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2025年04月16日
【中年期に食事を改善すると脳が健康に】肥満は認知症リスクも高める アルコールの飲みすぎにもご注意

中年期を通して健康的な食事をとり、肥満を予防し、内臓脂肪をためすぎないことが、年齢を重ねてからも脳の健康状態の改善と、認知能力の低下の防止につながることが明らかになった。
一方、不健康な食事を5日間とっただけで、肝臓の脂肪量は増加し、脳のインスリンの働きが低下することも示された。
アルコールの飲みすぎにも注意が必要だ。お酒を飲みすぎない習慣のある人は、高齢になっても脳の損傷が少ないことが分かった。
健康的な食事をとり内臓脂肪をためないことが脳の健康につながる
中年期を通して健康的な食事をとり、肥満を予防し、内臓脂肪をためすぎないことが、年齢を重ねてからも脳の健康状態の改善と、認知能力の低下の防止につながることが、英国のオックスフォード大学などの新しい研究で明らかになった。
「食事や運動などのライフスタイルを見直して、内臓脂肪型肥満を予防するための介入は、48歳から70歳のあいだに行うのが効果的であることが示唆されました」、オックスフォード人間脳活動センターなどのダリア ジェンセン氏は言う。
「この期間に行う生活改善の支援は、認知症のリスクを軽減するための予防的介入としても重要です」としている。
中年期に食事が健康的だった人は高齢になっても脳と認知機能が良好
研究グループは今回、英国で実施された2件の大規模なコーホート研究に参加した計1,176人の成人を、最長で21年間追跡し、食事の質と健康状態の関連を調査し、磁気共鳴画像診断(MRI)などによる検査も行った。
その結果、中年期から老年期にかけて、食事の質が良好であることは、脳の後頭葉や小脳への海馬の機能的な連結性の高さや、白質の健康などに関連していることが示された。
さらに、ウエスト周囲径をヒップ周囲径で割ったウエストヒップ比(WHR)についても調査した。
中年期を通じて健康的な食事をとっていた人は、WHRの値が小さく、高齢期の脳と認知機能の状態が健康である傾向があることが分かった。
WHRは英国で、肥満の体型指標として用いられており、その値が良好であると、腹部の脂肪の蓄積が少ないとみられている。
関連情報不健康な食事は脳のインスリンの働きも悪くする
血糖値を下げるインスリンは、肥満の発症でも重要な役割を果たしており、体に脂肪がたまりすぎて肥満になると、脳のインスリン感受性も低下し、食欲を抑えられなくなるということが、ドイツのテュービンゲン大学やドイツ糖尿病研究センター(DZD)などによる別の研究でも示された。
「ポテトチップスやチョコレートバーなど、高カロリーで栄養バランスを悪い超加工食品を、短期間とっただけでも、脳でのインスリンの働きは低下することが分かりました」と、同大学糖尿病・内分泌・腎臓病学部のステファニー クルマン教授は言う。
「健康な人では、インスリンは脳内で食欲を抑制する働きもしていますが、肥満のある人ではインスリンが効きにくくなり、摂食行動を適切にコントロールできなくなる可能性があります」としている。
不健康な食事を5日間とっただけでインスリンの働きは低下

研究グループは、普通体重の男性29人を対象に実験を行った。参加者を通常の食事をとる群と、高カロリーの超加工食品をとる群に分けた。磁気共鳴画像法(MRI)などによる検査を行い、肝臓にたまった脂肪の量や脳のインスリン感受性などの変化を調べた。
その結果、不健康な食事を5日間とっただけで、肝臓の脂肪量は大幅に増加し、さらには脳のインスリン感受性は著しく低下することが示された。通常の食事に戻してから1週間経っても、この状態は持続した。
肥満や過体重のある人では、インスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性が起こりやすいことが知られている。インスリン抵抗性は脳にも起こり、認知力の低下や認知症の発症のリスクを高めるとみられている。
「すでに世界保健機関は、肥満は流行病だと宣言しており、世界中で10億人以上が肥満に悩まされています。食事と運動などのライフスタイルを見直して、肥満に対策する必要があります」としている。
お酒を飲みすぎない習慣のある人は
高齢になっても脳の損傷が少ない
逆に、アルコール飲料を週に8ドリンク以上飲んでいる人は、記憶や思考の障害に関連する脳の損傷の兆候があらわれやすいことが示された。
1ドリンクは、ビール350mLに相当し、純アルコールに換算すると14gになる。ビールを毎日飲んでいるという人は注意が必要だ。
「過度のアルコール摂取は、健康障害や死亡の増加につながるだけでなく、脳にもダメージを与え、記憶や思考の障害を引き起こす可能性があることが分かりました」と、ブラジルのサンパウロ大学医学部のアルベルト フェルナンド オリベイラ フスト氏は言う。
研究グループは、死亡時の平均年齢が75歳だった高齢者1,781人の脳を調べた。脳血管の病変は、飲酒経験のない人では40%にみられたが、軽度の飲酒の習慣のあった人では44%に、重度の飲酒の習慣のあった人では50%にそれぞれ増えた。
脳血管の病変が起こる可能性は、アルコールをまったく飲まない人に比べ、飲む量が中程度の人では60%高く、飲酒量が増えるにつれ89%から133%まで高くなった。
「過度の飲酒は脳損傷の兆候と直接関連しており、脳の健康に長期的な影響を与え、記憶力や思考力に悪い影響を及ぼす可能性があります」と、フスト氏は言う。
「アルコールを飲みすぎている人に、生活を見直してもらい、飲酒量を減らすために支援を行う必要があります」としている。
Association of diet and waist-to-hip ratio with brain connectivity and memory in aging (JAMA Network 2025年3月12日)
Association of Diet and Waist-to-Hip Ratio With Brain Connectivity and Memory in Aging (JAMA Network Open 2025年3月12日)
Tübingen Study: The Brain Plays a Central Role in the Development of Obesity (ドイツ糖尿病研究センター 2025年2月27日)
A short-term, high-caloric diet has prolonged effects on brain insulin action in men (Nature Metabolism 2025年2月21日)
How does heavy drinking affect the brain? : Eight or more drinks per week linked to signs of injury in the brain (米国神経学会 2025年4月9日)
Association Between Alcohol Consumption, Cognitive Abilities, and Neuropathologic Changes: A Population-Based Autopsy Study (Neurology 2025年5月)
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