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2022年11月08日
【世界糖尿病デー】糖尿病とともに生きるスポーツ選手が世界で活躍 糖尿病の壁を打ち破る
1型糖尿病とともに生きるスポーツ選手が、世界で開催される大会で活躍している。
世界初のメンバー全員が1型糖尿病であるプロサイクリングチーム「チーム ノボ ノルディスク」が、10月に「2022ジャパンカップサイクルロードレース」に出場し、優れた成果をおさめた。
1型糖尿病の人がメンバーのバスケットボールチーム「デフィート ダイアベティーズ(糖尿病に打ち克つ)」も活躍している。
「糖尿病があることは障壁にならない。糖尿病があっても、あなたがやりたいことは何でもできる。糖尿病のない人と変わらない生活をおくれる」というメッセージを、世界中に広げている。
世界初の全員が糖尿病のサイクリングチーム
「チーム ノボ ノルディスク」は、世界初の全員が糖尿病とともに生きるプロサイクリストで構成されたサイクリングチーム。日本を含む世界で活躍している。 糖尿病とともに生きる世界中の人々を元気づけ、治療に積極的に取り組み、それぞれの人生の目標に向けて生きていくことを応援するという共通のビジョンにもとづき設立され、2012年よりノボ ノルディスクがサポートしている。 「チーム ノボ ノルディスクは、世界ではじめて全員が糖尿病をもった選手で構成されたプロサイクリングチームで、世界各地のトップレースに出場しています。皆さんが私たちから学んだり励まされたりしながら、自分の夢に向かって糖尿病を管理しながら積極的に取り組んでいってほしいと思います。皆さんも、私たちのチームの一員です」と、チーム ノボ ノルディスク共同設立者でCEOのフィル サザーランド氏は言う。 「チーム ノボ ノルディスク」は、全員が1型糖尿病患者からなる世界初のアマチュアチームとして2006年にアメリカで設立され、2008年にチームタイプ1としてUCIコンチネンタルチーム、2011年にはプロコンチネンタルチームに登録された。2014年からは宇都宮で開催されるジャパンカップサイクルロードレースにも参戦している。
【糖尿病を持ちながら親になる】1型糖尿病をもつアスリートからのメッセージ
世界糖尿病デー2022
チーム ノボ ノルディスクの元プロチームメンバーであり、現在はアンバサダーとして活躍するジャスティン モリスさんが、自身の経験にもとづき、糖尿病とともに生きるうえで大切なことをコメント。糖尿病を持ちながら親になることをテーマに、睡眠不足やストレス解消のヒントを紹介している。
世界のトップ選手に混じって活躍
「チーム ノボノルディスク」は10月に、宇都宮市で開催されたアジア最高位の自転車ロードレース「2022ジャパンカップサイクルロードレース」に出場した。 「ジャパンカップサイクルロードレース」は、日本で唯一、国際自転車競技連合(UCI)よりプロシリーズに認定されている大会。世界のトップ選手を含む、国内外で活躍する選手たちが参加し、ハイレベルなレースを展開している。 「チーム ノボ ノルディスク」の大会出場は7回連続。今回の大会は、新型コロナの影響により2020~2021年は開催中止となり、3年ぶりの開催となった。 チームから大会に参加したのは6人。うち、ヨーナス ヘンッタラ選手(フィンランド)は2021年にフィンランド国内選手権ロードレースで優勝し、「チーム ノボ ノルディスク」初のナショナルチャンピオンジャージ獲得選手になった実績をもつ。 今回の大会では、ダヴィ ロサーノ選手(スペイン)がトップ30に入り、ハミッシュ ビードル選手(ニュージーランド)がクリテリウム(短距離走)でトップ10に入るのなどの成果を得た。糖尿病とともに生きスポーツで活躍するアスリートたち
糖尿病とともに生き、スポーツの世界で活躍する選手は世界中にいる。1型糖尿病の人がメンバーのバスケットボールチーム「デフィート ダイアベティーズ(糖尿病に打ち克つ)」が、スポーツ選手がプロとアマチュアの区別なく参加できる「バスケットボール トーナメント(TBT)」の2022年の大会に出場した。
