ニュース
2024年10月28日
高いウェルビーイングは脳卒中や心筋梗塞の予防に役立つ
HealthDay News
ウェルビーイングが高い人ほど、脳卒中や心筋梗塞のリスクが低いことを示唆するデータが報告された。中国科学技術大学脳卒中センターのWen Sun氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association」に9月18日掲載された。
論文の上席著者であるSun氏は、「われわれの研究結果は、人々の精神的なウェルビーイングを高めることが心臓や脳の病気の予防に不可欠な要素であることを意味しており、健康管理への総合的なアプローチの重要性を支持するものと言える」と述べている。
さらに同氏は、「医療専門家は、患者のウェルビーイングを高める効果的な方法として、習慣的な身体活動、社会活動、ストレス管理テクニックを推奨するなど、生活満足度と幸福感を向上させる戦略を、日常のケアの一部として含めることを検討する必要があるのではないか」とも付け加えている。
関連情報
この研究は、英国の一般住民を対象に行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者、12万1,317人(平均年齢56.56±8.15歳、男性45.03%)のデータを用いて行われた。
参加者のウェルビーイングは、UKバイオバンク研究登録時に行われていた調査票の回答を基に把握した。具体的には、家族、友人関係、健康、仕事、暮らし向きに関する幸福感や満足感などを、6段階のリッカートスコアで判定して定量的に評価した。
中央値11.77年の追跡期間中に、脳卒中5,990件、慢性虚血性心疾患9,177件、心筋梗塞6,462件、心不全3,323件が発生。
結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、民族、腎機能、基礎疾患、血圧・脂質・血糖管理のための薬剤処方など)を調整後、ウェルビーイングのスコアが1標準偏差高いごとに、脳卒中(ハザード比〔HR〕0.89〔95%信頼区間0.87~0.91〕)、慢性虚血性心疾患(HR0.90〔同0.88~0.92〕)、心筋梗塞(HR0.83〔0.81~0.85〕)、心不全(HR0.90〔0.87~0.93〕)のリスクが有意に低下することが示された。
また、ウェルビーイングのスコアに基づき4群に分け、スコアが最も低い群を基準として比較すると、最もスコアの高い群は、脳卒中は45%、慢性虚血性心疾患は44%、心筋梗塞は56%、心不全は51%、それぞれ低リスクであることが分かった。さらなる分析の結果、ウェルビーイングの高い人は、より健康的なライフスタイルを維持していて、慢性炎症のレベルが低いことが明らかになった。
Sun氏は、「これらの結果は、感情や心理的な健康が身体的なウェルビーイングに及ぼす影響力の強さを強調しており、これまで十分に理解されていなかった複雑な生物学的メカニズムに光を当てるものだ」と総括している。
本研究には関与していない米国心臓協会(AHA)のGlenn Levine氏は、「報告された研究結果は、精神的健康と心血管のリスクとの関連性を具体的に示している。精神的健康に関してはこれまで当然のことながら、うつ病やストレスなどのネガティブな事象が研究テーマとなっていた。しかしこの研究は、人々のウェルビーイングというポジティブな面の重要性を明示した」と述べている。
高いウェルビーイングは脳卒中や心筋梗塞の予防に役立つ

[HealthDay News 2024年9月18日]
Copyright ©2024 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock
2024年10月24日更新

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
メンタルヘルスの関連記事
- 良い睡眠は糖尿病リスクを減らす 睡眠は「魔法の薬」 3つの方法で改善
- 「孤独」や「孤立」は糖尿病・心臓病・脳卒中のリスクを高める 人とのつながりが大切
- 糖尿病が認知症リスクを高める 野菜を食べている人は認知症リスクが低い 中年期の生活改善によりリスク低下
- 少し食べすぎただけで糖尿病? ストレスが糖尿病や肥満の原因に ウォーキングなどの運動でストレスを解消
- 「ラジオ体操」で糖尿病を改善 取り組みやすく続けやすい運動 フレイル対策の効果を検証
- 運動が糖尿病や肥満の人の脳を活性化 ウォーキングなどの運動が脳のインスリンの働きを改善
- 糖尿病があると脳の活動が低下しやすい? 脳の老化は健康的なライフスタイルにより防げる
- 自然とのふれあいが糖尿病や肥満を改善 緑の豊かな環境が心身を健康に 日本の里山の魅力を再発見
- ココアやチョコレートが糖尿病を改善 カカオ豆のフラバノールが血管の健康を守る ストレス対策にも
- ビールを飲む人は食事が不健康? 糖尿病の人にアルコールは良い? ビールを少し飲みすぎただけで高血圧や肝臓病のリスクは上昇