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2022年02月21日

【新型コロナ】子供や若年者のコロナ感染で糖尿病リスクが上昇 ワクチン接種が必要

 新型コロナに罹患した18歳未満の子供や若年者は、糖尿病を発症するリスクが高いことが、米疾病対策センター(CDC)の調査研究で明らかになった。

 「新型コロナのワクチン接種の対象となり、重症化リスクの高いすべての未成年は、ワクチン接種を受けることが重要です。感染した場合の糖尿病などの慢性疾患の予防・改善も必要です。また、すべての年齢層の人は、これまで通りに新型コロナの感染を予防する対策が求められます」と、専門家は強調している。

新型コロナに罹患した子供や若年者で糖尿病リスクが上昇

 新型コロナの感染は、糖尿病の症状の悪化と関連しており、糖尿病のある人は新型コロナが重症化するリスクが高くなることが知られている。さらには、新型コロナに感染することで、新たに糖尿病と診断される可能性が高まることが分かってきた。

 米疾病対策センター(CDC)の調査研究により、新型コロナに罹患した18歳未満の子供や若年者は、新型コロナに感染していない人に比べ、感染後30日超で新たに糖尿病の診断を受ける可能性が高いことが明らかになった。

 「新型コロナに罹患した18歳未満の子供や若年者での糖尿病リスクの上昇は、新型コロナのワクチン接種の対象となり、重症化リスクの高いすべての人は接種を受け、糖尿病などの慢性疾患の予防・治療を行うことが重要であることを示しています。この年齢層での新型コロナの予防戦略の重要性が浮き彫りになりました」と、CDCの新型コロナ専門チームのキャサリン バレット氏は言う。

 さらに、新型コロナの罹患後に糖尿病を発症した患者では、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)が多くみられたという。

 ケトアシドーシスは体内にケトン体が過剰に蓄積した、血液が酸性に傾いた状態をさす。インスリン作用が不足し、体がブドウ糖を利用できない状態では、代わりに脂肪やタンパク質がエネルギー源として使われ、そのときにケトン体という物質ができる。ケトン体の蓄積により、体液は酸性に傾き、危険な状態になる。

 ケトアシドーシスでは、口渇、多飲、多尿、体重減少、全身倦怠感などの症状が急激に起こる。悪化すると、呼吸困難、速くて深い呼吸、悪心、嘔吐、腹痛、意識障害などが起こるおそれがある。ケトアシドーシスが疑われるときは、すみやかに医師に相談し治療を受けることが重要となる。

8万人超と43万人超の未成年者を調査

 調査は、医療費請求データベースを用いた後ろ向きコホート研究として行われ、うち個々の医療情報をデータベース化したIQVIAヘルスケアの解析では、2020年3月1日~2021年2月26日に新型コロナと診断された、8万893人(平均年齢12.3歳)の未成年患者が対象となった。

 新型コロナに罹患し糖尿病を新規に発症した未成年者の罹患率は、10万人年あたり316で、新型コロナに罹患しなかった未成年者の118に比べ、糖尿病リスクは166%高かった(ハザード比(HR)2.66)。

 さらに、新型コロナの罹患後に糖尿病を発症した患者の48.5%に、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)による受療記録がみられた。

 また、別のデータベースであるHealthVerityの解析からも、新型コロナに罹患した未成年者は糖尿病リスクが高いことが示された。これは、2020年3月1日~2021年6月28日に、PCR検査で陽性判定された未成年患者43万9,439人(平均年齢12.7歳)を対象としたもの。

 新型コロナに罹患し糖尿病を新規に発症した未成年者の罹患率は10万人年当たり399で、新型コロナに罹患しなかった未成年者の304に比べ、糖尿病リスクは31%高かった(ハザード比(HR)1.31)。

糖尿病の子供はシックデイとケトアシドーシスへの対策が必要

糖尿病の「シックデイ対策」
  • 血糖とケトンの検査(血液または尿)をより頻繁に行う。
  • 子供が病気のときは、血糖値を70~180mg/dL、血中ケトン体を0.6mmol/L未満にすることを目指す。
  • インスリン治療を止めない:発熱のある場合など、インスリンの必要量が通常より多くなることもある。
  • 水分をとり脱水を防ぐ:水分と塩分を適切なバランスで補給する。
  • 糖尿病などの基礎疾患や発熱などの症状を治療する。
出典:ISPAD(国際小児思春期糖尿病学会)サイト
 日本でも、小児(5~11歳)の新型コロナワクチンの接種が、3月から開始される見込みだ。

 新型コロナの感染者では、小児でも中等症や重症例が確認されており、とくに糖尿病などの基礎疾患があるなど、重症化するリスクが高い小児には接種の機会を提供することが望ましいとされている。かかりつけ医と相談しながら、接種を受けることが勧められている。

 日本小児科学会によると、5~11歳を対象とする接種が承認されているワクチンは、日本では2022年2月時点でファイザー製のみだ。同ワクチンは従来のワクチンに比べ、含有されるmRNA量は1/3になっている。

 海外では、5~11歳の小児に対する同ワクチンの発症予防効果が90%以上と報告されている。接種後の副反応症状の出現頻度は、5~11歳の小児では、16~25歳の人に比べ一般的に低かったと報告されている。

 海外では、ハミルトン健康科学財団やマクマスター大学、マクマスター大学子供病院などが支援して「新型コロナと子供の糖尿病(COVID-19 and Childhood Diabetes)」というサイトが公開されている。ISPAD(国際小児思春期糖尿病学会)も、新型コロナの特集ページを公開して注意を呼びかけている。

 「糖尿病の子供は、糖尿病のない子供に比べ、新型コロナの感染リスクが高いということはありませんが、感染により血糖コントロールが難しくなるおそれがあります。さらには、新型コロナの拡大による医療システムの混乱により、医療機関で治療を受けるのが遅れてしまう可能性もあります」としている

 「糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を回避するために、ワクチン接種を受け感染を予防し、感染した場合に適切な治療を行うことが重要です。ケトアシドーシスはインスリンの不足が原因なので、とくに1型糖尿病の人では、インスリンが適切に投与されなかったときや、食事をとれないときなどに起こりやすいのです。感染症などにかかった場合のシックデイ(病気になったとき)対策と、ケトアシドーシスの予防について、かかりつけ医とよく話し合っておくことが大切です」としている。

コロナ禍での子供の糖尿病への対処の仕方
ハミルトン健康科学財団が公開しているビデオ

Risk for Newly Diagnosed Diabetes >30 Days After SARS-CoV-2 Infection Among Persons Aged <18 Years -- United States, March 1, 2020-June 28, 2021 (米疾病対策センター 2022年1月14日)
新型コロナウイルスワクチン接種に関する、小児の基礎疾患の考え方および接種にあたり考慮すべき小児の基礎疾患等 (日本小児科学会)
COVID-19 and Childhood Diabetes (マクマスター大学子供病院)
COVID-19 in children with diabetes Resources (国際小児思春期糖尿病学会)
【特集】新型コロナウイルス感染症
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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