ニュース

2024年11月20日

運動の量を少し増やすだけで糖尿病リスクは低下 階段の上り下りも立派な運動に 脳の健康も高められる

 糖尿病とともに生きる人が運動に取り組むと、糖尿病の合併症のリスク減少に確実につながり、費用対効果の高い対策になることが示されている。

 階段を上ることも、立派な運動になる。階段の上り下りを毎日行うだけで、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクは減少することが分かった。

 短時間の活発な運動により、認知機能が向上し、脳の健康を高められることも、新しい研究で明らかになった。

ウォーキングなどの運動が糖尿病リスクを減らす

 ウォーキングなどの運動を行い、体を動かすことで、糖尿病のリスクを減らすことができる。

 運動をすると筋肉への血流が増え、ブドウ糖が細胞にとりこまれ、血糖値を下げるインスリンの効果が高まる。運動は遊離脂肪酸の燃焼も促す。

 ウォーキングや筋トレを続けていると、筋肉を増やすこともでき、インスリンが働きやすい体に変わっていき、肥満や脂質異常などのリスクも下げることもできる。

運動を続けると糖尿病の合併症のリスクは減少

 欧州心臓病学会(ESC)が発表した研究で、糖尿病とともに生きる人のための運動プログラムの実行は、糖尿病の合併症のリスク減少に確実につながり、費用対効果の高い対策になることが示されている。

 「運動や身体活動の量を少し増やすだけでも、2型糖尿病や心臓病のリスクのある方の健康を高める、大きな効果を得られます」と、オランダのマキシマ医療センターの心臓内科医であるハレルド ケンプス氏は言う。

 「運動のためにまとまった時間をとれないという人も、短時間でも良いので歩くようにすると、血糖管理の改善を期待できます。活発なウォーキングを週に2時間行うだけでも、血糖値が高くなっている人はそれが低下し、心臓病などのリスクを減らせます」としている。

 座ったまま過ごす時間が長引いたら、それを中断し、職場や自宅のまわりを歩いてみたり、階段を上り下りするだけでも、運動の効果は得られる。多くの人は実践的で具体的な目標があると、モチベーションを高められる傾向があるという。

 「運動により糖尿病の合併症を予防できれば、長期的には医療費を削減でき、費用対効果が高いと言えます」と、ケンプス氏は指摘する。

階段の上り下りも立派な運動 心筋梗塞や脳卒中のリスクが減少

 運動をする必要があると理解はしていても、仕事・家事・育児・介護などで忙しく、「運動の時間をとれない」という人は多い。そういう人も、手軽に運動に取り組める方法がある。

 階段を上ることも、立派な運動になる。階段の上り下りを毎日行うだけで、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクは減少することが示されている。

 短時間の活発な運動でも、認知機能を高められることも明らかになった。「短時間の活発な運動でも、メンタルヘルスへの効果は高いことが分かりました」としている。

 階段の上り下りを、数分間という短い時間行っただけでも、筋肉や心臓血管の健康を改善できる。

 「エレベーターやエスカレーターをなるべく使わないようにして、自分の足で階段を上るだけで、良い運動効果が生まれます。階段の昇降はすぐに取り組める運動で、特別な費用も必要ありません」と、米チューレーン大学肥満研究センターのルー チー所長は指摘する。

 「階段を使うことで、トレーニングジムへ行ったのと同じような運動効果を期待できます」としている。

階段を積極的に活用して合併症リスクを減少

 研究グループは、40~69歳の中高年約50万人を追跡して調査している大規模研究である「英国バイオバンク」に参加した45万8,860人を12.5年(中央値)追跡したデータを用いて、階段の昇降と健康状態の関連を調べた。

 その結果、階段の上り下りを毎日50段分くらい行っている人は、とくに心血管疾患のリスクが低いことが明らかになった。

 階段の昇降をまったくしていないという人に比べ、階段の昇降を毎日16~20回行っている人では、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、虚血性脳卒中など、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症リスクが23%低かった。11~15回行っている人でも22%低かった。

短時間の活発な運動により脳の健康も高められる

 カリフォルニア大学の新しい研究では、短時間の活発な運動でも、認知機能を高められることが明らかになった。

 とくに、負荷の強い活発な運動と、ゆったりとした運動を交互に行う「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」と呼ばれる運動法は、高い効果を期待できることが示された。

 ウォーキングなどの運動を習慣として行っていると、脳の健康を長期的に高められることはこれまでの研究でも示されている。

 「運動に取り組むことで、脳の情報の処理や伝達に関わる神経細胞であるニューロンが形成されるのを促され、認知力が向上する可能性があります」と、同大学心理・脳科学部のバリー ギースブレヒト教授は言う。

 研究グループは、運動と認知機能の関連を調べた、4,390人の参加者を対象とした113件の研究をメタ解析した。

 「短時間の活発な運動でも、メンタルヘルスへの効果は高いことが分かりました。とくに運動の手順を考えたり、計画を立てて注意を高めたり、複数のタスクを同時にこなすような身体活動を行うと、30分未満の短い時間の運動であっても、効果は高いことが示されました」としている。

Physical activity reduces mortality in patients with diabetes (欧州心臓病学会 2019年1月15日)
Exercise training for patients with type 2 diabetes and cardiovascular disease: What to pursue and how to do it. A Position Paper of the European Association of Preventive Cardiology (EAPC) (European Journal of Preventive Cardiology 2020年8月29日)
Walking more than five flights of stairs a day can cut risk of heart disease by 20%, study says (チューレーン大学 2023年9月28日)
Daily stair climbing, disease susceptibility, and risk of atherosclerotic cardiovascular disease: A prospective cohort study (Atherosclerosis 2023年 2023年9月15日)
Bursts of exercise boost cognitive function, UCSB neuroscientists find (カリフォルニア大学 2024年10月15日)
A systematic review and Bayesian meta-analysis provide evidence for an effect of acute physical activity on cognition in young adults (communications psychology 2024年8月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