康的な生活習慣が、妊娠中や出産時の母子の健康リスクの低下につながることが、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加した7万9,703組の母子を対象とした調査で明らかになった。
妊娠前の5つの健康的な生活習慣[適正体重の維持・質の高い食事・運動習慣・禁煙・節酒]の実施数が多いほど、周産期の有害転帰[妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群・早産・低出生体重・在胎不当過小]の発生リスクが低くなることが分かった。
このうち「妊娠糖尿病」は、妊娠中に起こる糖代謝異常。妊娠すると胎盤からでるホルモンなどの影響で、血糖の調整をするホルモンであるインスリンの働きが抑えられ、血糖値が上がりやすくなることがある。
妊娠糖尿病はほとんどの場合、血糖値を管理するために、食事や運動などの生活スタイルの変更と、必要に応じてインスリンなどの薬物療法を行うことで、安全・適切に管理できる。
しかし、適切なケアを行わないでいると、妊娠中のお母さん(母体)が高血糖になり、母体だけでなく赤ちゃんの合併症のリスクも高まる。
関連情報
妊娠前から健康的な生活習慣を1つでも増やすことが大切
調査では、とくに健康的な生活習慣をすべて実践していた女性は、ほとんど実践していなかった女性に比べて、周産期の有害転帰の発生リスクは33%低く、また健康的な生活習慣を1つ増やすと、周産期の有害転帰の発生を7%防ぐことができることも示された。
「妊娠前から健康的な生活習慣を多く実践しているほど、将来の生活習慣病リスクに関連する周産期の有害転帰の発生リスクが低いことがわかりました」と、研究者は述べている。
「妊娠前に健康的な生活習慣を1つでも増やすことが、母子ともに、妊娠・出産時および将来の健康リスクを減らす効果的で実践しやすい予防策になります」。
「妊娠可能年齢の女性に向けた生活習慣改善のための情報提供や支援体制を、よりいっそう強化する必要性があります」としている。
研究は、国立環境研究所エコチル調査コアセンターの大久保公美客員研究員(東京大学特任教授)らによるもの。研究成果は、英国王立産科婦人科学会が発行する学術誌「BJOG: An International Journal of Obstetrics & Gynaecology」に掲載された。
5つの生活習慣をすべて実践していた女性は、ほとんど実践していなかった女性(0または1つ)に比べて、周産期有害転帰の発生リスクが33%低い結果に。また、健康的な生活習慣を1つ増やすと、周産期の有害転帰を7%防ぐことができることが推定された。

約8万組の母子を対象に調査 エコチル調査
「妊娠糖尿病」「妊娠高血圧症候群」「早産」「低出生体重」「在胎不当過小」などの周産期の有害転帰は、妊娠中や出生時での母子の命に関わるだけでなく、将来的な心血管疾患などの生活習慣病の発症リスクを高めることが知られている。
研究グループは今回、妊娠前から実践されている健康的な生活習慣の組み合わせが、母子の将来の生活習慣病の発症リスクに関わる周産期の有害転帰にどのように関連するかを調べた。
「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は、胎児期から小児期にかけて子供の健康に与える要因を明らかにするために、2010年度から全国で約10万組の親子を対象に環境省が開始した、大規模で長期にわたる出生コホート調査。
研究グループは、エコチル調査参加者のうち、妊娠前の母親の食事・生活習慣、産科・分娩合併症、子供の出生時体重などのデータが揃っている7万9,703組の母子を対象に解析。
(1) 適正体重の維持(体格指数(BMI)が18.5~24.9)、(2) 質の高い食事(食事バランスガイドをもとに算出したスコアの上位40%)、(3) 定期的な運動(週150分以上の中強度の身体活動)、(4) 禁煙、(5) 節酒(禁酒あるいは過去飲酒)という基準を満たす健康的な生活習慣の数と、周産期の有害転帰[妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、早産、低出生体重、在胎不当過小]の発生リスクとの関連を調べた。
その結果、参加者のうち17.4%が1つ以上の周産期の有害転帰を経験していたが、妊娠前から健康的な生活習慣を実践している数が多いほど、周産期の有害転帰の発生リスクは低いことが分かった。
「本研究では、エコチル調査の既報をもとに周産期転帰に関与する生活習慣に焦点をあてていますが、すべての生活習慣要因を考慮しきれていません。今後は、今回注目した生活習慣に加え、その他の生活習慣が周産期の有害転帰の発生や母子の長期的な健康に及ぼす影響について調査を進め、より包括的な予防策を明らかにしていく予定です」と、研究者は述べている。
エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査) (環境省)
Adherence to Healthy Prepregnancy Lifestyle and Risk of Adverse Pregnancy Outcomes: A Prospective Cohort Study (BJOG:An International Journal of Obstetrics & Gynaecology 2024年11月18日)
妊娠前の健康的な生活習慣の組み合わせと周産期転帰との関連:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査) (国立環境研究所 2024年12月24日)
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