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2024年09月05日

運動に取り組み糖尿病を改善 血糖値が下がりすぎる低血糖にもご注意 1型糖尿病の人に最適な運動法は?

 糖尿病とともに生きる人にとって、運動を習慣として行うことは重要だ。

 体を活発に動かすことで、血糖値を下げるインスリンが働きやすくなり、長期的な健康リスクが減り、メンタルと全体的な生活の質も高められる。

 一方で、運動に取り組むときには、血糖値が下がりすぎる低血糖にも注意する必要がある。

 強度が高めの運動と、低強度のゆるやかな運動を交互に行うインターバル運動を行うと、低血糖を起こす可能性は低くなり、運動の効果を高められることが分かった。

糖尿病の人が運動をすると糖尿病の管理が改善

 糖尿病のある人にとって運動療法は、血糖管理の改善、肥満や内臓脂肪の蓄積の解消、インスリン抵抗性の軽減、脂質異常症や高血圧の改善、慢性炎症の抑制など、さまざまな好ましい効果をもたらす。

 さらには、運動によりメンタルヘルスの改善、認知機能障害の予防などの効果も期待できる。

 糖尿病の人に勧められる運動のひとつに、「インターバル運動」がある。無理なく短時間で運動の効果を得られると期待されている。

 インターバル運動は、活発なウォーキングなど強度が高めの、心拍数を上げる少しきつい運動と、低強度のゆるやかな、呼吸を整えられるような運動を交互に行う運動法。

 日本でも、信州大学の能勢博先生が提唱している「インターバル速歩」が知られている。インターバル速歩は、「さっさか歩き」と「ゆっくり歩き」を数分間ずつ交互に繰り返すウォーキング法だ。

1型糖尿病の人にも運動が勧められる

 1型糖尿病の人も、運動に取り組むことで、体重やBMI(体格指数)の改善、悪玉のLDLコレステロールの低下、最大酸素摂取量、筋力が改善することが報告されている。

 運動を習慣として行っている人は、糖尿病網膜症などの合併症や、糖尿病性腎症の初期を示す微量アルブミン尿が少なく、重症の低血糖も少ないことも示されている。

 1型糖尿病の人は、必要なインスリン治療を継続できていれば、2型糖尿病のように食事などの生活スタイルを厳しく制限することはない。

 しかし、運動には血糖値の低下のほかにも、心血管疾患のリスクを減少させたり、QOL(生活の質)を高めるなどの効果も期待できることから、やはり1型糖尿病の人も運動に取り組むことが勧められている。

運動を行うときは低血糖にもご注意

 一方で、1型糖尿病の人が運動療法に取り組むときには、低血糖に注意する必要がある。

 ウォーキングなどの軽い運動は、糖尿病の人のほとんどにとって問題はないが、あまり運動をしていない人や、負担の大きい運動をするときなどは、注意が必要になる。

 低血糖は、血糖値が正常範囲以下にまで下がった緊急の状態で、糖尿病を薬で治療している人にみられる。

 低血糖では、冷や汗、動悸、意識障害、けいれん、手足の震えなどの症状があらわれる。

インターバル運動なら低血糖の心配は少ない

 インターバル運動を適切に行えば、低血糖を起こす可能性は低くなり、運動の効果を高められるという新しい研究成果を、英国のスタッフォードシャー大学や米国のサンフランシスコ大学が発表した。

 「1型糖尿病の人は、合併症がなく、血糖管理が良好であれば、運動に取り組むことを妨げる理由はありません」と、スタッフォードシャー大学でスポーツ科学やデジタルヘルスを研究しているプーヤ ソルタニ氏は言う。

 実際に、プロの野球選手やサッカー選手として活躍したり、オリンピックで金メダルを獲得する1型糖尿病の人もいる。

 「ただし、運動前・運動中・運動後などに血糖値のモニタリングを行ったり、インスリンの投与量や補食などを調整することが必要な場合もあります。負担の大きい運動をするときなどは、事前にかかりつけの医師に相談することをお勧めします」としている。

低血糖を起こしにくい運動法を開発

 研究グループは今回、1型糖尿病の人の運動トレーニングを最適化するための研究を行った。

 「1型糖尿病とともに生きる人のなかに、活発な運動に参加するのに消極的になっている人をみかけます」と、ソルタニ氏は指摘する。

 「その理由のひとつは、運動や身体活動が低血糖を引き起こす心配があることです。そこで、低血糖を起こしにくい運動法についての研究を開始しました」としてい。

 研究グループは、19人の1型糖尿病患者を対象に、インターバル運動に取り組む群と、中強度の同じ運動を続ける群に分け、2つのランダム化比較試験を実施した。

 参加者全員がトレッドミルで30分間の中強度の有酸素運動に取り組み、インターバル運動群は、最大酸素摂取量(VO2max)が40%と60%の運動を交互に行った。

インターバル運動は低血糖を起こさず効果が高い

 その結果、運動に取り組んだ人は全員、血糖値の低下がみられ。さらに、低血糖は同じ運動を持続した群では1回発生したが、インターバル運動群ではみられなかった。

 「男性は女性に比べ、血糖値の低下幅が大きいことも分かりました。とくに男性は、インターバル運動の直後に、血糖値はより低下していました。しかし低血糖は確認されませんでした」と、ソルタニ氏は指摘する。

 「短時間のウォーキングなどのインターバル運動であれば、低血糖を起こすことなく、運動の効果を高められる可能性があります」と結論している

 「ただし、1型糖尿病の人の血糖値の大幅な低下を抑え、低血糖を防ぐための運動の最適な処方は、男女で異なる可能性があります。女性は、インターバル運動と同じ中強度の運動を持続する両方のやり方を試してみて、ご自分に合った方法を選ぶと良いかもしれません」と付け加えている。

A new study has revealed the best types of exercise for patients with type-1 diabetes (スタッフォードシャー大学 2024年8月21日)
Sex-Related Glycemic and Cardiovascular Responses After Continuous and Interval Aerobic Sessions in Patients With Type 1 Diabetes: A Randomized Crossover Study (American Journal of Cardiology 2024年10月1日)

The effects of high-intensity interval training on glucose regulation and insulin resistance: a meta-analysis (Obesity Reviews 2015年10月20日)
Impact of Physical Activity on Glycemic Control and Prevalence of Cardiovascular Risk Factors in Adults With Type 1 Diabetes: A Cross-sectional Multicenter Study of 18,028 Patients (Diabetes Care 2015年5月26日)
The association of physical activity and diabetic complications in individuals with insulin-dependent diabetes mellitus: The epidemiology of diabetes complications study--VII (Journal of Clinical Epidemiology 1991年)

Get Active! Exercise & Diabetes (米国糖尿病学会)
Get Started Safely (米国糖尿病学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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