「デフィート ダイアベティーズ」は、国際的に活躍しているバスケットボール選手のジェイレン ネスビットさんと、そのパートナーで小児期に1型糖尿病と診断されたクリスティーナ デセモネさんにより設立された。
デセモネさんは、スポーツ栄養学を専門とする登録栄養士で、アスリートのパフォーマンスを最大限に高めるために、食事の面から支援をしているという。
チームには、19歳のときに1型糖尿病と診断された元NBA選手で世界的なスターであるゲーリー フォーブスさんなど著名な選手も参加しており、100万ドルの賞金の獲得を目指して挑戦した。
「デフィート ダイアベティーズ(糖尿病に打ち克つ)」対「サイドライン キャンサー」
「デフィート ダイアベティーズ」は、バスケットボール トーナメント(TBT)に出場するチームとしてはじまり、いまでは1型糖尿病のコミュニティでの提唱者として、1型糖尿病への意識を高めるチームに成長した。
1型糖尿病のスクリーニング検査と早期診断の重要性を啓発
チームの目標は、「1型糖尿病の影響を受けるすべての人を擁護し、糖尿病に打ち勝つため、スポーツを通じて意識とエンパワーメントを高める文化を確立すること」。 1型糖尿病についての研究の支援や、アドボカシーなど糖尿病の人をサポートする活動を世界的に展開している非営利組織であるJDRFが、「デフィート ダイアベティーズ」に協力している。 チームは、1型糖尿病を早期発見するためのスクリーニング検査の重要性を啓発したり、1型糖尿病とともに生きる若いアスリートを支援するプログラムなども実施しているという。 チームは米国で開催された2022年大会では、プロチームでも活躍しているマイク ダウム選手が31ポイントを上げるなど善戦したが、がんの検診と治療の重要さを啓発するために活動し、大会で準優勝したこともあるバスケットボールチーム「サイドライン キャンサー」に惜敗した。 しかし、1型糖尿病とともに生きる人を励まし、社会の理解を広げるために、今後も精力的に活動を継続するとしている。日本でも1型糖尿病に対する適正な理解を
糖尿病には、1型、2型と呼ばれるタイプがあり、それぞれ発症要因や病態が異なる。 1型糖尿病は、自己免疫反応の異常やウイルス感染により、膵臓のβ細胞を自分で攻撃してしまい、インスリンを分泌する機能を壊してしまう自己免疫が主な原因と考えられているが、原因不明で発症するケースもある。 10~20代の若い人が突然発病する場合が多いが、成人や高齢者も発症することがある。1型糖尿病では、血糖を下げるインスリンの分泌が失われてしまっているので、生命を維持するためにインスリン療法が絶対的に必要となる。 1型糖尿病は、日本の糖尿病の95%を占める2型糖尿病とは、発症要因や治療の考え方はまったく異なる。2型糖尿病は、体質などの遺伝的な要因と環境的な要因(過食や運動不足などの生活習慣や肥満、加齢など)が重なり合い、インスリン分泌の低下やインスリンの働きが悪くなることで発症するが、1型糖尿病はどちらも関係がない。 日本は、2型糖尿病に比べ、1型糖尿病の発症率が非常に低いのが特徴で、1年間に10万人中に1.5〜2.5人ほどが発症するとみられている。海外では、もっとも発症率の高いフィンランドでは、1年間に10万人中に40人ほどが1型糖尿病を発症しているという。 チーム ノボ ノルディスク (ノボ ノルディスク ファーマ)All-Diabetes Pro Cycling Team: Team Novo Nordisk
チーム ノボ ノルディスク (ノボ ノルディスク ファーマ 公式チャンネル) チーム デフィート ダイアベティーズ
チーム デフィート ダイアベティーズ 公式チャンネル JDRF - Type 1 Diabetes Research Funding and Advocacy
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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