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2024年11月18日

世界の糖尿病人口は30年で4倍以上に増加 糖尿病とともに生きる人は8億人以上 半数以上が十分な治療を受けていない

 11月の世界糖尿病デー(World Diabetes Day)に合わせて、世界で糖尿病とともに生きる成人の数は、2022年に8億2,800万人となり、1990年の1億9,800万に比べて4倍以上に増えたという調査結果が発表された。

 世界の成人の糖尿病の有病率は、1990~2022年の約30年のあいだに7%から14%に2倍に増え、とくに低・中所得国での増加が大きい

 一方、日本、スペイン、フランス、スイス、ドイツ、スウェーデン、台湾などは、糖尿病の有病率は過去30年間で変化していないか減少傾向にあることも分かった。

糖尿病とともに生きる成人は30年で4倍以上に増加
世界の8億2800万人が糖尿病 有病率は2倍に

 11月の世界糖尿病デー(World Diabetes Day)に合わせて、世界で糖尿病とともに生きる成人の数は、2022年に8億2,800万人となり、1990年の1億9,800万に比べて4倍以上に増えたという調査結果が、医学誌「ランセット」に発表された。世界的な人口増加と高齢化が影響している。

 世界の成人の糖尿病(1型糖尿病と2型糖尿病を含む)の有病率は、1990~2022年の約30年のあいだに7%から14%に2倍に増え、とくに低・中所得国での増加が大きい

 糖尿病の有病率は30年間に、男性は6.8%から14.3%に、女性は6.9%から13.9%に、それぞれ大幅に増加した。

 糖尿病のある成人が多い国は、インド(2億1,200万人)、中国(1億4,800万人)、米国(4,200万人)、パキスタン(3,600万人)、インドネシア(2,500万人)、ブラジル(2,200万人)など。

 一方、日本、スペイン、フランス、スイス、ドイツ、スウェーデン、台湾などは、男女のどちらかあるいは両方で、糖尿病の有病率は過去30年間で変化していないか減少傾向にあることも分かった。

 糖尿病の有病率が低い国は、男女ともに西ヨーロッパと東アフリカ、女性では日本とカナダだ。たとえば、2022年の糖尿病の有病率は、デンマーク・フランス・ウガンダ・ケニア・マラウイ・スペイン・ルワンダの男性では3~5%と低く、フランス・デンマーク・スペイン・スイス・スウェーデンの女性では2~4%と低い。

 また日本を含む、北米、オーストララシア、中央・西ヨーロッパ、ラテンアメリカの一部、東アジア、太平洋地域では、糖尿病の治療率は1990~2022年に大幅に改善している。

 その一方で、主に低・中所得国で糖尿病は大きく増えており、たとえば、パキスタンの女性の有病率は、1990年の9.0%から2022年の30.9%に大幅に上昇した。30年間の糖尿病の有病率の変化は、国によって大きく異なり、低・中所得国で最大の増加がみられた。

 太平洋諸島、カリブ海、中東・北アフリカ、パキスタン、マレーシアなどは、男女ともに成人の25%以上が糖尿病を患っている。高所得の先進国のなかで有病率がもっと高いのは米国(男性 13.6%、女性 11.4%)だ。

インドは世界一の糖尿病国
糖尿病の有病率が過小評価されていた可能性

 研究は、「NCDリスク要因コラボレーション」(NCD-RisC)が、世界保健機関(WHO)と共同で実施したもので、英国のインペリアル カレッジ ロンドンが主導した。

 研究グループは、さまざまな国の人を対象とした1,000件以上の研究から得た1億4,000万人以上のデータを解析した。統計ツールを用いて、さまざまな年、年齢、国のデータを統合し、国間の比較を可能にする方法で糖尿病の発生率と治療法を推定した。

 糖尿病は、空腹時血糖値(FPG)が126mg/dL(7.0mmol/L)以上、1~2ヵ月の血糖値の平均が反映されるHbA1cが6.5%以上、あるいは糖尿病治療薬を使用していることと定義された。

 糖尿病有病率を調べたこれまでの研究の多くは、糖尿病の指標として空腹時血糖値に依存しており、HbA1cが考慮されないことが多く、糖尿病症例を見逃すことが多かった。とくに人口が増加しているインドなどの南アジアでは、これまで有病率が過小評価されていた可能性が高いとしている。

 「糖尿病は身体に障害を及ぼし、必要な治療を行わないでいると、命を落とすことになる可能性もあります。健康的な食事と運動などの生活スタイルにより、糖尿病を予防・改善することは、健康状態をより良く保つために、世界中で必要不可欠になっています」と、インドのマドラス糖尿病研究財団のランジット モハン アンジャナ氏は言う。

 「2型糖尿病の有病率の上昇に、国によって大きな差がある要因は、肥満と不健康な食生活です。1990年から2022年のあいだに肥満が蔓延し増えた地域では、糖尿病の有病率がすでに高かったか、さらに上昇しました。一方、太平洋諸国や西ヨーロッパなどの高所得国では、肥満率と糖尿病率は上昇していない国も多く、上昇しても比較的わずかなものです」としている。

糖尿病治療の格差が世界で拡大 低・中所得国では深刻

 今回の研究結果は、とくに世界の低所得地域で、不健康な食品を制限し、健康的な食品を手頃な価格で手に入れられるようにし、健康的な食事のための助成や無料の学校給食などを提供する措置や、ウォーキングなどの運動を推奨するため、公共の公園やフィットネスセンターを整備するなど、より積極的な政策が必要であることを浮き彫りにしている。

 糖尿病の治療や管理の世界的な不平等も拡大している。有病率が急激に増加している低・中所得国の多くは、糖尿病の治療率は低水準にとどまり、2022年には世界の30歳以上の糖尿病有病者のうち、59%にあたる4億5,000万人が十分な治療を受けられていないと推定されている。

 「今回の研究では、糖尿病をめぐる世界的な不平等が拡大していることが浮き彫りになりました。多くの低所得国および中所得国では、糖尿病の成人の数が急増していますが、治療率は停滞しています。低所得国では若い人が糖尿病を発症しており、適切な治療を受けないでいると、心臓病、腎臓病、視力喪失、足切断などの、糖尿病の深刻な合併症を発症し、場合によっては早死のリスクがあります」と、論文の主任著者である英インペリアル カレッジ ロンドンのマジッド エザティ教授は述べている。

 なお、今回の研究では、成人の1型糖尿病と2型糖尿病を区別することはできなかったものの、これまでの報告から、成人の糖尿病の症例の大部分は2型であることが示唆されている。

 糖尿病の早期発見と効果的な治療を可能にする、包括的な糖尿病プログラムや医薬品への資金の提供が緊急に必要だと強調している。

Diabetes rate doubles to 800 million adults, but over half are untreated (インペリアル カレッジ ロンドン 2024年11月13日)
Worldwide trends in diabetes prevalence and treatment from 1990 to 2022: a pooled analysis of 1108 population-representative studies with 141 million participants (ランセット 2024年11月13日)
Diabetes (NCD Risk Factor Collaboration:NCD-RisC)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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