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2025年02月27日
糖尿病の人はビタミンやミネラルが不足 「食の多様性」が糖尿病リスクを下げる 食事バランスを改善

さまざまな食品を食べており、食の多様性の高い人は、糖尿病リスクが低いことが、大規模な調査で確かめられた。
さまざまな食品を食べることで、栄養バランスのとれた健康的で質の高い食事を実現しやすくなるとみられている。
2型糖尿病のある人の半数近くは、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素が足りていないという、気になる調査結果も発表された。
「食の多様性」の高い人は糖尿病リスクが低い
さまざまな食品を食べており、食の多様性の高い人は、糖尿病リスクが低いことが、大規模な調査で確かめられた。研究は、シンガポール国立大学(NUS)などによるもの。
全粒穀物・野菜・豆類・ナッツ類・果物など、加工度の低い植物性食品を食べており、加工肉や赤身肉を食べるのをひかえめにし、糖質が加えられた飲料やお菓子などもあまり食べていない人は、糖尿病リスクが低いことが分かった。
研究グループは、シンガポールで実施されているコホート研究「シンガポール中国人健康調査」に参加した、45~74歳の中高年者4万5,511人を調査した。165種類の食品を5つの食品グループに分けて、参加者の食事スタイルと糖尿病の発症の関連について調べた。11年の追跡期間中に5,207人が糖尿病を発症した。
その結果、さまざまな食品を食べており、食の多様性の高い人は、低い人に比べて、糖尿病リスクが16%から29%と大幅に低いことが分かった。
白米を全粒穀物である玄米や全粒粉パンに置き換えると、糖尿病リスクは18%減少することや、逆に米を赤身肉や鶏肉に置き換えると、糖尿病リスクは最大で40%増加することなども示された。
「さまざまな食品群から摂取することで、バランスのとれた健康的で質の高い食事を実現しやすくなります。食品の選択に対し注意を払うことが大切です」と、同大学公衆衛生学部のロブ ヴァン ダム教授は述べている。
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食の多様性が高いとコレステロール値などが改善

日本人を対象とした調査でも、食の多様性が高いことはコレステロール値などの改善につながることが示された。
研究グループは、徳島県で行われている就労者を対象とした食事と健康についての縦断研究に参加した、ベースラインで脂質異常症がなかった20~60歳の745人の男女を対象に調査した。
その結果、食事の多様性の高い人は、穀類の摂取量が少なく、イモ類、緑黄色野菜、海藻、キノコ、豆類、魚、肉の摂取量が多いことや、とくに男性で身体活動量が多く、喫煙率が低い傾向があることが分かった。
とくに食事の多様性の高い女性は、悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪が低く、善玉のHDLコレステロールは高い傾向があることも分かった。
「働いている人の食事の多様性が高いことは、とくに女性で良好な脂質プロファイルに関連することが示唆されました」と、研究者は述べている。
研究は、徳島大学医学部医科栄養学科の中本真理子氏らによるもの。研究成果は、「European Journal of Clinical Nutrition」に発表された。
多様な食品を食べると栄養バランスが良くなる
食の多様性が高く、さまざまな食品を食べていると、必要や栄養素を過不足なくとれるようになる可能性がある。
ビタミンやミネラルなどは、「微量栄養素」とも呼ばれ、少ない量で体の調子を整え、健康を保つために働いている大切な栄養素だ。
2型糖尿病のある人の半数近くは、食事で摂取する微量栄養素が足りていないという、気になる調査結果が発表された。
過去50年間で「食の多様性」が失われたことが、肥満、2型糖尿病、胃腸障害などの増加の一因になっているという研究も発表されている。
研究は、英国のNNEdPro食品・栄養・健康研究所などによるもの。研究グループは、5万2,501人の2型糖尿病患者が参加した132件の研究を解析した。
2型糖尿病の人の61%はビタミンDが不足 マグネシウムなども
調査の結果、ビタミンやミネラルのうち、ビタミンDが不足している患者が61%と多く、さらにマグネシウムが不足している患者が42%、鉄分が不足している患者が28%、ビタミンB12が不足している患者が22%に上ることが示された。
とくにメトホルミンを服用している患者では、27%でビタミンB12が不足していることも分かった。
対象となった研究の多くは横断的研究であり、微量栄養素の不足と血糖管理の不良の関連について、因果関係を立証するのは難しいものの、ビタミンとミネラルなどの微量栄養素は、グルコース代謝やインスリンシグナル伝達経路に影響を及ぼし、2型糖尿病の予防や改善で重要な役割を果たしている可能性があるという。
「2型糖尿病の方の食事療法では、食事全体のエネルギー摂取量と、炭水化物・タンパク質・糖質という3大栄養素の摂取が重視される傾向があります」と、同研究所の研究員であるシェーン マコーリフ氏は述べている。
「今回の研究では、いくつかの微量栄養素が不足していることは、糖尿病リスクが高いことと関連していることが示されました。食事では多様な食品を食べて、必要や栄養素を過不足なく摂取し、栄養バランスを良好にすることが大切です」としている。
Quality of overall diet is key to lowering type 2 diabetes risk (シンガポール国立大学 2019年1月29日)
Diet Quality Indices and Risk of Type 2 Diabetes Mellitus: The Singapore Chinese Health Study American Journal of Epidemiology (2018年8月28日)
徳島大学医学部医科栄養学科
Longitudinal associations between dietary diversity and serum lipid markers in Japanese workers (European Journal of Clinical Nutrition 2024年11月13日)
Lack of essential vitamins and minerals common in people with type 2 diabetes (BMJ Nutrition, Prevention & Health 2025年1月29日)
Burden of micronutrient deficiency among patients with type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis (BMJ Nutrition, Prevention & Health 2025年1月29日)
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