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2025年02月26日
糖尿病の人は脂肪肝にご注意 ストレスはリスクを高める 緑茶を飲むと脂肪肝が減少

脂肪肝は、肝臓に脂肪が異常に蓄積されている状態。脂肪肝に、不健康な食事や運動不足だけでなく、ストレスも深く関係していることが明らかになった。
ストレスレベルの高い人は、脂肪性肝疾患のリスクが1.2倍近くに上昇することが、大規模な調査で分かった。
一方、緑茶を飲む習慣と運動を組み合せることで、肥満に関連する脂肪肝のリスクが軽減されるという研究も発表された。
「ストレスを軽減するために、運動を習慣として行うことや、ヨガなどのマインドフルネス、専門家や家族・友人からの支援なども役にたちます」と、専門家はアドバイスしている。
不健康な食事・運動不足・ストレスが脂肪肝に影響
脂肪肝は、肝臓に脂肪が異常に蓄積されている状態。アルコールを飲みすぎている人は、とくに肝臓に脂肪がたまりやすいが、アルコールを飲まない人や、肥満のない人、女性などの脂肪肝も増えている。
不健康な食事や運動不足が、脂肪性肝疾患の発症と進行の原因であることが知られているが、ストレスも深く関係していることが、韓国の調査で明らかになった。
ストレスレベルの高い人は低い人に比べて、脂肪性肝疾患のリスクが1.2倍近くに上昇することが分かった。男性や肥満のある人で、この傾向はより強いことも示された。
肝疾患を早期に発見して、食事や運動などライフスタイルを改善し、健康的な体重を維持すると改善できるが、適切な管理をしないでいると肝臓の働きが悪くなり、肝硬変や肝臓がんに進行するおそれもある。
ストレスは脂肪肝リスクを高める インスリン抵抗性が進行
脂肪性肝疾患は、肥満・メタボ、脂質異常症、高血圧、糖尿病(高血糖)などと関連が深い。血糖値を下げるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性が進行しやすくなり、狭心症や心筋梗塞などの心疾患や、脳卒中のリスクが高くなる。
肥満や2型糖尿病の増加や、高齢化により、脂肪肝は増えており、世界の成人の30%が罹患しているとみられている。日本でも、健康診断の受診者の20~30%が脂肪肝をともなうという報告がある。
食事で脂質や糖質をとりすぎていたり、運動不足が続くと、使いきれなかった脂肪酸やブドウ糖が中性脂肪として肝臓に蓄えられる。
脂肪性肝疾患には、ストレスも関係していることが明らかになった。ストレスがあると、コルチゾールと呼ばれるホルモンの分泌が増える。
こうしたストレスホルモンは、肥満や高血圧、糖尿病などの代謝障害に影響するだけではなく、肝臓のインスリン抵抗性や炎症も引き起こし、肝臓に蓄積される脂肪をさらに増やすおそれがあるという。
ストレスを管理するための戦略が必要
研究グループは、韓国の健康診断センターで検査を受けた平均年齢が39.8歳の17万1,321人の成人を対象に横断研究を実施した。うち、27.8%に脂肪肝が認められた。
解析した結果、ストレスレベルの高い人は低い人に比べて、脂肪性肝疾患のリスクが1.17倍に上昇することが分かった。男性や肥満のある人で、この傾向はより強いことも示された。
研究は、韓国の成均館大学校医学部のダンビー カン氏や、ソン・ウンジュ氏らによるもの。「多くのストレスを経験している人は、肥満やメタボリックシンドロームのリスクも高く、心血管疾患の発症が1.5倍に増えるという報告もあります」と、研究者は述べている。
ストレスが慢性化すると、食べすぎがアルコールの飲みすぎ、運動量の減少などに影響し、それらがさらに2型糖尿病や肥満のリスクを高め、脂肪性肝疾患にも影響を及ぼす。
「健康的なライフスタイルによりストレスを管理することは、脂肪性肝疾患を予防・改善するためにも重要です」。
「ストレスを管理するのに役立つ戦略は多くあります。運動を習慣として行うことや、ヨガや瞑想などのマインドフルネスにもとづく取り組み、専門家や家族・友人からの支援などは、ストレスの軽減に役にたちます」としている。
緑茶を飲む習慣と運動を組み合せると効果的

「非アルコール性の脂肪性肝疾患は、世界的な健康課題になっています。肥満や2型糖尿病などの危険因子が増え、2030年までに脂肪性の肝疾患を1億人以上が発症するだろうという予測も出ています。効果的な対策が必要とされています」と、同大学食品科学部のジョシュア ランバート氏は言う。
「緑茶に含まれるポリフェノールであるカテキンは、小腸で分泌される消化酵素と相互作用し、食物にふくまれる糖質、脂肪、タンパク質の分解を部分的に阻害すると考えられます。食物中の脂肪が消化されないと、その脂肪とカロリーは消化器を通過し、排泄物として排出されます」と、ランバート氏は説明する。
「緑茶のカテキンと運動が合わさると、脂肪肝の沈着を軽減する効果が高まる可能性があります。緑茶の成分と運動がいっしょに働いて、肝臓に蓄積された脂肪を減らす相乗効果があるか、それとも加算的な効果なのかを知るために、さらに研究が必要です」としている。
研究グループは、高脂肪食と緑茶エキスを16週間摂取させ、定期的にホイールで走る運動をさせたマウスの肝臓の脂質沈着量は、緑茶エキスを与えず運動もさせなかった対照群のマウスのわずか4分の1であることを明らかにした。緑茶と運動のどちらかを与えたマウスと比べても半分程度だった。
緑茶カテキンが脂肪の燃焼を高める
日本の研究でも、緑茶のカテキンを摂取すると、褐色脂肪の活性が高まり、脂肪の燃焼が高まることが示されている。北海道大学の斉藤昌之名誉教授や花王などによる別の研究では、褐色脂肪の活性が低下して太りやすい傾向にある人が、緑茶カテキンを5週間継続摂取すると、褐色脂肪の活性が高まるとともに、脂肪の燃焼が高まることが示されている。
褐色脂肪には、脂肪をためる機能をもつ白色脂肪から運ばれる脂肪を燃焼して消費する機能があるとみられている。
さらに褐色脂肪の活性が低い人は、エネルギー消費量が低くなるとともに、脂肪をよく燃やすことができない傾向になることから、太りやすい体質の因子をもつ可能性が指摘されている。
研究では、褐色脂肪の活性が低く、低エネルギー消費となっている成人は、茶カテキンの継続摂取により、褐色脂肪の活性が高まり、脂肪の燃焼量が有意に増強することが示された。
Stress as a Potential Driver for MASLD? (脂肪肝同盟 2023年3月31日)
Perceived stress and non-alcoholic fatty liver disease in apparently healthy men and women (Scientific reports 2020年1月8日)
Non-Alcoholic Fatty Liver Disease (NAFLD) and Potential Links to Depression, Anxiety, and Chronic Stress (Biomedicines 2021年11月16日)
Green tea extract combined with exercise reduces fatty liver disease in mice (ペンシルベニア州立大学 2020年2月13日)
Mitigation of nonalcoholic fatty liver disease in high-fat-fed mice by the combination of decaffeinated green tea extract and voluntary exercise (Journal of Nutritional Biochemistry 2020年2月)
茶カテキンの、太りにくい体質に関与する「褐色脂肪組織」への作用を検証 (花王 2014年8月26日)
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